表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/148

15.欲に目が眩む者

フォレスト・ベアの肉を食べて満足したリルたち。

ついでにスティクォンたちも久しぶりの食事を堪能する。

『うむ、焼いた肉も美味いな』

さすがに全部は食べられなかったのか余った肉や骨はシディアの胃に収まった。

満たされたところでスティクォンは【現状維持】を発動してリルたちを自分たちと同じ状態にする。

「これでリルたちも僕たちと同じにしたから大丈夫なはずだ」

「? 私たちに何かしたんですか?」

スティクォンの言葉に不審な目で見るリルたち。

「あ、ごめん、説明していなかったね。 これから行くところは砂漠で開拓した土地以外何もないところなんだよ」

「砂漠?」

「あぁ・・・行ってみればわかるかな? そこには当然食料もないから時間が経てばお腹も空く。 そこで僕の【現状維持】で君たちの体力や満腹状態を維持したんだ」

「そうなんですか?」

「お腹が減らないの?」

「なんか実感が湧かない」

リルたちは要領を得ていないようだ。

「あ、ついでにシディアも僕たちと同じように維持したから」

『なに? それでは我も今の腹の状態を維持されているのか?』

「はい」

『満腹ではないがこの状態を維持できるのか・・・改めて聞くとすごいな』

シディアはスティクォンの【現状維持】に感心する。

『うむ、それではそろそろ戻るとするか』

「そうですね」

『皆、我の背中に乗れ。 リル、ファリー、クレアも遠慮するな。 それと我のことは気軽にシディアと呼ぶがよい』

「「「は、はい」」」

スティクォンたちはシディアの広い背中に乗る。

『それでは行くぞ』

シディアは翼を羽搏かせると空中に浮かび西にある死の砂漠へと飛んで行く。

1日が経ち、死の砂漠のスティクォンたちが開拓した場所へと戻ってきた。

そこは見渡す限り何もない土地だ。

唯一あるのはメルーアが【木魔法】で育てた巨木と一キロ毎に植えた木だけ。

何もないことに驚くリルたち。

「「「・・・」」」

「3人とも大丈夫か?」

「「「は、はい」」」

スティクォンはリルたちの満腹度も心配した。

「お腹の調子はどう?」

「あ!」

「そういえば全然お腹が空いてない」

「いつもならぐうぐうお腹が鳴っているのに」

スティクォンに指摘されてようやくお腹が空いていないことに気付いた。

「もしかしてこれがスティクォンさんの【現状維持】ですか?」

「そうだよ。 僕が維持したいと願えばその状態を維持し続けることができるんだ。 また任意で解除もできる」

「すごいんですね!」

「もうあの空腹の時間に戻らなくてもいいんだ」

「スティクォンさんがいれば餓死しない」

リルたちは自分たちが空腹に苛まれる心配がなくなり安堵する。

スティクォンはリルたちの救世主となった。

「リルたちはどんなスキルが使えるんだ?」

「スキル? なんですかそれ?」

「え?」

リルたちはスキルを知らないようだ。

「スキルというのは神が生まれた子供に授けたモノだよ。 僕のスキルは先ほど君たちが褒めてくれた【現状維持】だ」

「それじゃ、私たちにもそのスキルというのがあるんですか?」

「あるにはあるがどうやって調べよう・・・」

スティクォンが困っているとウィルアムが話しかけてきた。

「僭越ながら私が調べてみましょう」

「ウィルアムさん、そんなことができるの?」

「はい。 12歳以上を迎えていれば【鑑定】で調べることができます。 それでは失礼します」

ウィルアムの目が光るとリルたちは驚いた。

「め、目が光ってる?!」

「ぁぅ・・・」

「怖いよぉ・・・」

「怖がらなくても大丈夫ですわ。 あれは爺のスキルで【鑑定】ですわ」

しばらくするとウィルアムの目が元に戻る。

「・・・判明しました。 御三方ともレアなスキルをお持ちです。 リル様は【農業神】、ファリー様は【製造神】、クレア様は【鉱石創造】をそれぞれお持ちです」

リルはあらゆる農業に関することに神懸かるスキル。

ファリーは有から優れた物を作り出すスキル。

クレアは金銀銅といった鉱石を始め、ダイアモンド(金剛石)などの宝石を無から生み出すスキル。

ウィルアムの説明を聞いてシディアが目を輝かせた。

『クレアよ、お前のスキルで宝石を生み出してはくれないか?』

「え、えっと、シ、シディアさん、ほ、宝石ってなんですか?」

『何? クレアよ、宝石を見たことがないのか? 待っておれ、すぐに持ってくるからな』

それだけ言うとシディアは翼を羽搏かせて、その場からすごい勢いで飛んで行った。

スティクォンたちに気を使って飛んでいた速度の比ではない。

「いやはやドラゴンは金や宝石に目がないと聞きましたが、まさかここまで喰い付くとは・・・」

「あの・・・ウィルアムさん、私のスキルってすごいんですか?」

「すごいといえばすごいのですが、作れたとしてもせいぜい小指の爪にも満たないほどの大きさです」

それを聞いてスティクォンとメルーアもそんなものだろうと笑っていた。

しかし、次のウィルアムの言葉にスティクォンとメルーアは凍りつく。

「ですがそれは作るのに膨大な魔力が必要だからです。 シディア様の考えではスティクォン様の【現状維持】と併用することで莫大な量を生み出そうとしております」

「えっと・・・それって・・・」

「はい、世に出した場合は世界がひっくり返ります」

スティクォンとメルーアはあまりのことに開いた口が塞がらない。

そうこうしているうちにシディアがとんでもない速さで戻ってきた。

シディアは掴んでいた大きな袋を地面に置く。

『待たせたな! これが宝石だ!!』

中を開けるとダイアモンドを始めとした宝石がずらりと入っている。

「うわあああああぁ」

「綺麗」

メルーア、リル、ファリー、クレアが宝石を見て目を輝かせていた。

『まずはこのダイアモンドと同じ物を作ってみてくれ』

「こ、これですか?」

クレアはダイアモンドを色々な角度から見て、今度は質問する。

「あの・・・どうすればそのスキルを発動できるのですか?」

「先ほどの私みたいに自分の中で意識すれば発動します。 クレア様の場合はこのダイアモンドを頭の中でイメージして発動すれば同じ物ができるはずです」

「わ、わかりました。 やってみます」

クレアはダイアモンドを頭の中でイメージすると【鉱石創造】を発動させた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
[一言] 「そうだよ。僕が維持したいと願えばその状態を維持し続けることができるんだ。また任意で解除もできる」 ということであれば、家族や王様はどういう設定になるのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ