150.城が完成した
建国してからスティクォンは忙しい日々を送っている。
国王として責務を全うするためにウィルアムと国政を話し合ったり、友好国の使節団を迎え入れる準備として城や大使館などの建造物に携わったり、つい最近は朝昼はここに住む者たちに勉強を教え、夕方夜はアルラウネたちを連れてくる手伝いをしていた。
そして、建設が始まってから1ヵ月が経過した。
スティクォンは今日も学校で勉強を教えている。
時間になり生徒たちに終わりを告げたスティクォンは教員室に戻った。
そこには同じく授業を終えたメルーアたちが寛いでいる。
「うーん! 終わった!」
「スティクォン、お疲れですわ」
「メルーアもお疲れ。 授業のほうはどんな感じかな?」
「文字の読み書きと数字の計算だけなのでほとんど問題はないですわ」
「メルーアお嬢様の言う通りでございます。 今のところ特にトラブルになるような事はありませんな」
「それならよかった」
ガラガラガラ・・・
スティクォンたちが談笑していると突然教員室の扉が開いた。
「スティクォンさーん!!」
声がしたほうを見るとファリーとクレアが立っていた。
「ファリー、クレア、どうしたんだ?」
「お城が完成しました!!」
「私たちやりましたよ!!」
城が完成したことを嬉々として報告するファリーとクレア。
「本当か!」
「ついに完成しましたのね!」
「それで早速ですけど見てもらえませんか?」
「きっと気に入るはずです!!」
早くスティクォンに見てほしいのか、ファリーとクレアは心弾む気持ちを抑えられないようだ。
「是非拝見させてもらうよ」
「スティクォン、わたくしも行きますわ」
「私もお供させていただきます」
「それでは行きましょう!!」
ファリーとクレアに連れられてスティクォンたちはお城へと向かう。
学校から北に進むこと15分、堀に囲まれた城の上部がすでに見えている。
架けられた跳ね橋を進み、城門を通り抜けるとそこには立派な城が聳え立っていた。
「これはすごいな」
「立派なお城ですわ」
「ほっほっほ、予想以上ですな」
スティクォンたちが城の外観を眺めているとシャンティ、ティクレ、アールミスがやってきた。
「スティクォン、見に来たのね」
「やっと完成したよ」
「私たちにかかればどうってことないぜ」
見るとシャンティ、ティクレ、アールミスは達成感を得たのかとても満足した顔をしている。
「シャンティ、ティクレさん、アールミスさん、お疲れ様」
「ありがとう。 立ち話もなんだし城の中を案内するわ」
「スティクォンさん、行きましょう!!」
「早く早く!!」
ファリーとクレアに背中を押されながらスティクォンは城の中に入っていく。
それに続くようにメルーアたちも続いた。
エントランスに到着すると石造りの外見とは異なり内装は豪華だった。
一階二階が吹き抜けになっており、中央には左右に分かれた宮殿階段、階段を素通りして奥に扉が一つ、階段横に巨大なハルバードを持った全身甲冑がそれぞれ一体ずつ配置されている。
天井や柱は大理石でできており、床は正方形に整えられた白い石と黒い石をチェッカー柄のように並べられ、壁は木材ながらも一枚一枚に動物や植物などが細部まで彫られていた。
「はあぁ・・・」
「すごいですわぁ・・・」
「想像の遥か上の出来栄えですな」
「こんな立派な建物は見たことがないわぁ・・・」
あまりの豪華さに貴族としての教養があるスティクォン、メルーア、リクルは見惚れていた。
「魔王様の城よりも上ですわね」
「フーリシュ王国の城なんて目じゃないわ」
「この壁に描かれている鳥なんて今にも絵から飛び出していきそうだな」
「躍動感を感じますな」
「ああ、その壁ね。 一枚一枚私が彫ったわ」
シャンティはさりげなく自分がやったと伝える。
「これ普通にお金が取れるレベルですわ」
「ええ、下手に触れて壊したら洒落にならないわね」
メルーアとリクルは貴族としての感想を述べる。
「別に壊しても大丈夫よ。 これくらい簡単に彫れるから」
「「そ、そんなことしません!!」」
シャンティが軽く冗談をいうもメルーアとリクルは両手を左右に振る。
「こんなところで驚いていたら大変よ。 これから見せたいところがいくつもあるのだから」
「いや、この時点でもうお腹いっぱいなんだけど・・・」
「遠慮しなくてもいいわよ」
それからファリーたちの案内は続く。
一階は食堂、調理場、書斎や会議室などの多数の部屋、物置、洗濯室、大浴場、トイレ、それと中庭があり、中央には噴水が設置されていた。
また、階段のほかにエレベーターも設置されており、一階から三階まで行き来できる。
地下一階には貯蔵庫やワインセラー、宝物庫、物置、牢屋、それに以前話していた隠し通路も作られている。
外庭には訓練場や宿舎、馬車止めも作られていた。
階段を上って二階は謁見の間やパーティー会場などに使われる大部屋がいくつか作られている。
また、内庭に近い通路は全面透明なガラス張りになっており、そこから中庭を眺められるようになっていた。
二階までの説明が終わり、いよいよ三階にやってくる。
「三階は寝室や客室になっているわ」
客室はベッドがシングル、ダブル、キングとまちまちだが、調度品、テーブル、椅子、クローゼットなどは同じ物が置かれており、部屋の作りはどの部屋もそれほど変わらない。
そして、ついに最後の部屋の前までやってきた。
「ここがスティクォンの寝室よ」
シャンティが扉を開ける。
「「「「「おおー!!」」」」」
スティクォンたちは驚きの声をあげてしまった。
中は広い部屋になっており、天井や壁は飾り彫りが施されている。
調度品も大理石でできたテーブルと椅子が四脚、クローゼット、極めつけは中央にある天蓋付きキングサイズのベッドが一つどどんと置かれていた。
ベランダに出ると丸テーブルと椅子が二脚置かれており、そこから眼下にある中庭を一望できる。
「どうかしら?」
「これ以上ないほど完璧だよ」
「ええ、こんな建造物は見たことありませんわ」
「非の打ちどころがありませんな」
「頑張った甲斐がありました」
スティクォンたちからの高評価を受けてファリーたちはとても満足する。
こうしてマルチブルグに立派な城が完成した。




