表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/156

148.転送

スティクォンは今日も学校で文字の読み書きと数字の計算を教えていた。

生徒たちは皆真剣に学んでいる。

ふと、外を見ると太陽は西に傾き空は赤みを帯び始めていた。

「みんな、今日はここまで。 今教えたことを家に帰ってちゃんと復習するように」

「「「「「はい!!」」」」」

授業を終えた生徒たちは教室から出て行った。

「うーん、終わった」

スティクォンが伸びをしているとウィルアムがやってきた。

「スティクォン様、少々よろしいでしょうか?」

「ウィルアムさん、どうしました?」

「実はお耳に入れておきたいことがあります」

ウィルアムがいつにもまして真剣な表情だったので、スティクォンもちゃんと向き合う。

「それで話は何ですか?」

「ビューウィ様が諜報活動する組織を立ち上げました」

「え゛?」

ウィルアムの言葉にスティクォンは固まった。

一瞬思考が停止したが、すぐに現実に戻ってウィルアムに問いかける。

「えっと・・・ビューウィが?」

「はい。 組織といっても今は同族(アルラウネ)のベリモ様とお二人だけですが、ゆくゆくは全世界のアルラウネをここ(マルチブルグ)に集めて活動する予定でございます」

その報告を聞いてスティクォンは額に手を当てる。

(冗談で考えていたことが現実になりそうだな・・・)

ビューウィは親しくなった者にはからかって面白がる部分があるが、根は皆に気遣いができるアルラウネだ。

今回考えた諜報活動(裏の組織)もマルチブルグを守るために必要と判断してのことだろう。

「・・・ウィルアムさん、なぜそれを僕に報告を?」

「スティクォン様はこの国(マルチブルグ)の王でございます。 この事(裏の組織)は知っておいたほうがよろしいでしょう。 ビューウィ様も私と同じ意見でございます」

「たしかに」

それを聞いてスティクォンは納得する。

「ビューウィ様とベリモ様は現在多種族の文字習得と私が提供した魔族の資料を覚えながら外にいるアルラウネを探しております」

「勉強をしながら同族探しって、ビューウィはすごいな」

「あら、そんなことはないわよ」

スティクォンが感心しているとうしろから声をかけられる。

振り向くとそこにはビューウィとベリモがいた。

「ビューウィ?! ベリモ?! いつからそこに?」

「普通にいたわよ。 失礼しちゃうわね」

「おどかせてすみません」

ビューウィが呆れた顔で、ベリモは申し訳ない顔でスティクォンを見た。

「ご、ごめん」

「別に気にしていないわ。 それよりもスティクォンに話があるの」

ビューウィは改まってスティクォンに向き直る。

「僕に?」

「そ、以前獣人族をスカウトしに行った時のことを覚えているかしら?」

スティクォンは南にある獣の国に行った時のことを思い出す。

「ああ、覚えているけど」

「そこで会ったアルラウネ(同族)を勧誘したからここ(マルチブルグ)に連れてきてほしいの」

「今からか?」

「そうよ」

ビューウィの無茶ぶりにスティクォンは苦笑いをする。

「シディアに頼んでも往復で二日かかるけど・・・」

「スティクォンのスキル(【現状維持】)とシディアの超スピードなら1日もあれば問題ないでしょ?」

シディアの超スピードを何度も経験したスティクォンではあるが、できれば安全に移動したいと考えている。

「できれば普通に移動したいんだけど・・・」

「スティクォンなら大丈夫よ」

「ビューウィは一緒に行かないのか?」

「私? 私はもう分身体を現地に送っているわ」

すでに動いていたビューウィ。

スティクォンはそこで一つ疑問が浮かんだのでビューウィに尋ねる。

「一つ聞きたいんだけど、ビューウィの分身体でそのアルラウネの本体をここに持ってくることはできないのか?」

「残念だけど私には生き物を持ってくることはできないわ。 もしかすると同族(アルラウネ)の中にはそういうスキルを持った者がいるかもしれないけどね」

ビューウィとしてもそんな能力があればスティクォンに頼らず自分でアルラウネ(同族)たちをここ(マルチブルグ)に呼んでいただろう。

スティクォンは一つ溜息を吐いたあと、ベリモに尋ねる。

「ベリモもビューウィと同じスキルなのか?」

「スキルってなんですか?」

スティクォンの質問に戸惑うベリモ。

「これは出会った時のビューウィと同じ反応だな」

「それならば僭越ながら私が調べましょう」

ウィルアムの目が光りベリモを【鑑定】する。

しばらくするとウィルアムはすごく驚いて、それから目が元に戻った。

「・・・判明しました。 ベリモ様はレアなスキルをお持ちです。 ベリモ様のスキルは【送受神】でございます」

「【送受神】?」

「どんなスキルかしら?」

「ベリモ様が手で触れているモノを任意の場所に送ることができるスキルでございます」

物質の転送と聞いて驚くスティクォン。

しかし、ウィルアムの説明では肝心な部分が不明である。

「それって生き物も送れるの?」

「モノの指定はされていないので予想では送ることができると解釈します」

「実際に試してみればわかるわ。 ベリモ、スキル(【送受神】)を使って私をこの部屋の隅に送ってみなさい」

ビューウィは部屋の隅を指しながらベリモにスキルを使うように促す。

しかし、スキルの詳細を聞いてもいまいちピンとこないベリモは困惑する。

「あの・・・スキルってどう使うんですか?」

「最初だから言葉にして使ってみるといいよ。 慣れれば意識するだけで使えるようになるから」

スティクォンのアドバイスを受けて、ベリモはその通りにやってみることにした。

「や、やってみます」

ベリモは分身体を部屋の隅に移動する。

「【送受神】」

ベリモはビューウィに触れて【送受神】を発動する。

するとビューウィの姿が消えて分身体のいる場所に現れた。

「あら、本当に移動したわ」

「これはすごいじゃないか!」

「はい。 ベリモ様の分身体を利用すればモノの転送が自由にできると愚考いたします」

スティクォンたちはベリモのスキル(【送受神】)に驚愕するばかりだ。

「これがスキル・・・あの、もう一度やってみてもいいですか?」

「それならここからはるか南に私の分身体がいるからそこにスティクォンを送ってもらえるかしら?」

「わかりました!」

ベリモは意識を集中してビューウィの分身体の位置を探り、そして、特定した。

「見つけました! 先に分身体を送って・・・うん! 準備ができたのでいきます! 【送受神】!!」

ベリモはスティクォンに触れると【送受神】を発動した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ