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46.布製品を作ろう

アーネルとシャンティに綿(わた)を渡したところで2人は掛け布団、敷布団、枕の作成を開始した。

程なくして試作品ができあがり、それをスティクォンたちのところに持っていく。

「スティクォン、試作品ができたわ」

「え? もうできたのか?」

頼んだ翌日にできるとはスティクォンも想像していなかった。

スキル(【織編神】)を使えばこんなの簡単よ。 あとで感想を教えなさい」

「わかった」

スティクォンはアーネルから掛け布団、敷布団、枕を受け取る。

それらには煌びやかな刺繍が至る所に施されていた。

「羨ましいですわ」

「メルーア、ハーニ、あなたたちにもあるわよ」

「「わたくし(私)に?」」

「はい、これ」

そういってシャンティがメルーアとハーニの前に出したのは2人が頼んだ女性用の下着だった。

「メルーアは可愛く、ハーニはセクシーな下着に・・・」

「「わあぁっ! わあぁっ! わあああああぁっ!!」」

メルーアとハーニは顔を真っ赤にしながらシャンティから下着を引っ手繰ると、大声を出してシャンティの言葉を遮る。

2人の行動は逆に目立ち、その場にいたみんなから注目を浴びた。

「メルーア、ハーニ、どうしたんだ?」

「「なんでも(ありませんわ・ないです)!!」」

「そ、そうか・・・」

あまりの剣幕にスティクォンはそれ以上はいわなかった。

なんとか誤魔化せたことに胸を撫で下ろすメルーアとハーニ。

そんな2人にシャンティが近づいて耳元で囁く。

『そういえば今ハーニが持っている下着を見てスティクォンは赤らめていたわよ。 異性を引き付けるにはもってこいかもしれないわね』

「「!!」」

それを聞いたメルーアとハーニの顔がますます赤くなる。

『2人とも意中の人を得られるように頑張ってね』

シャンティはそれだけいうとアーネルのほうへ戻っていく。

スティクォンたちはそれぞれ受け取った物を持って家に戻った。


翌日───

スティクォンはアーネルとシャンティの家を訪れた。

「アーネル、シャンティ、いるか?」

「あら、スティクォン、いらっしゃい」

「どうかしたのかしら?」

「昨日貰った試作品だけど、とても寝心地が良かったよ」

実際に使用すると3分もしないうちに深い眠りに入り、翌朝までぐっすりと眠れた。

起きた際の痛みや疲労もまったく感じられない。

「当然の結果ね」

アーネルは満足したように頷く。

「それで掛け布団、敷布団、枕を量産してくれるかな?」

「わかったわ。 綿のほうはお願いね」

「メルーアやリルたちに伝えておくよ」

用件だけいうとスティクォンはメルーアたちのところに向かう。

綿畑に到着するとメルーアとリルたちホビット族がせっせと綿を栽培していた。

ウィルアムは収穫された綿毛を種と分別し、ドレラは綿の汚れだけ取り除いていく。

すでに籠の中には大量の綿で埋め尽くされていた。

「メルーア、リル、量産することが決定したから引き続き綿の栽培をお願いしたい」

「「わかりました(わ)」」

それからは綿の生産と、アーネルとシャンティに無理をさせないよう1日に作る数を制限した。

できあがった物は女性を優先して随時配っていく。

しばらくの間不平不満はあったが結果として全員に行き届くとそれらも自然となくなった。


アーネルとシャンティは座布団、クッション、カーペット、カーテン、ハンカチ、タオルなど布製品を少しずつ作成していく。

のちにこれらが普及することで生活の水準が一段階上がったことを実感する。

ある程度普及が済んだところでアーネルとシャンティの仕事も落ち着いてきた。

「色々な物を作ったわね」

「全員に行き届く頃には暇になるわね」

そうはいうがスティクォンたちから服や下着の替えがほしいという要望が多いため、そこまで暇ではない。

その気になれば片手間でできてしまうが、それでは時間を持て余すだけだ。

「何か暇つぶしになるようなことはないかしらね」

「そうね・・・」

そこにスティクォンがホビット族とドワーフ族の女性を何名か引き連れてやってきた。

「アーネル、シャンティ、今大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ」

「少し暇だったところよ」

すると女性たちがアーネルとシャンティにお願いする。

「あの・・・実は作ってほしい物があるのですけど・・・」

「作ってほしい物?」

「何かしら?」

「動物を作ってほしいのです」

「動物?」

「私たちは動物は作れないわよ」

魔物であるアーネルとシャンティは動物を作れないときっぱり断るが、スティクォンがすぐにフォローする。

「あぁ、言葉が足らなかったな。 実は布で動物を表現できないかと思ってね。 見た目犬とか猫とかの動物を布で作れないかなって」

「ちょっと待って」

アーネルは頭の中にある動物をイメージしてその場で縫い始める。

30分後、そこに布で編んだ狐がいた。

布の中に綿を入れることで見た目は狐そっくりのぬいぐるみだ。

「こんなのかしら?」

「すごいリアルだな」

「できればもう少し可愛いのがいいです」

スティクォンがいう通りアーネルの狐のぬいぐるみはあまりにもリアルすぎて女性たちからは受けが悪い。

「それならこれかしら?」

今度はシャンティが縫い始める。

1時間後、そこにはデフォルメされた狐のぬいぐるみがあった。

「これでどう?」

「「「「「か、可愛いいいいいぃーーーーーっ!!」」」」」

シャンティが作った狐のぬいぐるみに女性たちが群がる。

アーネルは自分が作った狐のぬいぐるみを見て思い悩む。

「これじゃリアルすぎてダメだったのかしら?」

「これはこれですごいけどね」

落ち込んだアーネルをスティクォンがフォローした。

このあとシャンティ考案のデフォルメぬいぐるみが女性たちの間で爆発的に人気になる。

そして、アーネルの作ったリアルぬいぐるみを見たメルーアとハーニが抱き枕を発案し、男性たちと一部の女性たちに好評を博した。


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