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39.ラストール3 〔ラストール視点〕

時はスティクォンが死の砂漠にある開拓地に最低限の環境を整えた頃に遡る。






「んん・・・」

余は眠りから目が覚める。

隣を見ると昨晩相手した女3人がすやすやと眠っていた。

「・・・」

あれから3ヵ月、余の精力は極端に落ちた。

昔は10人相手に朝方まで抱いても衰えることがなかったのに、今ではたった3人を相手するだけで精根尽きる有様だ。

とはいえ、時間が経てば常人を遥かに上回る早さで精力が回復するので機能不全ではない。

「この3ヵ月で随分と変わったものだ・・・」

余の精力もだがフーリシュ王国全体に変化が見られた。

身近なところでは騎士たちは体力が、魔導士たちは魔力が衰えたそうだ。

それだけではなく各貴族の領地にも様々な異変が次々と起きた。

農作物の不作により、食料が高騰し値上げが止まらない。

鉱石の不足により、騎士が使う武器や防具だけでなく、平民が使う工具や農民が使う農具などもすべて高騰している。

それに伴い各貴族からの陳情書が余に届いていた。

内容はどれもこれも似たようなもので支援してもらいたい旨の文言ばかりだ。

金があるのだから商人にでも縋ればいいだろう。

普通ならばそう返していただろうが、商人たちもこの異常事態に振り回されて天手古舞だと聞かされた。

今まで順調に進んでいた商売が突然滞るのだから商人たちにとっては大打撃だろう。

さらに追い打ちをかけるように王国内の魔物や魔獣が急に強くなったせいで、移動や輸送に一苦労しているそうだ。

冒険者ギルドでは商人からの護衛の依頼が絶えないらしい。

その分盗賊や野盗の討伐が激減したとか。

理由としては魔物や魔獣に襲われたことで、機能が停止したり、場合によっては全滅したところもあるそうだ。

もっとも魔物や魔獣が今以上に活性化するなら軍を動かす必要が出てくるだろう。

魔物や魔獣をのさばらせておけば害にしかならないからな。

そう考えると頭が痛い。

「まったく・・・どいつもこいつも余の覇道の邪魔をしおってからに・・・」

掌から次々と財が零れ落ちる様を想像して余は顔を顰めた。

気分が削がれた余は女たちを放置して身を清めると隣の部屋に向かう。

メイドが選んだ服を着ると謁見の間へと向かった。

そこには誰もおらず静寂が支配している。

「思えばこの3ヵ月、内政にばかり気を取られているな」

宰相からは健康的な生活だといわれるが、余が望んだことではない。

女たちとの逢瀬、これこそが余にとっては何よりも大事な時間なのだ。

「そのためにもこの異常事態の原因を突き止めなければな」

フーリシュ王国で起きている異変の元凶を探し出し、対処しなければならない。

余は部下にここ3ヵ月国内で起きた出来事を調べさせている。

しかし、元凶となる出来事は1つも見つかず、現在も調査中だ。

「調査させている人員が少ないのか、それとも確認している時間が短すぎるのか・・・」

前者であれば人員を増やせばよいが、後者ではどれくらいまで遡って確認すればよいのやら・・・

「気になる情報でもあればよいのだが・・・」

そこでふと気になることが1つ浮かんだ。

「スキル授与・・・」

今年12歳を迎えた女子たちのスキルに関しては一通り聞いている。

では、男子たちは?

もしかすると情報として上げられた中に国をも揺るがすスキルの所持者がいるかもしれない。

「ちっ! もし、そんな重要な情報を握り潰している者がいるならただでは済まさぬぞ!」

余が苛ついているとそこに宰相がやってきた。

「国王陛下! こんなところ(謁見の間)にいらしていたのですね!」

「丁度良いところに来た。 お前に聞きたいことがある」

「何でございましょう?」

「今年12歳を迎えた男子のスキル授与について聞きたい」

余の質問に宰相は首を傾げる。

「それならば陛下御自身が『報告不要』、『紙の無駄』と言われました」

「何?」

余は過去の自分の言動を思い返す。


『貴族子女だけでよいぞ』

『紙の無駄だ』


思い出した!!

言った! たしかに余自身の口から発言している。

貴族も平民も女子だけしか聞いていない。

余の額には大量の汗が噴き出していた。

「もしかすると今年12歳を迎えた男子の中に国を左右するほどのスキルの持ち主が現れたとお考えですかな?」

「・・・そ、その通りだ」

宰相に内心を見透かされて余は素直に答えた。

「はぁ・・・だから言ったではないですか・・・」

「まさか本当に玉が混じっているとは思わんだろ?」

「そういうのはすべての報告を受けてから言ってください」

「ぐぅ・・・」

宰相はここぞとばかりに余に苦言をぶつけてくる。

本来であれば不敬であるが、今回ばかりは宰相の言が正しい。

「当時を知る人物にあたってみます」

「・・・頼む」

それだけ言うと宰相は一礼して謁見の間をあとにする。

1人残された余は溜め息を吐く。

「・・・はぁ、問題はその玉がどんなスキルかだな」

国に害を成すスキルであれば、その者には申し訳ないが命を絶たせてもらう。

有益な場合は抱え込むとしよう。


数日後、宰相から分厚い報告書を受け取る。

文官に手伝わせるところだが何が有用なスキルかわからない以上自分でやるしかない。

余は書類を1枚1枚目を皿にして確認していく。

しばらくして1枚の紙を凝視する。

「このスキルは?」

スキル欄には【現状維持】という変わったスキル名が書かれていた。

所有者の名前を見るとスティクォンという変わった名前だ。

「どこの貴族だ? ・・・アバラス公爵家? ああ、イコーテム公爵の息子か」

そこで余は国王直轄近衛騎士団に所属しているリクルを思い出す。

あの女もいずれは余のものに・・・っと、いかんいかん今はそれどころではない。

「【現状維持】・・・【現状維持】ねぇ・・・意味不明なスキルだな。 もっとも余の今の精力が維持できれば・・・!!」

そこまで口にして余は勢いよく立ち上がる。

「精力を維持し続ける・・・そうか! そういうことだったのか!!」

その時、タイミング良く宰相が部屋に入ってきた。

「陛下、どうされましたか?」

「イコーテム公爵とその息子であるスティクォンを今すぐ城に呼び出せ!!」

余はすぐに一筆すると封をして宰相に渡す。

「・・・承知しました」

封書を受け取った宰相は理由も聞かずに一礼すると部屋を出て行った。


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