139.姉弟の仲直り
『スティクォン! あと素振り100回!!』
『スティクォン! どこに打ち込んでいるの!!』
『スティクォン! 反応が遅いわよ!!』
リクルから受けた地獄のような特訓を思い出すスティクォン。
(あれは酷かったなぁ・・・)
思い出した途端スティクォンは身震いする。
リクルが【剣聖】のスキルを授与されてからは朝早くから夜遅くまで剣の指導を受けていた。
来る日も来る日も扱かれて精神的に追い詰めれていくのを感じた。
もっとも国王がリクルのスキルを知ってすぐに国王直轄近衛騎士団に配属したのでスティクォンは助かったが。
(でも、姉上から剣技を学んだことは決して無駄ではなかった)
スティクォンはリクルから学んだ剣技があったからこそメルーアとウィルアムを助けることができた。
スキルの恩恵もあるが、それを抜きにしてもリクルから学んだ剣技は自身にちゃんと身についていたことを実感する。
「姉上、顔を上げてください」
リクルが素直に顔を上げる。
「姉上が教えてくれた剣技がなければメルーアやウィルアムさんを助けることはできなかった。 そして、僕はここにいなかったと断言できます」
メルーアとウィルアムを助けることができなければスティクォンは自分のスキルを理解することはなかった。
死の砂漠を歩くこともシディアやリルたちに出会うこともなかっただろう。
スティクォンはリクルの手を取り感謝を伝える。
「だから、僕に剣の指導をしてくれてありがとうございます」
「スティクォン・・・お礼をいうのは私のほうよ。 あの獣人族はスティクォンの仲間なのよね? 彼らがいなければ私は死んでいたわ」
「それならバーズさんやスポーグさんたち獣人族に直接礼をいってよ。 僕が指示するよりも早く助けに動いたんだから」
「そうなの? わかったわ」
リクルは素直に頷いた。
「さてと、シディアが戻ってくる前に僕もメルーアたちを手伝いますか」
「私も手伝うわ」
「でも、先ほどの戦いで疲れているのでしょう?」
「たしかに疲れているけど、スティクォンからの恩恵がなくなってからは自主練習して体力作りしていたんだから」
そういうとリクルは胸を軽く叩いてまだまだ体力があることを伝えた。
「あ、それなら」
スティクォンは【現状維持】を発動してリクルの現在の体力を維持した。
「姉上、僕のスキルで姉上の現在の体力を維持したから」
「え? 本当?」
リクルは早速近くで倒れている魔獣を持ち上げた。
「ん! これこれ! この無尽蔵な体力! 久しぶりだわ!」
リクルは重さ何十キロもある魔獣を持ち上げた状態を保ち続けている。
「それでこれをどこに運べばいいかしら?」
「それなら私のいるところにお願いするわ」
そう指示したのはスティクォンではなくビューウィだった。
「ビューウィ?」
「今ここにいるのは私の分身体よ。 本体はあちらにいるわ」
ビューウィは焼け焦げた森の方を指さす。
「あちらね? わかったわ」
するとリクルは魔獣を持ち上げた状態でビューウィの指さした方へと歩き出した。
「ちょっ?! 姉上! 待ってください!」
スティクォンは近場で倒れている魔獣の一匹を背負いながらリクルを追いかけていくのであった。
スティクォンたちが焼け焦げた森の一ヵ所に魔獣たちを集めていると大きな木箱を持ったファリーとドレラを連れてシディアが戻ってきた。
『待たせたな』
「シディア、ありがとう。 ドレラ、早速だけどここにいる魔獣たちの体内から血を抜いてもらえないか?」
「・・・(コクコク)」
シディアから降りたドレラは了承すると魔獣の傷口から体内にある血を吸い取った。
血を抜かれた魔獣は徐々に萎んでいき、吸いつくすと次の魔獣に取り掛かる。
「それじゃ、血抜きが終わったのから箱に入れていこう」
スティクォンたちは干からびた魔獣たちを次々と箱の中に入れていく。
数が多いのか箱の中はすぐに満杯になった。
『全部は入りきらないか。 一度向こうに持って帰るぞ』
しっかり蓋をするとファリーは箱を持ってシディアの背中に乗る。
問題ないことを確認するとシディアは宙に浮いてマルチブルグへと戻っていった。
「僕たちもまだ回収していない魔獣たちをここに持ってこよう」
それからスティクォンたちは手分けしてまだ未回収の魔獣たちを集めを続行した。
シディアがマルチブルグと森を6往復してようやく倒した魔獣を全部回収し終える。
あとはマルチブルグに帰るだけだ。
落ち着いたところでスティクォンはリクルに話しかけた。
「姉上はこれからどうされるのですか?」
リクルが悩んでから返答する。
「・・・魔族の国に行くわ。 そこで何ができるかわからないけどね」
「そうですか・・・」
そこでスティクォンはあることを閃いた。
「姉上、僕たちの国に来ませんか?」
「え?」
突然の誘いに驚くリクル。
「僕たちの国、多種族共生国『マルチブルク』っていうんですけど、ここから南東にある死の砂漠の中央にあるんです」
「死の砂漠ですってぇっ?!」
隣で聞いていたサレスが驚きのあまり大声で叫んでしまった。
「やっぱり驚くわよね」
「普通は疑うよ」
「私たちと同じ反応だな」
クーイたちエルフはうんうんと頷いた。
「それについては僕のスキルがあれば問題ないです。 それよりも姉上、サレスさん、よければ僕たちの国を手伝ってもらいたいのですが・・・」
スティクォンはダメもとでリクルとサレスにお願いしてみた。
「スティクォンがいる国を? 迷惑でなければ私はいいけど・・・」
「私も異存はないです」
リクルとサレスはスティクォンの提案に了承する。
「本当ですか! ありがとうございます!」
「それで私たちは何をすればいいのかしら?」
「今度学校を作る予定なんですけど、そこで教師をやってもらいたいのです」
教師といわれて戸惑うリクルとサレス。
「私が教えられるのは剣くらいなものよ」
「私も【風魔法】を少しくらいしかできません」
「そういうのも教えていく予定ですが、まずは人間族の文字の読み書きや計算を教えていく予定です」
「まぁ、そのくらいなら一応はね・・・」
リクルは苦笑いしながら応える。
「姉上、サレスさん、これからよろしくお願いします」
スティクォンはリクルとサレスを歓迎するのであった。




