表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/156

3.出会い

王都を散策するスティクォン。

歩いているうちに考えがまとまる。

この国(王国)にいても明るい未来がない。 それならどこか別の国にでも行くか・・・」

どうせ勘当されて行く当てもないし、それならほかの国で生きていくことに決めた。

問題はどこの国に行くかだ。

東の帝国、西のエルフの国、南の獣の国、そして北の魔族の国。

まず、南の獣の国はありえない。

なぜなら獣の国に行くにはどうしてもスティクォンの生家である公爵家を通らないといけないからだ。

次に帝国だが王国との関係が頗る悪い。

そんな中、勘当されたとはいえ、元公爵家の子息が行けば狙われるのは必然。

そしてエルフの国は閉塞的で他種族を寄せ付けない。

自然と共有して生きているので、その生活を乱す者には容赦しないと聞く。

では魔族の国はどうだろうか?

話を聞く限りはこの国は弱肉強食で成り立っているらしい。

どちらかといえば王国が一方的に嫌っているように感じる。

スティクォンは悩んだ末に北の魔族の国に行くことに決めた。

そうと決まれば急いで支度をする。

武器屋で自衛用に鋼の剣と鋼のナイフを、錬金術師の店でポーションを、露店で保存食を、あとは色々な店を回り必要な物資を購入した。

準備が整ったスティクォンは乗合馬車を利用して一路北を目指す。


馬車に揺られて1ヵ月───

王国最北端の村に到着する。

そこは荒れ果てており、死んだような目をした人たちで溢れていた。

王国でも噂に名高い世捨て村だ。

ここより先は魔族の国であり、何があろうと王国は関知しない。

「さてと・・・行くか。 さらば、王国よ」

スティクォンは王国を見限り魔族の国に入国する。

この瞬間、フーリシュ王国はこの12年間の平穏が失われたことに誰も気づいていなかった。


魔族の国に入って3日目、スティクォンは荒野を彷徨っている。

今のところは魔物や魔獣に遭遇していないが、いつ襲われてもおかしくないので警戒は怠らない。

しばらく歩いていると前のほうから砂埃が舞って何かがこちらに近づいてくる。

それは逃げる男女2人組とそれを追っかけている複数の者たちだ。

スティクォンがどうしたものかと考えていると初老の男性が急に止まり叫ぶ。

「お嬢様! お逃げください!!」

「ダメよ! 爺も一緒に・・・」

「なりません! ここはこの爺が一命を賭して食い止めます! 早くお逃げください!!」

「爺!!」

女性は悲壮な声で叫んだ。

スティクォンは頭を掻くと男性のほうへと走り出した。

「ああ、もう・・・こういう展開じゃ助けないわけにはいかないだろ! 頼むから助けに行くまで耐えてくれよ!!」

この瞬間、男性と男たちの戦いは()()された。

人数差や武器の良し悪しは関係ない。

普通ならあっという間に終わるはずの戦いだが未だに戦闘が続いていた。

「なんだ! この爺ぃ! なぜ倒れない?!」

「はぁはぁはぁ・・・ふっ、そんなのは知りませんよ」

「おい、もっと大人数で攻めろ!」

そこにスティクォンが剣を抜いて男たちの戦いに乱入する。

「おい! 爺さん、大丈夫か?!」

「あなたは?」

「それはあとでいいだろ? それよりもこいつらを先に片付けよう」

「・・・そうですな。 助力感謝します」

「誰だか知らないが殺っちまえ!」

しかし、男たちは男性ばかりを攻撃してスティクォンには誰も攻撃しない。

「ちょっ?! 爺さんばかり攻撃するの止めろ!!」

スティクォンは持っている剣で男たちを次々と斬っていく。

男たちの数はあっという間に減り、リーダー格の男が無理だと判断する。

「おい、撤退だ!」

そして、男たちは逃げる・・・わけでもなく、まだ男性に攻撃を仕掛けていた。

「何してる?! 撤退しろ!!」

「逃げたら殺される!」

「戦え! 戦うんだ!!」

「お、おい・・・」

しばらくするとリーダー格の男以外全滅していた。

「はぁはぁはぁ・・・あとはもうお前だけだぞ」

「く、くそぉ!!」

リーダー格の男は男性に襲い掛かった。

「だから爺さんばかりを攻撃するな!!」

スティクォンは後ろからリーダー格の男を斬った。

「あぐぅ・・・そ、そんなぁ・・・」

それだけ言うと事切れる。

戦いが終わり女性が男性に駆け寄った。

「爺! 爺! 大丈夫なの!」

「お嬢様、無事で何よりです」

「ああ・・・傷が・・・」

「おい、早くこれを飲ませろ」

スティクォンは自分用に買ったポーションを女性に差し出す。

女性は一瞬迷ったがそれを受け取ると男性に飲ませる。

すると身体が発光して傷が癒されていく。

「おお、傷が治っていく」

「旅のお方、ありがとうございます」

「いや、気にするな。 あのまま死なれても困るからな」

スティクォンは改めて男女を見る。

顔は青白く耳が人間より尖っていた。

彼らが王国でいうところの魔族なのだろう。

倒れている男たちも皆同じだ。

「旅の方、お名前は?」

「あ、僕は人間族で名前はスティクォンといいます」

「スティクォン様・・・わたくしは魔族ウィンアーク伯爵家が三女で名をメルーアと申します」

「同じく魔族でこちらに御座すお嬢様・・・メルーア様の執事をさせていただいておりますウィルアムと申します」

それはスティクォンとメルーアたちとの運命の出会いであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ