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54.スイカ割り

一通り人工海で遊んだスティクォンたち。

砂浜に戻るとウィルアムが金属に入った箱を指さした。

「皆様、まずはこちらをお飲みになって水分補給をしてください」

箱の中は水が入ったカップがたくさん並んでいる。

「ありがとう、爺」

スティクォンたちは箱からカップを取り出す。

カップはひんやりと冷たい。

よく見ると砕かれた氷がいくつも入っていた。

この氷はメルーアの【水魔法】で生み出した水をアリアーサの【水神】で氷らせたものだ。

水を口に含むと身体の中からじわじわと冷えていく。

「お食事を用意しました」

そんな彼ら彼女らをウィルアムが料理でもてなしてくれる。

そこには焼きたての魚貝や野菜がお皿にのっていた。

スティクォンたちは早速料理を口にする。

「美味い!」

「運動したあとの料理は格別ですわ♪」

ウィルアムが用意した料理が次々となくなっていく。

「今調理しておりますので少々お待ちください」

そういってウィルアムはできあがった料理を次々とだしていく。

それらをスティクォンたちは平らげていった。

「ふぅ、食べた」

「でも少し物足りないですわ」

それなりの量を食べたがそれでも腹八分には届いていない。

「そろそろ頃合いですな」

ウィルアムは砂浜に布を敷くと用意した桶から氷水で冷やしたスイカを取り出して布の上に置いた。

「皆様、これからスイカ割りを行います。 まずはリル様、どうぞこちらへ」

「わ、私ですか?」

リルはウィルアムのところまでやってくる。

「この木の棒をお持ちください」

いわれるままに木の棒を持つ。

「失礼いたします」

ウィルアムはリルの背後に回ると用意していた布でリルの目を隠す。

「え?! ウィルアムさん、何を?!」

突然の出来事にリルは混乱する。

「では始めます」

ウィルアムはリルの身体を回転させる。

「あわわわわわ・・・」

「これくらいでしょうか。 ファリー様、クレア様、言葉だけでリル様をスイカのところまで導いてください」

「え? あ、はい」

「わ、わかりました」

ファリーとクレアは言葉をかける。

「リルちゃん、前に歩いて」

「わ、わかった」

リルは普通に歩こうとするが目隠し状態で回転されたことにより上手く前に進めない。

「リルちゃん、左に行きすぎ! もう少し右に歩いて!」

「こ、こう?」

「今度は右に行きすぎ! もうちょっと左!」

「こ、こっち?」

ファリーとクレアの誘導によりなんとかスイカの前までやってくる。

「リルちゃん! そこで止まって!」

「木の棒で思いっきり叩いちゃって!」

「わかった! えいっ!!」

リルは木の棒を思いっきり目の前に振り下ろした。

パンッ!!

木の棒の先端が見事にスイカに直撃して破裂音が辺りに鳴り響く。

「リル様、もう目隠しをとってもらっても大丈夫ですよ」

「は、はい」

リルは布をとると割れたスイカが視野に入る。

「ス、スイカが破裂してる?!」

「リル様、お見事です。 スイカ割りをされた感想はどうですか?」

「ちょ、ちょっと楽しかったかも」

リルは照れながら感想を述べた。

「それはようございました。 さ、割れたスイカをとって食べてみてください」

いわれるがままに割れたスイカの1欠片をとると口にする。

「甘くて冷たくて美味しいです」

一連の動作を見て皆興味津々だ。

「皆様、これがスイカ割りでございます。 体験したい方は挙手願います」

すると半分以上が手を挙げる。

「これだけの人数ですと全員に回らない可能性がありますな。 それでは1人1振りとさせていただきます」

かくしてスイカ割り大会が始まった。

リルみたいに1振りでスイカを割る者もいれば、スイカに当たるがポンっと音だけして割れなかったり、そもそもスイカに当たることさえできない者もいた。

多くの者がスイカ割りに一喜一憂する。

割れたスイカはみんなで仲良く食べた。

細かい欠片はもったいないとドレラが全部食べていた。

スイカ割りを堪能するとそれぞれ自由に行動する。

再び海で泳ぐ者、疲れて休む者、食事を楽しむ者など。

そんな中、リルとファリーの周りに同族の男性たちが囲っていた。

「リル師匠、これから僕と遊びませんか?」

「いや、俺と遊びましょう」

「え、えっと・・・」

「ファリー親方、よければこのあと一緒にどうですか?」

「まだ日も高いですし海で泳ぎましょう」

「あ、あの・・・」

どうやらリルとファリーを遊びに誘っているようだ。

困っていた2人だがスティクォンを見かけて囲いからなんとか抜け出すとそちらに向かう。

「スティクォンさん!」

「助けてください!」

リルとファリーがスティクォンの背中に回り込んで隠れる。

「あ、スティクォンさん・・・」

それを見た男性たちがバツが悪そうな顔をする。

スティクォンが何か言おうとするがその前に蜘蛛の子を散らすようにその場から離れていった。

「ありがとうございます!」

「助かりました!」

「い、いや、僕は何もしてないけど」

スティクォンとしてはただその場に居合わせただけだ。

どちらかというと好きで誘っていた男性たちの邪魔をしたことに申し訳ないと思っていた。

「リルとファリーは同族の男性と遊ばないのか?」

「私にはファリーちゃんとクレアちゃんがいますから」

「リルちゃんとクレアちゃんがいるから」

リルとファリーは同族の男性には興味がないらしい。

スティクォンは彼らの恋が実らないことを知り不憫に感じた。

「そ、そうか・・・で、でもどうして僕のところに来たんだ?」

「お兄ちゃん的存在な?」

「頼もしいから?」

2人は小首を傾げながら言葉にする。

訂正、リルとファリーは今のところ異性との恋愛には興味がないらしい。

この分ではクレアも同じだろう。

「あははははは・・・」

スティクォンは何とも言えない顔をしていた。


それから日が傾き空が赤く染まる頃、スティクォンたちは普段着に着替えて砂浜に集まっていた。

「みんな、今日はどうだった?」

「とても楽しかったです」

「また遊びたいです」

みんなの反応は上々だ。

「それは良かった。 いつでもここ(人工海)を利用していいから」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

こうして初めての海水浴は無事に終了する。

後日、多くの者たちが遊び目的や気晴らしに人工海を利用するようになった。


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