表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/156

61.エルフの国へ

スティクォンはビューウィと共にシディアのところに向かう。

そこにはメルーアたちも一緒にいた。

「シディア、お願いがあるんだけど」

『む? 我に何か用か?』

「西にあるエルフの国に行ってもらいたいんだけど」

スティクォンの言葉にシディアが目を細める。

『ほぅ・・・エルフの国か』

「無理か?」

『無理ではないが何をしに行くのだ?』

「酒・・・」

『何っ?! 酒だとっ?! エルフの国に美味い酒があるのかっ?!』

酒という単語にシディアが目を見開き興奮した声でスティクォンに話しかける。

「シ、シディア! 落ち着け!!」

スティクォンはすぐにシディアを宥めた。

シディアも我に返ると謝罪する。

『す、済まぬ。 酒と聞いてつい興奮してしまった』

今のやり取りでスティクォンは察した。

(シディア、酒がすごく好きなんだな)

好きなモノが手に入るかもしれないと考えれば興奮しても仕方がない。

「エルフの国に酒を造れるかもしれない者がいるらしい」

『なるほど、スカウトしに行くのだな?』

「ああ、だけどエルフは他種族を嫌うから今までのように上手くいくかはわからない」

『何を弱気なことを言っている! スティクォン! 今回のスカウトは何としても成功させるぞ!!』

「ええぇ・・・」

シディアのやる気にスティクォンはドン引きする。

「スティクォン様、どうしてエルフが酒の製造方法をお知りになられたのでしょうか?」

スティクォンとシディアの会話を聞いてウィルアムが質問する。

「ああ、実はソレーユさんのスキルである【吟遊詩神】で知ったことなんだ」

スティクォンはソレーユが口ずさんだ(うた)を口にする。

それを聞いたメルーアたちが首を傾げる。

「えっと・・・スティクォン、それのどこに酒が絡んでいますの?」

メルーアが皆を代表して質問する。

「僕がティエスさんとソレーユさんに酒の造り方を聞いたときにソレーユさんが突然(うた)いだしたんだ。 それで詩を解読して照らし合わせたのさ」

「なるほどね。 それで私にエルフの国にある変わった家を探させたのね」

スティクォンの説明にビューウィが納得する。

だが、ここでメルーアとハーニがある単語に反応した。

「探させた?」

「ビューウィに?」

「ひぃっ!」

アーネルとシャンティの時のことを思い出したのだろう、メルーアとハーニから表情が消えた。

2人の凍えるような視線を受けたスティクォンが後ずさる。

『メルーア、ハーニ、止めよ。 スティクォンとビューウィが何をしたのか知らぬが我のために働いてくれたのだ。 労いこそすれ妬むのは止めよ』

「「う゛」」

「あははははは・・・」

仲裁してくれるシディアだがあまりの圧にメルーアとハーニは完全に気圧されていた。

『そんなことよりエルフの国にすぐに向かうぞ! 早く我の背中に乗れ! スティクォン!!』

「落ち着けって!」

『スティクォン! 我から見たエルフは短命だ! 早く行って保護せねばならない!!』

「いや、シディアからみればどの種族も短命だから」

人間族であるスティクォンからみたらエルフは十分に長命な種族だ。

余程のことがない限り命に関わることなどないだろう。

『いいから早くしろ!!』

「わかったから落ち着けって! すぐに誰を連れていくか手短に決めるから。 ビューウィは確定としてほかに誰を連れて行こうか?」

「スティクォン様、私が同行いたします」

ウィルアムが手を挙げる。

「ウィルアムさん! 【鑑定】でエルフの種族を確認してもらうと助かるよ」

「お任せください」

ほかはというとメルーアたちは珍しく手を挙げない。

自分たちが行っても役に立たないというのだろう。

「それじゃウィルアムさんとビューウィの2人を連れて行ってくるよ」

『さっさと行くぞ! スティクォン、ウィルアム、ビューウィ! 早く乗れ!!』

シディアは待ちきれないのかスティクォンたちを促す。

スティクォンたちが乗るとシディアは確認もせずに翼を広げた。

『さぁ! すぐに行くぞ!』

「待て! シディア!」

『何だ! スティクォン! 出発の邪魔をするな!!』

「ちょっとだけ待って!」

スティクォンは【現状維持】を発動すると3人がシディアの背中から飛ばされないように維持した。

「これで良し! 待たせたな!」

『本当だぞ! では行くぞ!!』

シディアが羽搏いて空に舞うと進路を西に定めて一気に加速した。

あまりのスピードにスティクォンたちは目も開けられない。

『それでその珍しいエルフたちはどこにいるのだ?』

「どこって・・・」

スティクォンが目を開けるとそこは死の砂漠とエルフの国の境界線だ。

一瞬にして移動したことにスティクォンたちは驚いた。

気を取り直してビューウィが指示を出す。

「ここからだともっと西ね」

『そうか・・・』

シディアが先ほどと同じように移動しようとするとビューウィが止めた。

「待ちなさい! こんな速度で移動したら見逃すわよ!」

ビューウィの言う通り音をも超える速度で移動すれば通り過ぎる可能性が高い。

『う、うむ・・・そ、そうか・・・』

「ここからはいつも通りの速度でお願いするわ」

『わ、わかった』

正論をいわれたシディアはいつも通りの速度でエルフの国の上空を飛行する。

スティクォンたちは上空から変わった家を探す。

「変わった家・・・変わった家・・・」

「見当たらないですな」

「ないわね」

地上を見れば木ばかりで変わった家を確認できない。

シディアが我慢できずに咆える。

『まだか! どこにエルフどもがいる!!』

あまりの大声にスティクォンたちは手で耳を塞ぐ。

シディアの咆哮は地上にも届いたのだろう、身の危険を感じたエルフたちはドラゴン(シディア)に見つからないようすぐに隠れた。


西に向かって進むこと数十分が経つと何やら変わった家が見えてきた。

それは巨大な茸を刳り貫いたような家だ。

「もしかしてあの家か?」

「そうだと嬉しいですな」

「まったくね」

『あの家に決まっている!!』

シディアは待ちきれないのかそのまま巨大な茸の家の前に降り立った。

ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

シディアの着陸により地響きが起こり、辺り一帯から小鳥が羽搏いて逃げていく。

『出てこい! この家に住む者たちよ!!』

しばらくして家の中から耳の長い3人の女性が怯えながら現れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ