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56.ロニー4 〔ロニー視点〕

時はスティクォンが塩を求めて海に行く頃に遡る。






王都に戻り数日が経ったある日の朝、国王の使いと名乗る文官が俺のところにやってきた。

俺は正装すると使者と共に国王が待つ謁見の間の前に到着する。

しばらくここで待てと言われたので待っているとそこに正装したリクルと文官がやってきた。

「リクル?」

「兄様?」

「お前も呼ばれたのか?」

「はい。 心当たりはないのですが・・・兄様も国王陛下に呼ばれたのですか?」

リクルも俺同様に何も聞かされていないらしい。

「ああ、俺も呼ばれた理由はわからないんだ」

本来なら俺とリクルは家督争いをするライバルだが、下手に隠し事をしてあとで問題に発展されても困るのでここは正直に話すことにした。

リクルも俺が嘘をついてないと勘付いたのだろう。

それ以上はお互い言葉にしない。

そこに父上がやってきた。

「ロニー、リクル、なぜこんなところにいる?」

「父上、実は国王陛下からお呼びがかかりまして」

「お父様、私もです」

いつの間にか俺もリクルも不安な顔になる。

それを察した父上が気丈に振舞う。

「まずは謁見しなければな」

衛兵に取次ぐと俺たちは謁見の間に通される。

中に入ると国王以外に多くの貴族がその場にいた。

広間の中央まで来ると父上が膝を突くので俺とリクルも同じ動作をする。

代表して父上が挨拶するが国王は奇妙な質問をしてきた。

「スティクォンはどうした?」

俺は国王の言葉に首を傾げる。

(スティクォン? なぜあいつの名前がここで出てくるんだ?)

隣をチラッと見るとリクルも同じように首を傾げていた。

父上がスティクォンをアバラス家から追放したことを話すと国王の顔が曇り、額に手を当て落胆する。

国王が事の重大さを指摘するも父上は取り合わず、むしろ怒りを露わにした。

しかし、国王は父上の怒りを無視して尚もスティクォンのスキルについて質問する。

「あんな向上もしないスキルなど我がアバラス家には不要なスキルですから」

父上が無愛想に答えると国王は呆れて1つ溜息を吐いた。

「・・・そうか・・・イコーテム、其方を国家内乱罪で拘禁する! アバラス公爵家は廃爵とし全財産を没収とする!!」

「なんだとおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」

その言葉を聞いて父上は絶叫し、俺とリクルは蒼褪めていた。

(こ、国家内乱罪っ?! ち、父上が国に対して謀反を起こしたのかっ?!)

父上は怒りに任せて言葉を口にする。

「納得がいかないっ! 理由を説明しろっ!!」

「其方がフーリシュ王国に混乱を招いたからだ。 農作物の不作、品不足、物価の高騰、国力低下、魔物や魔獣への脅威度が増したことなど数え上げたら切りが無い」

「それがなんでわしのせいになるのだあああああぁーーーーーっ!!」

「それはスティクォンが授かったスキル・・・【現状維持】に関する事だからだ」

国王はスティクォンのスキルを口する。

(【現状維持】? それがスティクォンのスキルか・・・父上は向上がないといったが本当にそうなのか?)

冷静になって考える。

(言葉通りに捉えるなら現在の状態を維持するか・・・俺の魔力も今の状態を維持できれば・・・?!)

そこで俺は雷に打たれたような感覚を覚えた。

「ああっ! そうかっ! そういうことかっ!!」

国王の御前とはいえ俺は叫んでしまった。

「ロニー?」

本来なら不敬だが今はそれどころではない。

「父上っ! 一刻も早くスティクォンを我が家に連れ戻しましょうっ!!」

「ロニーっ! 貴様何を言うっ! 気でも狂ったかっ!!」

俺は『頭がおかしいのはお前(父上)だっ! このバカ(脳筋野郎)がっ!!』と叫びそうになるところをグッと我慢する。

「正気ですっ! スティクォンは俺の、いや我がアバラス家に無くてはならない存在なのですっ!!」

「兄様、どういうこと?」

俺の鬼気迫る発言に父上もリクルも聞く気になった。

「スティクォンの【現状維持】は父上がいう向上しないという意味じゃないっ! 現在の状態を維持し続けるんだっ! 少し前の俺の無尽蔵の魔力やリクルお前の無尽蔵の体力とかだっ!!」

「なんですってっ?!」

俺の説明を聞いて貴族たちが騒ぎ出し、父上も事の真相に行き着いたのか顔が蒼褪めていく。

「余もそこの者(ロニー)と同意見だ。 余も精力が無尽蔵にあると思っていたのだからな」

国王が玉座から立ち上がる。

「イコーテム、本来なら拘禁するところだが其方は長年国を守護してきた。 故にチャンスをやろう。 スティクォンを探して余の前に連れてこい。 さすれば今回の騒動を不問とする。 ただし、失敗すれば・・・わかるな?」

父上が首を縦に振る。

「それと皆の者にもチャンスをやろう。 スティクォンを余の前に連れてきた者には褒美として陞爵を約束しよう」

突然の陞爵のチャンスに貴族たちの目の色が変わった。

それだけいうと国王は謁見の間から退室し、貴族たちが一斉に動き出す。

父上が気迫のない顔で俺に懇願する。

「ロ、ロニー、は、早くスティクォンを連れ戻せ・・・」

「善処はします。 父上、まずは当時の状況を教えてください」

「わ、わかった・・・」

父上はスティクォンを追放したときのことを話す。

話を聞いているうちに俺は頭痛がしてきた。

(バカだバカだとは思っていたがここまで浅慮だとは・・・)

話を聞き終えた俺は早速スティクォンの行動を追跡する。

(まずは金がないから手持ちの物を売って金策に走るはず)

俺は人相書きを作り、それを持って王都内の店を片っ端から聞き込み調査を開始する。

すると1軒の便利屋でスティクォンの服を買い取った店が見つかった。

買取差額でこの店に売っている服と金貨2枚を手に入れたようだ。

(次に自分の身を守るために何かしら買うはずだ)

再び王都内の店を回ると武器屋で鋼の剣と鋼のナイフを、錬金術師の店でポーションを、露店で保存食を購入したことがわかった。

(あとは行き先か・・・)

冒険者ギルドを訪れるがここには来ていないようだ。

(そうなると馬車に乗って別の場所に移動した可能性があるな)

俺は乗合馬車の御者に聞き込みをしていると1人の御者に行き着く。

行き先を聞いて俺は絶望した。

よりによって王国最北端の世捨て村で、向かった先はおそらく魔族の国であることを・・・


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