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47.塩が欲しい

死の砂漠にある開拓地も徐々に発展していく。

スティクォンたちは今日も頑張って農作業に勤しんでいた。

ある程度野菜を栽培・収穫してから休憩に入る。

そこで採れたてのスイカを切って皆で食べた。

スイカを美味しそうに食べていたメルーアだが、そこで手が止まる。

「メルーアお嬢様、どうされましたか?」

「このままでも十分美味しいですけど、やはり塩が欲しいですわね」

塩。

砂漠のど真ん中ではどうしても手に入らないもの。

ウィルアムが【鑑定】で調べた結果、地上より200メートルは砂で埋め尽くされていて、仮に岩塩層があるならそれよりも深い場所を掘らないといけない。

「たしかに塩があれば料理のレパートリーが格段に増えますな」

「生、焼く、茹でる、蒸す、煮る・・・どれも十分に素材の美味しさを楽しめますが、やはり塩があるのとないのとでは雲泥の差がありますわ」

「メルーアお嬢様」

「わかっていますわ」

メルーアとしても無い物強請りだということはわかっている。

わかっているがどうしてももう一味ほしいところなのだろう。

「どこかで塩が手に入らないかしら・・・」

「そうだな・・・この砂漠の底を掘って岩塩層を見つける。 海まで行って海水を手に入れる。 あとは都市に行って購入する・・・くらいかな」

スティクォンが指を折りながら手に入れられる方法を口にした。

岩塩層は運が良ければ砂を取り除いてすぐのところにあるかもしれないし、運が悪ければ何千メートルと掘っても出てこない可能性がある。

海水にしても魔族の国には海がなく、仮に見つけたとしても海水をどうやってここまで運ぶか検討しないといけない。

一番手っ取り早いのは都市に行き、市場で塩を購入することだ。

しかし、これにも問題がある。

それはスティクォンたちの存在を第三者に知られるということだ。

定期的に都市に行けばそれを狙って刺客が襲い掛かってくるかもしれない。

「今は不定期に都市に行って買うしかないかな」

「幸いクレア様に宝石を作り出していただければ資金には困ることはありません」

「毎回宝石を売っていたらさすがに怪しまれるから3~5回に1回くらいかな?」

「そうですな」

何事もやりすぎれば目立つ。

金がなくなった時にだけ宝石を売ってそれを資金にすればいい。

「とりあえず塩に関しては今度都市に行くときにでも購入しよう」

「それまではお預けですわね・・・」

メルーアは溜息を吐いてから手に持っているスイカを再び口にするのであった。


休憩を終えて農作業をしているとシディアがファリーを乗せてやってきた。

『スティクォン、ドレラ、これから食料()を調達するので一緒に来てくれ』

「わかった」

「・・・(コクコク)」

ドラゴンであるシディアは野菜よりも肉のほうが好きだ。

時偶魔物を狩りに出かける。

最初は1匹で出かけて自分だけ食事にありついていたが、人が増えたことによりスティクォンたちにも肉を提供するようになった。

その際に余分な血液を吸い出すドレラと肉の鮮度を維持できるスティクォン、それに行き帰りの運搬に力があるファリーを引き連れていく。

「メルーア、ウィルアムさん、リル、ちょっとシディアと行ってくるよ」

「わかりましたわ」

「お気をつけて」

「頑張ってください」

スティクォンとドレラはシディアに乗ると東のドワーフの国にある森に向かった。

森に到着するとスティクォンは周りを警戒する。

『今回も任せるぞ、スティクォン』

「シディア、たまには手伝ってくれてもいいんじゃないか?」

『何を弱気なことを言うか。 それではスティクォンの体力作りにならないだろ?』

「う゛・・・たしかにそうだけど・・・」

シディアが魔物を相手にすれば瞬殺だがそれではスティクォンのためにならない。

諦めてスティクォンは1人で森を彷徨っていると目の前にフォレスト・ベアが現れた。

「ガアアアアアァーーーーーッ!!」

「来たか・・・」

スティクォンは腰にぶら下げた鋼の剣を抜くと正眼に構える。

フォレスト・ベアはスティクォンに対して突進してきた。

スティクォンは避けずにその攻撃をもろに受けるが吹き飛ばされない。

倒せないことを理解したのか今度は爪で引き裂くが、服は裂けてもスティクォンの肌を裂くことはなかった。

「くっ! 相変わらず力が強いなっ!!」

戦闘開始直後にスティクォンは【現状維持】を発動して自分の身体の状態とその場にいることを維持した。

これにより噛み付き攻撃、爪攻撃、突進攻撃による損傷を無効にする。

「これでも喰らえっ!!」

再び突進してきたフォレスト・ベアに合わせてスティクォンが剣で突く。

剣はフォレスト・ベアの眉間を見事貫いた。

フォレスト・ベアは絶命し、そのままスティクォンのほうへと倒れこむ。

「くっ! 相変わらず重いな・・・」

スティクォンはスキルを解除するとフォレスト・ベアの死体を転がしてシディアたちのところに戻る。

そこでドレラがフォレスト・ベアの傷口から体内の血を吸い取り、干からびたところで【現状維持】を発動して状態を維持した。

あとは萎んだフォレスト・ベアの死体をファリーが運搬用の箱に入れる。

『ふむ、まずは1匹だな。 その調子でどんどん狩ってくるがいい』

「ははは・・・わかった」

スティクォンはそれからフォレスト・ベアを13匹狩る。

そのうち3匹をシディアが、1匹はドレラの胃の中に納まった。

『ふむ、随分強くなったな』

「誰かさんのおかげで・・・ね」

『我を褒めても何も出んぞ?』

「褒めてないよっ!!」

突っ込みを入れるとスティクォンはシディアの背中に乗る。

無事に狩りも終わりスティクォンたちは帰途につく。

戻るまでに時間があるのでスティクォンはシディアに質問した。

「シディア、聞きたいことがあるのだが」

『何を聞きたい?』

「シディアは海には行ったことあるか?」

『海? ああ、あるぞ。 あそこ()に住むサーペントやクラーケンは美味いからな』

「そ、そうなんだ・・・」

どちらも海に住む巨大な魔物だ。

『それで海がどうした?』

「今度連れてってくれないか? 海水から塩を手に入れたいんだ」

『わかった。 準備ができたらいつでも声をかけるがよい』

「助かる」

こうしてスティクォンはシディアに海に行く約束を取り付けた。


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