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37.ロニー3 〔ロニー視点〕

時はスティクォンが死の砂漠にある開拓地に最低限の環境を整えた頃に遡る。






俺は今、宮廷魔導師団の先輩魔導士たちからいびられていた。

「おいロニー! さっさと次の的を用意しろ!!」

「何やってるんだよ! この愚図!!」

「そんなこともできないのかよ!!」

今までの鬱憤を晴らすように先輩魔導士たちは俺に次々と用を押し付けていく。

「なんで俺がこんな雑用を・・・」

俺がぼやくとそれを察知した先輩魔導士の1人が注意する。

「おい! 喋っている暇があるならさっさとこれ片付けろよ!!」

「・・・はい」

俺は命令されたことを片付けていく。

それを遠巻きに見ていた同輩や後輩は指をさしながらクスクスと笑っている。

俺が殺意を込めた視線を向けるも意に介さず、逆に挑発的な目で俺を見た。

「くそ・・・なんでこうなった・・・」

事の発端は3ヵ月前に疲労を感じてからだ。

それまで俺の身体には無尽蔵の魔力が宿っていた。

高難易度の魔法も俺の手にかかれば容易く、高威力かつ即連射により敵はいなかった。

更に王国でも有数な名家であるアバラス公爵家の嫡男であり、スキル授与で手に入れた【賢聖】がほかの者たちよりも優秀である証だ。

それなのに、なぜ急に尽きることもない魔力が失われた? 誰かが俺に嫉妬して魔力を奪ったのか? だとしたら許せない! 見つけ出して必ず地獄を味わわせてやる!!

そんなことを考えていると遠くから驚きの声が聞こえてくる。

「おい! リヴァル! リヴァルじゃないか!!」

何事かと俺はそちらのほうを見て固まった。

そこには以前俺に楯突いた平民上がりの先輩魔導士がいたのだ。

俺が負わせた火傷は見事に完治しており、何事もなくこの場に現れた。

「みんな心配かけてすまなかった」

「お前怪我は大丈夫なのかよ?」

「ああ、この通りすっかり元に戻ったよ。 といっても目が覚めたのは3ヵ月前だけどね。 それからは治療とリハビリの日々を送っていたさ。 退院したのもつい先日さ。 ところであれは何をしているんだ?」

先輩魔導士が雑用をしていた俺を訝しい目で見る。

「ああ、あいつか? あいつ急に魔力が無くなったんだとよ。 で、ついたあだ名が『出涸らし』だ」

「へえぇ・・・」

興味深そうに俺を見るがその目は怒りに満ちていた。

「それじゃぁ、そこの『出涸らし』君。 俺のリハビリ相手になってくれよ」

「・・・」

「どうした? 病み上がりの俺では不満か?」

「・・・わかったよ。 相手になってやるよ」

俺が返答すると先輩魔導士が円形の闘技場を指さした。

「それじゃ、あっちでやろうぜ」

「・・・」

俺は無言で頷くと先輩魔導士とともに円形の闘技場に立つ。

するとほかの魔導士たちがこれから始まる試合を見に皆集まってきた。

「リヴァル! 負けるな!!」

「おい、リヴァル! そんな『出涸らし』なんてやっつけちまえ!!」

「リヴァル先輩! 頑張ってください!!」

先輩魔導士への黄色い声援が止まない。

「さぁ、やろうか」

「・・・はい」

俺と先輩魔導士がそれぞれ構える。

そして、お互い魔法を同時に発動し放たれた。

俺は【火魔法】を、先輩魔導士は【水魔法】だ。

それぞれの魔法がぶつかり合い消える。

(くそ! こんな病み上がりな奴の魔法を上回らないだと!)

昔の俺の魔法なら今の一撃で相手の魔法をかき消した上で、貫通した炎が相手に当たり倒していただろう。

だが、今の俺の魔法では圧倒するどころか互角に持ち込むのがやっとである。

「はぁはぁはぁ・・・」

「どうした? 昔のように俺に大怪我させるほどの魔法を使ったらどうだ?」

「ぐぅ・・・」

それができるならとっくにしている。

俺はそう叫びたかったができない。

先の魔法で俺の魔力はかなり消費したからだ。

それに対して先輩魔導士はまだ魔力に余裕があった。

「次行くぞ!!」

先輩魔導士が【水魔法】を発動すると俺はそれを避けた。

「おい! 『出涸らし』! 何避けてんだよ!!」

「魔法で防御もできないのかよ!!」

「さすが『出涸らし』! やることが卑怯だぜ!!」

魔法を避けたことにより外野からブーイングの嵐が飛んできた。

(こいつら!!)

昔のように俺の魔力が無尽蔵にあればこんな連中全員消し炭にしてやるのに・・・

力を失った今の俺には無理なことだ。

このあと、俺は先輩魔導士との魔法戦で惨敗した。

(くそ! 魔力ならあいつらよりも上なのに!!)

総合的に見たら魔力も威力も速度も全部俺が上回っている。

だが、肝心の魔法の使い方がなってなかった。

ほかの魔導士たちが限られた魔力で工夫して魔法を使うのとは違い、俺には今までのように力任せで魔法を使うことしかできない。

いや、学ぶ機会はいくらでもあった。

しかし、俺のほうが魔力も実力も上という理由で宮廷魔導師団の魔導士たちを見下し、教えを乞うことなどしなかったからだ。

もし、俺が謙虚になって魔法を学んでいれば、力を失っても工夫次第では相手を倒せていただろう。

結局俺の横暴な態度が巡り巡って自分の首を絞める結果になった。


それからしばらくして父上から手紙が届いた。

手紙の内容は至急実家に帰って来いと書かれている。

「家に帰って来いって一体何があったんだ?」

俺は団長に実家に戻ることを伝えると急いでアバラス公爵領へと戻った。

領に戻るとそこは俺の見知った景色とは随分とかけ離れていた。

「! これは一体・・・」

緑豊かであったアバラス公爵領がしばらく見ないうちに草木1つない地獄へと変貌していた。

俺は館に戻るとそこには憔悴していた父上が椅子に座っている。

「ロニーか・・・お前に頼みたいことがある」

「領地のことでしょうか?」

俺の言葉に父上は力なく頷く。

「その通りだ。 この領地を再び緑溢れる大地に戻してほしい」

「・・・ぜ、善処します」

昔の俺なら自信満々に応えただろう。

だけど、力を失った今の俺にできるかは不明だ。

悩んでいても仕方ない。

俺は早速行動に移すことにした。

結果としては領地の緑化には失敗に終わる。

俺ができなかったことに父上はがっくりしていた。

1人になった俺は空を眺めながら項垂れる。

「父上の跡を継ぐのは無理かもしれないな・・・」

俺の心の中を表すように空から雨が降ってきた。


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