表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/156

25.優先すべきは何か

スティクォン、メルーア、リルの3人は防壁作りをしているウィルアムのところへと向かう。

土地と砂漠の境界線のところまでくると、巨大なオリハルコンでできた壁が何枚か設置されていた。

クレアは今もオリハルコンの防壁を作成している。

その近くでウィルアムとシディアが見守っていた。

「爺!」

「メルーアお嬢様、どうされましたか?」

「実は爺に相談があってきましたの」

「なんでございましょう?」

「これなんだけど・・・」

スティクォンたちは先ほど育てた野菜をウィルアムに見せる。

「拝見いたします」

ウィルアムはすぐに野菜を【鑑定】した。

「ふむ・・・なるほど・・・メルーアお嬢様は味の向上をお求めということでございますか?」

「その通りですわ」

「今のところ改善するなら土の性質を中性に近くするか土の栄養を補うか水の栄養を補うか、それとも受粉させるかで迷っています」

「理解いたしました」

ウィルアムが納得するとそこにシディアが話しかけてきた。

『ん? 野菜は育てられればそれで問題ないのだろう?』

「シディア様、それはあくまでも食用として最低限のレベルでございます。 食事は生活の基盤の1つです。 もし、毎日不味い食事ばかり出されてはやる気が起きませんでしょう?」

『む! たしかにその通りだな。 食べるなら美味いものが食べたいものだ』

ウィルアムの説明にシディアが納得する。

「それで爺に聞きたいのですが、素材の味の向上を目指すなら何がいいかしら?」

「ここまでくる間に僕たち3人で話していたんだけど、昆虫による受粉がいいのではないかと考えていたんだ」

「たしかにそれなら味の向上は見込めますな」

「それなら昆虫をここに連れてくるということで決まりだな」

スティクォンたちは当初の予定通り、昆虫をこの砂漠に持ってくることに決めた。

『待て』

「シディア、どうした?」

『この状態で放置していくのか?』

シディアは防壁がまだ中途半端であることを指摘する。

「今のところはここに来る変わり者はそうはいないだろう」

『たしかにそうだが』

「ファリーちゃんもここに呼んでみんなで話し合って決めませんか?」

リルが意外な提案をしてきた。

「ファリーだけ仲間外れで決めるのはあまりよくないな」

「ここにいる全員の意見で決めるのは大事ですね」

『ならば我が一飛びしてファリーを連れてこよう』

「お願いします」

シディアは中央に向けて飛んでいく。

程なくしてファリーを連れて戻ってきた。

『待たせたな』

「リルちゃん、クレアちゃん、何かあったの?」

「野菜の味を向上させるために昆虫をこの砂漠に持ってこようとしているの」

リルが説明するとファリーが別の提案をしてきた。

「あ! そういえば私からも提案があるんです!」

「ファリーちゃん、何かあるの?」

「建物立てるのに人が欲しいです。 1人でも問題なくできるけど時間がかかりすぎるから」

「たしかにリルが野菜を耕しているときにそれは感じた」

ファリーの人員を増やすことにスティクォンは納得する。

いくら有能でも1人では限界があるからだ。

新たな選択肢にスティクォンたちは悩む。

「現状の作業、味の改善、人員確保。 どれも優先度が高いですな」

「では多数決で決めよう」

「まずは現状を最優先する人は?」

賛同したのはシディアとクレアだ。

「続いて人員確保を最優先する人は?」

手を挙げたのはスティクォンとファリーだ。

「残った3人は味の改善を最優先・・・ということで、まずは味の改善に決定します」

それを聞いてメルーアがすごく喜んでいた。

「それで外部から何を連れてくるのかしら?」

「そうですな・・・蜂などよろしいかと。 できれば花も一緒に持ってこれれば尚よいでしょう」

ウィルアムとしては蜂を使って野菜の花に受粉することで、より食べやすい野菜を作ろうと考えているのだろう。

『決まったのなら早速行くとしよう』

「シディア、何か良さそうなのを知っているのか?」

『我は知らぬ。 適当に自然が豊かな場所に行けば問題なかろう』

シディアがそういうと慌ててメルーアが提案する。

「それならばこの国(魔族の国)の北にある魔湖はどうでしょう? あそこなら花だけでなく自然も豊富ですし、蜂もきっといますわ」

メルーアの発言にウィルアムが思考する。

「あの湖ですか・・・たしかに魔族の国でも指折りの美しい場所ですが危険ではないでしょうか?」

「ウィルアムさん、メルーアが言った場所ってそんなに危険なのか?」

「自然が豊富故に魔物や魔獣が多くいます」

「「「ひぃっ!!」」」

ウィルアムの話を聞いてリル、ファリー、クレアが怖さから悲鳴を上げる。

『リル、ファリー、クレア、そう怖がるな。 何かあれば我の炎で燃やし尽くしてやる故に安心するがいい』

「「「「「「・・・」」」」」」

危険な場所に行くよりもシディアの発言のほうが何百倍も危険だとスティクォンたちは思ってしまった。

「ま、まぁとりあえず誰が行くかだな・・・」

『まず我とスティクォン、それと案内役にメルーアかウィルアムは確定だな。 リル、ファリー、クレアはここで留守番だ。 我らが行っている間に作業をしていてもらう』

「それが妥当ですな。 では、僭越ながら私が・・・」

ウィルアムが志願しようとするとメルーアが止めた。

「爺、お待ちなさい。 わたくしが行きますわ」

「メルーアお嬢様! 危険です!」

「言い出したのはわたくしです。 大丈夫、心配いりませんわ」

メルーアはスティクォンとシディアを見て鷹揚に頷く。

「・・・わかりました。 私はここでリル様、ファリー様、クレア様をお手伝いいたします」

『決まりだな。 スティクォン、メルーア、行くぞ』

スティクォンとメルーアはシディアの背中に乗ると北にある魔湖を目指して出発したのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ