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49.海の魔物

太陽が西に傾き空を赤く染める頃、その日のスティクォンたちの塩作りは終わった。

時間にして5時間、箱の中に入っている塩の量は約7.5キロだ。

「あれだけ作ってこれだけですの?」

「メルーアお嬢様、これでも大量の塩を作るには早いほうでございます」

ウィルアムの言う通り本来塩を作るのにかなりの時間がかかる。

ろ過して不純物を取り除くにしても、沸騰させて蒸発させるにしても時間がかかるのだ。

これでもすべての工程を最速でやって塩を作っていた。

「普通に考えれば十分な量なんだけど」

「皆様で使うと約2週間ですな。 節約して使えば最長で1ヵ月くらいかと」

1人1日5~6グラムとして今住んでいる住民が100名弱なので持って2週間、半分にしても1ヵ月くらいだろう。

「ああ、わたくしたちが開拓しているあの場所(死の砂漠)に海があれば・・・」

「メルーアさん、砂漠のど真ん中に海はないですよ」

「わかってますわ。 だけどそう望んでしまいますわ」

「たしかにそうだな。 開拓地で塩が手に入れば問題は一気に解決するんだけど・・・」

メルーアの言葉にスティクォンも同意する。

そんな話をしているとシディアが割り込んできた。

『日も暮れようとしているし食事にしよう』

「そうだな」

『食材を確保してくるからここで待っているがいい』

それだけいうとシディアは翼を羽搏かせて海のほうへと飛んで移動する。

スティクォンたちが見守る中、島から2~3キロ離れたところまで移動すると突如海面から巨大な触手が10本現れた。

「「「「「「!!」」」」」」

スティクォンたちは突然現れた触手に驚いて声が出ない。

「美味しそう」

否、ドレラだけは触手が食べ物に見えている。

10本の触手はシディアの巨体を捕まえた。

「! シディア!!」

力が弱い者なら触手により海に引き摺り込まれるだろうが、シディアは平然としている。

『どうした? お前の力はそんなものか?』

シディアは触手の持ち主に対して挑発する。

触手は更なる力でシディアを海に引き摺り込もうとするが、シディアは微動だにしない。

『これがお前の全力か? 期待外れだな』

シディアは想定よりも弱かったことに心底がっかりする。

『そろそろ終わりにしよう・・・ふんっ!!』

シディアが力を入れて身体を動かすと海の中にいた触手の本体が海面に姿を現す。

それは巨大なイカの化け物だ。

全長にして約15メートルはあるだろう。

そんなイカの化け物がシディアの力によって海面に現しただけでなく、シディアがいる位置よりも遥か上空へと打ち上げられた。

「「「「「「・・・」」」」」」

あまりの出来事にスティクォンたちは開いた口が塞がらない。

「おおー」

ドレラはイカの巨体を見て興奮している。

『喰らうがいい!!』

シディアは口を開くとイカの化け物に対してブレスを放った。

ゴオオオオオォーーーーーッ!!

ブレスは直撃してイカの化け物は吹き飛ばされそうになるが、シディアが触手の1本を掴んでいるため実際には吹き飛ばされずにシディアにぶら下がった状態だ。

イカの化け物は数度痙攣するとそのあと動くことがなくなった。

シディアはそのままスティクォンたちがいる島へ戻ってくるとイカの化け物を地面に置く。

ズシイイイイイィーーーーーン・・・

『待たせたな』

「い、いや、そんなに待ってないから」

「シディア、そのイカの化け物はなんですの?」

『これはクラーケンだ』

前にシディアが言っていた食べたら美味い海の巨大な魔物だ。

「どうやって調理しますの?」

『簡単だ。 火で炙ればいい』

それだけいうとシディアはクラーケンに向けて炎のブレスを放つ。

焦げないように慎重に炙っていく。

するとクラーケンから美味しそうな匂いが辺りを満たす。

しばらくするとクラーケンに程よい焦げ目がついて炙り終わる。

スティクォンは持っている鋼の剣でクラーケンを切ろうとするが弾力がありすぎて切れない。

「うっ! なんて弾力だっ!」

『うむ、スティクォンの力がないのもだがその剣ではクラーケンに刃が通らないか・・・クレア』

「は、はい。 任せてください」

クレアはシディアの意図を察すると【鉱石創造】を発動してオリハルコン(神金石)でできた剣を作り出した。

「スティクォンさん、これで試してください」

「クレア、ありがとう」

スティクォンはオリハルコンの剣でクラーケンを切る。

スパッ!!

鋼の剣とは打って変わってあっさりと切れた。

とりあえずブロックの塊を切り出すがこれでは食べ難い。

そこでクレアはオリハルコンのナイフを作り出してウィルアムに渡す。

ウィルアムは食べ易い大きさに捌いたあと、噛み切れるように切り込みを入れてからクラーケンの切り身をスティクォンたちに渡していく。

全員に行き届くとスティクォンが音頭を取ろうとする。

「それじゃぁ・・・」

ぐうううううぅ・・・・

どこからともなくお腹が鳴る音が聞こえる。

「「「ひぃっ!!」」」

その音にリル、ファリー、クレアが驚く。

スティクォンたちは音が鳴ったほうを警戒する。

「誰だっ!!」

スティクォンが剣を、ウィルアムはナイフをそれぞれ構える。

ガサガサガサ・・・

観念したのか音のした草木のほうから1人の女性が姿を現した。


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