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153/156

153.貨幣の発行

シャンティがデザインして、クレアにより貨幣が創造された。

『ウィルアム、それぞれの硬貨の重さは同じか?』

「すぐに確認いたします」

ウィルアムは【鑑定】を発動するとスティクォンやウィルアムが持っている硬貨とクレアが創造した硬貨の重さを比較した。

「確認いたしました。 どの硬貨もそれぞれ重さはほぼ同じでございます」

『うむ。 それならば硬貨の1:1交換でも問題ないな』

それを聞いてシディアは満足する。

「あとはこれに魔紋を付与するだけですな」

『魔紋はあとで付与するとして、最初だから多めに造るか。 クレア、悪いが金貨を100万枚、銀貨と銅貨をそれぞれ500万枚ほど造ってくれ』

発注枚数を聞いたスティクォンがシディアに問いかける。

「シディア、そんなに必要か?」

『もちろんだ。 外交で他国との両替に使用するだけでなく、この国(マルチブルグ)に住む者たちにも配布する必要がある。 今までの無償で提供したり物々交換するのとは違い、これからは金で物を売買して経済を回していくのだからな。 それにこういうの(貨幣のやり取り)は早いうちから慣れたほうがいいだろう』

「シディアのいっていることはもっともだな。 地方では今でも物々交換しているところもあるが、都市部では貨幣を使った売買が主だからな」

「魔族の国も同じでございます」

シディアの話したことはスティクォンやウィルアムがよく知る経済そのものだ。

説明を聞いてスティクォンは納得する。

『話が纏まったところで始めるとしよう』

「シディアさん、これと同じ物を量産すればいいですか?」

クレアは【鉱石創造】で造ったマルチブルグの貨幣を見ながらシディアに問いかける。

『その通りだ。 ああ、あと製造年号を刻むのも忘れずにな』

「わかりました! まずは金貨からです! 【鉱石創造】!!」

クレアは【鉱石創造】を発動すると手のひらから大量の金貨を造り出した。

チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、チャリン・・・

あまりの量に手から金貨が次々と落ちて硬質な床にぶつかる音が鳴り止まない。

しばらくするとクレアが創造するのを止める。

「シディアさん、金貨100万枚造りました」

『うむ、ご苦労』

「念のため今造ったのを確認いたします」

ウィルアムはクレアが今しがた造った金貨を数枚拾って見る。

どの硬貨も表はマルチブルグの国旗が、裏にはスティクォンの正面の顔とその下に『マルチブルグ 0001(1年)』と製造年号が刻まれていた。

「どうですか?」

「特に問題はございませんな」

「ありがとうございます!!」

ウィルアムからお墨付きをもらい、満面の笑みを見せるクレア。

『では、我が魔紋を付与するとしよう』

シディアが目を見開いて魔力を開放するとクレアの足元にある大量の金貨が宙に浮かび、そして、魔力を付与された金貨は一瞬だけ紅い光に覆われる。

それから邪魔にならないように別の場所に移動するとその場に積み上げられた。

『これでいいだろう』

「確認いたします」

ウィルアムは【鑑定】を発動して金貨の山を見る。

「・・・確認いたしました。 数は100万枚、どの金貨もシディア様の魔力が付与されております」

『クレアよ、銀貨と銅貨も頼むぞ』

「わかりました!」

このあと、クレアはスキル(【鉱石創造】)で銀貨と銅貨もそれぞれ500万枚造った。

それらにもシディアが魔紋を付与する。

金貨の山の隣には銀貨と銅貨の山ができあがっていた。

スティクォンはシディアたちに礼をいう。

「シディア、クレア、シャンティ、皆のおかげで貨幣ができた。 ありがとう」

『当然のことをしたまでよ』

「どういたしまして」

「礼には及ばないわ」

シディアたちはスティクォンにそれぞれ返礼した。

落ち着いたところで貨幣の山を見てスティクォンは考える。

「それで皆への配布金はいくらぐらいが妥当かな? 僕としては一人当たり金貨3枚くらいがいいかなと考えているんだけど」

「金貨3枚ですか? 魔族の国では金貨1枚で1年は暮らせますので金貨3枚だと3年というところですかな?」

「人間族の国もだいたい同じようなものです。 それくらいあればある程度はまともに暮らせます。 その金を慎重に使うか湯水のように使うかは個人の自由ですが」

「そうですな」

「シディアはどう思う?」

スティクォンは財務大臣であるシディアの意見も聞いてみることにした。

『我か? 我は金銀宝石を集めることはあれど、使うことなどほとんどなかったからな。 スティクォンやウィルアムの感覚に任せる』

ドラゴンであるシディアは金目の物を集める趣味はあれど、それを使うということは滅多にないらしい。

(元々クレアの存在を隠すためにシディアを財務大臣にしたから仕方ないか・・・)

当てが外れたスティクォンは自分で考えることにした。

「うーん・・・それじゃ、僕たちで勝手に決めてしまうけど、皆には金貨3枚を配布するということでいいかな?」

「それがよろしいかと」

『構わぬぞ』

「スティクォンさんにお任せします」

「私もクレアと同じ意見よ」

ウィルアムは真面目に、シディア、クレア、シャンティはスティクォンに全部丸投げである。

「反対意見は特にないから皆への配布金は一人金貨3枚とします」

「畏まりました」

スティクォンが決断するとウィルアムは恭しく一礼した。


貨幣の作成と配布金が決まったスティクォンたち。

一旦地上に戻ってアーネルのところに向かった。

「アーネル、いるか?」

「スティクォン、どうしたの?」

「実はアーネルに頼みたいことがあるんだけど、このくらいの大きさの袋を作ってほしいんだ」

スティクォンは手で袋の大きさをアーネルに伝える。

アーネルは【織編神】を発動してスティクォンが示した大きさの袋を一つ作った。

「こんな感じかしら?」

「えっと・・・うん、注文通りだ。 できれば、それをあと4000個ほど作ってほしい」

「わかったわ。 すぐに用意するわ」

アーネルに大量の袋を作ってもらうよう頼んだスティクォン。

その間に大きな袋をいくつか持って貨幣のあるところまで戻った。

スティクォンたちは手分けして貨幣を袋に入れていく。

何かあった時のために2割ほどを残し、あとは全部地上の城へと持って行った。


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