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143/158

143.設計

ビューウィと同族であるベリモも新しくここに住むことになった。

「スティクォンにお願いがあるんだけどベリモの魔力を私と同じように維持してほしいの。 そうしておけば分身体を長時間維持できるだけでなく、分身体の遠距離転送も可能になるから」

「ここに助けを求めてきた時みたいに無理はさせたくないということだね? わかった」

スティクォンは【現状維持】を発動してベリモの現在の魔力を維持した。

「ベリモの魔力を維持したから」

「ありがとう。 ベリモ、これで無理なく力を使うことができるわ」

「そうなんですか? 試してみます」

ベリモはその場で意識を集中する。

「本当です。 試しに私が住んでいた北西の森に分身体を送ったのですが、普段なら魔力をごっそり持っていかれるのに今は減る気配が全くありません」

疲労もなく、能力の使い放題に喜ぶベリモ。

「アルラウネの分身体の遠距離転送って本当に便利だね」

「本来なら効率が悪くて多用なんてとてもできないわ。 スティクォンがいて初めて成り立つのよ」

そうこうしているうちにベリモが分身体を解いて脱力する。

「ふぅ、これなら安全な場所から色々見て回れます」

「そのうち、ほかの地域にいるアルラウネ(同族)たちもここに呼ぶのもありかもしれないわね」

「それ、いいですね」

ビューウィとベリモは同族であるアルラウネたちをここに集結させる話で盛り上がっていた。

(もし、世界中のアルラウネがここに来たら外に行かなくても情報が手に入ったりして・・・って、それはないか)

スティクォンはその状況を頭に浮かべるも、すぐに否定した。

が、のちにビューウィとベリモが世界中のアルラウネたちと接触して、マルチブルグに連れてくることになる。

そして、ビューウィたちアルラウネによりマルチブルグは情報大国として世界から恐れられることになるとは、この時のスティクォンはまだ知らなかった。

「それじゃ、僕たちは用があるからこれで」

「スティクォン、ありがとう」

「ありがとうございます」

その場を離れるとスティクォンはファリーを連れてシャンティの家へと向けて再び歩き出した。

それから程なくして到着すると家の中にはシャンティのほかにティクレがいた。

2人は机の上にある設計図を見ている。

「あら、スティクォン。 いらっしゃい」

「はぁ・・・」

普段通りのシャンティに対して、ティクレが難しい顔をしている。

「ティクレさん、どうしたんだ?」

「スティクォンさん、これ見てよ・・・」

ティクレが机の上に置かれている城の設計図のある場所を指さす。

「ん? 昇降機? なにこれ?」

「シャンティさんが階段を歩かなくても上下に垂直移動できるようにできないかと聞かれたからそれっぽいのをそこに作る予定なんだけどね」

疑問に感じたスティクォンがシャンティに問いかける。

「これは階段を歩かなくても上下に垂直移動できる仕組みを取り入れたの。 ほら、この前の城(魔王城)の階段を上り下りした時、私とアーネルが苦労したから」

「ああ、そういえば・・・」

この前の晩餐会で案内された部屋が2階だったのだが、アラクネ(アーネル)アナンシ(シャンティ)の体格では上り下りが難しかったことを思い出す。

「なるほど。 ティクレさん、これってできるの?」

「理論上はできるとは思うんだけど作ったことがないからね」

ティクレとしてもどう作ろうかで頭を悩ませているようだ。

「まずは簡単な模型を作ってできるかできないかを判断するよ」

「ティクレさん、できあがったら見せてください」

「私も見たいです」

「そうね。 どんなものか見てみたいわ」

「できたら見せますよ」

ティクレは模型ができたら見せることをスティクォンたちに約束する。

「昇降機についてはこれくらいにして、スティクォンにも城の設計図を見て意見も聞きたいわ」

「うーん、そうだな・・・いざという時のための脱出する道、隠し通路が欲しいかも」

「隠し通路?」

聞きなれない言葉にファリーが聞き返す。

「ああ、城が落とされた時に外からは見つからないように逃げるための通路のことだよ。 僕の母国の城には王族が地下の隠し扉を通って逃げるための通路があると聞いたことがある」

「そんなのもあるんですね」

「だけど、ここだとそれって意味がないような気がするよね」

「たしかにそうかも」

ティクレの言う通りだとスティクォンも納得する。

しかし、シャンティはそうは受け取らなかった。

「面白そうじゃない。 その隠し通路を追加するわ」

言うが早いか新しい紙を取り出すと城の設計図を一から描き始めた。

5分後、シャンティは城の設計図を描き終える。

「これでどうかしら?」

「ファリー、この設計図で問題はないか?」

「えっと・・・はい! これなら問題なくできそうです」

そこでシャンティが注意点をあげる。

「今回はただ建てるのではなく、建物自体の様式美も兼ね備えなければならないわ」

「いや、そこまでしなくても・・・」

「甘いわね、スティクォン。 あの城(魔王城)を見て何も感じなかったの?」

シャンティの指摘にスティクォンはフーリシュ王国の王都にある城やキーラの魔王城を思い浮かべた。

どちらも頑強で装飾が素晴らしく印象に残る作りとなっている。

「来訪者たちにいかに美しさと技術力を見せつけるかが必要になってくるわ」

「そうですよ! あのくらい立派な建物()を建てられるように私も頑張りますから!」

シャンティの言葉にファリーが同意する。

「たしかにほかにはないモノ(技術)を見せて度肝を抜かせたいよね」

ファリーに感化されたのか、ティクレもやる気を見せる。

「はぁ・・・わかった。 素晴らしい建物を期待しているよ」

それからファリー、シャンティ、ティクレ、それにドワーフ族たちによる建設ラッシュが始まった。


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