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14.人材をスカウトしよう1

スティクォンたちはシディアの背中に乗り一路東へと向かっていた。

振り落とさないように適度な速度で飛行し、風に煽られないように防護壁まで展開している。

スティクォンたちのことをちゃんと気にかけてくれていた。

地表を見ると死の砂漠を越えて荒野や草原、森などが見えている。

スティクォンたちが苦労して10日かけて歩いた砂漠を、シディアはたったの8時間弱で越えたのだ。

尚も東に向かうと立派な建物が見えてきた。

「あ・・・」

メルーアが一瞬言葉を発するがそれ以上言わなかった。

多分だがあれがウィンアーク伯爵の館なのだろう。

シディアはウィンアーク伯爵領を通り過ぎてさらに東へと飛んでいく。

死の砂漠を飛び立ってから1日が経った頃、ようやく目的地に着いた。

眼下を見下ろすとそこには高い山に囲まれた中に畑が広がっている。

直接降りると警戒されるのでシディアは離れた森へと降り立った。

スティクォンたちもシディアの背中から降りる。

『さて、我はここで待つ。 あとはスティクォンたちに・・・ん?』

シディアは何気なくスティクォンたちの後ろを見る。

するとそこには3人の少女が怖がってシディアを見ていた。

『そこな少女たち、我に何用か?』

「ひぃ・・・」

「しゃ、喋った・・・」

「こ、怖いよぉ・・・」

少女たちはお互いに抱き合って震えている。

「シディア様、ここは私たちに任せてもらえませんか?」

『え、あ、うむ・・・』

スティクォンたちが少女たちのほうへと歩いていき、代表してウィルアムが話しかける。

「驚かせてしまい申し訳ございません。 私たちはホビットが住む場所を探してこちらに来たのですが・・・」

すると2人の少女がもう1人の少女の前に立って震えながらも声を出す。

「リ、リルちゃんに手を出すな!」

「リルちゃんを取らないで!」

リルと呼ばれた少女はすっかり怯えていた。

「いえ、あなた様たちのお友達を連れて行こうというわけではありません。 実は今私たちが開発している土地に農業をしてもらえるホビットの方を探しにこちらに来たのです」

「そ、そうなの? よかったぁ・・・」

ウィルアムはすぐに訂正すると少女たちは安堵する。

「それでほかのホビットの方たちはどこにお住まいで?」

「あの・・・すみません。 わからないんです」

「わからない?」

スティクォンたちはリルを見る。

「種族は違うけど私たち3人とも捨てられたんです」

「今はこの危険な森でみんなの力を合わせて住んでいます」

「なので同族がどこにいるかがわからないのです」

その説明にスティクォンたちは納得する。

この娘たちは口減らしに捨てられたのだ。

あまりにも多くの子ができると食べるのに困ってしまう。

貧しい家なら捨てられることが多いと耳にしたことがある。

「そうですか、ありがとうございます。 それでは私たちはこれで・・・」

「ま、待ってください」

リルが声をかけてくる。

「お、お願いがあります。 あ、あなたたちが住んでいる場所に私たち3人を連れて行ってください」

「リルちゃん?!」

「リルちゃん、危険だよ!」

リルは2人の制止を振り切って話を進める。

「ファリーちゃん、クレアちゃん、このままだと私たちいずれこの森に住んでいる狼や熊に殺されちゃうよ」

「そうだけど・・・」

「危ないよ・・・」

ファリーとクレアと呼ばれた少女たちが言い淀む。

よく見ると3人の身体はほっそりとしていた。

あまり栄養をとることができず、森の中とはいえここは食料を手に入れるのにも困難な場所なのだろう。

「なんとなくだけどこの人たちは悪い人じゃないと思うの。 だからファリーちゃん、クレアちゃん、私を信じて」

「・・・わかった」

「リルちゃんのことを信じるよ」

リルがウィルアムに頭を下げる。

「私たち3人を連れて行ってください! お願いします!!」

「こちらこそご助力感謝いたします」

ウィルアムもリルたちに感謝の意を示す。

「私は魔族で名前はウィルアムと申します。 こちらに御座す魔族のメルーアお嬢様の執事をしております。 そちらの人間族の男性がスティクォン様、それとあちらのドラゴンがシディア様です」

ウィルアムがスティクォンたちを紹介する。

「ホビットのリルです」

「ドワーフのファリーです」

「ノッカーのクレアです」

リル、ファリー、クレアもそれぞれ種族と名前を名乗る。

「リル様に、ファリー様に、クレア様ですね。 これからよろしくお願いいたします」

「「「はい」」」

見守っていたシディアが声をかける。

『目的も達成したことだしその者たちを連れて戻るとするか』

「シディア、待ってくれ。 できれば先にリルたちに何か栄養のある物を食べさせたい」

スティクォンの言葉にシディアが頷く。

『このままでは死んでしまいそうな身体をしているな。 よし、我が何か捕まえてこよう』

言うが早いかシディアは首を高く上げて周りを見る。

『丁度良いのがいた。 少し待っておれ』

シディアは獲物のいるほうへと歩き出す。

しばらくすると森の奥から獣の断末魔が聞こえてくる。

ままへはま(待たせたな)

シディアが戻ってくるとその両手と口にはこの森に棲むフォレスト・ベアが1頭ずつ計3頭を捕獲してきた。

手に持っている2頭をスティクォンたちの前に置き、口に銜えた1頭を処理もせずに噛み始める。

バリバリ骨を砕きながらシディアは味の感想を述べる。

『うむ、脂が乗っていて美味いな。 お前たちも遠慮せずに食べろ』

「えっと・・・1頭いれば十分だ。 もう1頭はシディアが食べるといいよ」

『そうか? なら遠慮なく』

シディアはもう1頭も口に入れて噛み砕く。

「調理は私が担当します」

ウィルアムはスティクォンからナイフを借りるとフォレスト・ベアを捌いていく。

その間にスティクォンたちは枯葉をかき集めて火を起こす。

捌き終えた肉をウィルアムはじっくりと中まで火が通るように焼いていく。

肉の香ばしい匂いにリルたちは涎を垂らしていた。

焼きあがった肉をリルたちに渡すと早速齧り付く。

「美味しい・・・美味しいよ」

「うん・・・うん・・・」

「生きてて良かったよ」

リルたちは涙を流しながら美味しそうに肉を食べていく。

3人は久しぶりにお腹が満たされるまで食べ続けた。


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