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149.集結するアルラウネたち

先ほどまでいた教室から一変、見たことがある集落にスティクォンは移動していた。

「ここって!」

スティクォンは驚いたが、すぐに周りを見渡す。

そこにはビューウィとベリモの分身体、それと獣の国にある集落で見たアルラウネがいた。

「あら、本当にスティクォンが現れたわ」

「やりました!」

スティクォンは自分の身体を見る。

特に異変はないようだ。

「どうやら無事に転送できたみたいだな」

何事もなかったことにホッとするスティクォン。

「それでそこにいるアルラウネをマルチブルグに連れて行くということだけど、ベリモのスキル(【送受神】)があれば僕はいらないんじゃないかな?」

「万が一何かあったらどうするつもり?」

「そうですよ! 何かあってからじゃ遅いんですからね!!」

ベリモは自分が死にかけたことがあるのかビューウィの意見に激しく同意する。

「わ、わかった、わかったから・・・」

根負けしたスティクォンは【現状維持】を発動してアルラウネの生命力や魔力などの状態を維持した。

「今【現状維持】を発動してそこにいるアルラウネを僕たちと同じにしたから」

「同じ?」

アルラウネはスティクォンの言葉を聞いて不審に思うがすぐにビューウィがフォローする。

「大丈夫よ。 スティクォンのスキル(【現状維持】)で死ななくなっただけだから」

「そうなんですか?」

「そうなんです」

「そこまでいうなら信じます」

ビューウィが押し切ったことでアルラウネも信じることにした。

「それであとはマルチブルグに帰るだけ・・・」

そこでスティクォンはあることに気づく。

「ビューウィ、ベリモ、一つ聞きたいんだけど、分身体もスキルを使えるよね?」

「何いってるの? 当り前じゃない」

ビューウィは呆れながらもスキル(【花神】)を発動する。

するとビューウィの周りの地面から次々と芽が出て花が咲いていく。

「この通りよ」

「ちゃんとスキルが使えるなら問題ないな」

分身体でもちゃんとスキルが発動したのを見てスティクォンは安心する。

「ベリモ、スティクォンと同族(アルラウネ)を本体のほうへ送ってあげなさい。 送り終わったら分身体を解除して戻るわよ」

「はい! わかりました!」

ベリモはスティクォンとアルラウネに触れる。

「それでは本体のほうへ転送します! 【送受神】!!」

ベリモが【送受神】を発動すると集落から一瞬にしてマルチブルグにある学校の教室に移動した。

目の前にはウィルアム、ビューウィ、ベリモが、隣には集落でスカウトしてきたアルラウネがいる。

「スティクォン様、お帰りなさいませ」

「ウィルアムさん、ただいま」

「こ、ここ、どこですか?!」

スティクォンが普通に対応している中、隣にいたアルラウネは驚いた声を上げる。

「さっき話したじゃない。 ここは私が住んでいるマルチブルグという国よ。 といっても、混乱するのは仕方ないわね」

「そうなんだ・・・」

アルラウネの反応から見て、ビューウィの話を半信半疑で聞いていたのだろう。

「もう一度言うけど、まず最初に私たちアルラウネは世界に散らばって生きる同族をここ(マルチブルグ)に集結するのが第一の目標よ。 拒む者は輪を乱すだけだから無理にスカウトしなくていいわ」

「わ、わかったわ」

ビューウィは真剣な表情で話を続ける。

「それで今後の方針だけど、ベリモ以外のアルラウネは外に分身体を送って同族(アルラウネ)を探す。 見つけたらスカウトして了承したら、ベリモがそこに分身体とスティクォンを送ってもらう。 あとは先ほどのように【送受神】でここ(マルチブルグ)に送るのでどうかしら?」

「それでいいと思うよ」

「ほっほっほ、私も異論はございません」

ビューウィの案にスティクォンとウィルアムが同意する。

「だけど分身体を作成して遠方に送るとなると魔力が続かないわ」

「それは大丈夫よ。 スティクォンのスキル(【現状維持】)で魔力は枯渇しないはずよ。 試してみたら?」

「そうさせてもらうわ」

アルラウネは分身体を作るとどこかに送った。

「! これは!」

「どうかしら?」

「ええ、体内の魔力量がまったく減っていないわ」

「それがスティクォンのスキル(【現状維持】)よ」

魔力残量を気にすることなく使えることにアルラウネは驚くしかなかった。

話が終わったところでスティクォンがビューウィに話しかける。

「ビューウィがスカウトしたアルラウネも無事ここ(マルチブルグ)に連れてきたし、今日はもう終わりかな」

「特になければそうなるわね」

スティクォンが周りを見ると先ほど一緒に来たアルラウネが手を上げる。

「あの、知っているアルラウネがいるんですけど、今から説得しに行ってきますのでしばらく待ってもらえませんか?」

「別にいいけど」

「ありがとうございます」

それからアルラウネは沈黙した。


10分後───

それまで静かにしていたアルラウネが沈黙を破った。

「お待たせしました。 今話をしたら彼女もここ(マルチブルグ)に来たいといっていました」

「それなら迎えに行けばいいわね」

「え゛? 今から?」

「そうよ。 その同族(アルラウネ)の気が変わらないうちに向こうに行って丸め込むのよ」

「場所はどこですか?」

「あちらです」

アルラウネが指さした方をベリモはジッと見る。

しばらく意識を集中してアルラウネの分身体の位置を探っていると場所を特定した。

「・・・! 見つけました!」

するとベリモの分身体がその場から消えた。

「それではスティクォン、分身体のほうに送りますね」

ベリモがスティクォンの身体に触れる。

「【送受神】!!」

そして、スティクォンはベリモの分身体がいる場所へと送られた。


それから数日が経過した。

マルチブルグには多くのアルラウネがいた。

彼女たちは自分の友人や知り合いに声をかけてマルチブルグに来ないかと誘い、了承して連れてきた者たちだ。

マルチブルグの快適さに心奪われたのか、ほかの友人や知り合いにも知ってもらおうと声掛けをしていく。

その結果、今では100匹を超えるアルラウネが移住してきた。

「結構集まったわね」

「ビューウィ、世界にいるアルラウネはこれで全部なのか?」

「わからないけどまだまだいると思うわよ」

「今のところは勧誘して断られたのは一回もありませんね」

ビューウィたちの説得が上手いのか断るアルラウネは1匹もいないようだ。

「これからもっと集まるわよ」

ビューウィの予言通りアルラウネは更に増えていった。


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