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133.ロニー8 〔ロニー視点〕

俺が所属する第四魔法兵団は現在デジャス辺境伯領から西に逃走中である。

「固まるなっ! 散って逃げろっ!!」

女団長の指示で俺たちは散り散りになって西を目指して走る。

並みの兵団ならすでに全滅していてもおかしくない状況だが、あの女団長に鍛えられているだけのことはあり、第四魔法兵団の者たちはしぶとく生き残っていた。

「逃がすなっ! 追えっ!!」

うしろから馬に騎乗した帝国兵たちが襲ってくる。

だが、俺も【風魔法】を発動すると速度を上げて逃げに徹した。

その速度は馬の速度と引けを取らない。

「あっ! 新入りっ! てめぇっ!!」

「俺たちを置いて逃げるなっ!!」

ほかの団員たちが文句を言うも、彼ら彼女らは【火魔法】で火球を放って威嚇したり、【水魔法】で間欠泉のように地面から水を放出したり、【風魔法】で突風を放って動きを封じたり、【土魔法】で地面を泥濘にして足を取られたりと魔法を行使して敵の追手に対抗している。

その甲斐あってか第四魔法兵団は敵に包囲されることなく追ってから逃げ切ることに成功した。

「はぁ・・・助かった」

「酷い目にあったな」

「まったくだ」

団員たちが文句を垂れていると女団長が姿を現した。

「貴様ら! 気を緩めるな! 敵の包囲から抜けただけでいつここに攻め込んでくるかわからないのだぞ! 気を引き締めろ!!」

「「「「「サー! イエッサー!!」」」」」

点呼をとると誰一人として欠けることもなく合流に成功する。

落ち着いたところで女団長は現状を確認するように団員たちに説明した。

「帝国軍の砲撃により砦は崩壊。 あの状態ではデジャス辺境伯はおそらく生きてはいないだろう」

「団長、これからどうしますか?」

「ここから反撃に転じるといいたいところだが、彼我の戦力差は圧倒的だ。 悔しいがここは一旦王都に戻り、この事を陛下に報告する。 すぐに出発の準備をしろ」

「「「「「サー! イエッサー!!」」」」」

女団長の号令の下、俺たちはすぐその場を離れ王都フーズベルグに向けて出発した。


時間をかけて俺たちは何とか王都フーズベルグに戻ってきた。

途中通りかかった各領の貴族に女団長はデジャス辺境伯領で起きた事を伝える。

貴族たちは顔を蒼褪めさせるとすぐに警戒態勢を敷いたそうだ。

王都内に入ると女団長が団員たちに命令する。

「俺はこれから陛下に報告してくる。 お前たちはそれまで宿舎に戻って休んでいろ」

「「「「「サー! イエッサー!!」」」」」

これで一休みできると第四魔法兵団の宿舎へと戻る。

俺は宿舎で寛いでいるとしばらくして女団長が戻ってきた。

「新入り、いるか?」

「サ、サー!」

俺は慌てて返事をする。

「団長、どうされましたか?」

「休んでいるところ悪いが陛下がお前に直々に用があるそうだ。 今すぐ俺と一緒に来い」

「サー! イエッサー!!」

俺は疲れも取れないうちに女団長に随行して王城へと足を運んだ。

謁見の間に通されると国王と宰相が深刻な顔で待っていた。

俺と女団長は中央まで歩くと膝を突く。

「国王陛下、お呼びにより参上しました」

「突然呼び出してすまないな。 実はお前にやってもらいたいことがある」

国王の言葉に俺は嫌な予感がした。

「俺に?」

「そうだ。 今この状況下ではお前にしかできないことだ」

国王は一度区切ると本題をいった。

「イコーテム・アバラスを止めよ」

「・・・は?」

あまりの事に俺は素っ頓狂な声をあげた。

「今なんと?」

「だから、イコーテムを止めろといったのだ」

「えっと・・・父上に何かあったのですか?」

国王は気まずそうに話す。

「・・・した」

「?」

「余に反旗を翻したといったのだっ! 先日、イコーテムの使者がやってきて宣戦布告したのだっ!!」

「はああぁっ?!」

予想の斜め上の事態に俺は驚いた。

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! 父上が謀反を起こしたとっ?!」

「そういっているのだ」

「なぜ父上がそのようなことを・・・」

「王国内にいるバカな貴族たちがイコーテムを挑発しすぎた結果、暴発して挑発したバカな貴族たちを殺害。 その怒りの矛先を余に向けた」

それを聞いた俺は天を仰いだ。

しばらくして落ち着きを取り戻すと国王に話しかける。

「理由はわかりました。 それで俺に父上を止めろと?」

「そうだ」

「無理だっ! 国王陛下、あなたは何もわかっていないっ! 父上の・・・イコーテム・アバラスの恐ろしさをっ!!」

父上に理性がまだあるなら俺でも抑えることができるだろう。

だが、国王がいったことが真実であれば、父上の怒りは我慢の限界を超えたと推測できる。

その状態になると俺やリクルでは止められない。

仮にできるとしたら今は亡き母上だけだ。

「無理でもなんでもやらなければこのフーリシュ王国が(ほろ)ぶのだぞ?」

「それは国王陛下、あなたが自分の身可愛さにいっているだけじゃないのかっ! イコーテム・アバラスがどれほど危険な人物か国王ならば知っていて当然の事だろうっ!!」

俺の言葉に国王は苦い顔をした。

「貴様! 陛下に向かってなんて口の利き方をするんだ! 答えは『サー!』だといったはずだぞ!!」

隣にいた女団長が俺の頭を地面に押し付けた。

「ぐっ! ほかの事ならともかく怒りで暴走している父上を止めるなんて無謀なこと俺はしたくないぞっ!!」

「口答えするなっ! 命令を拒否するならば俺自ら制裁を下すぞっ!!」

頭を押さえている手に力が入る。

「ふっ・・・ざけるなよっ!!」

俺は【風魔法】を発動すると自らを巻き込んで竜巻を作り出す。

突然のことに押さえていた女団長が上空へと吹っ飛んで天井にぶつかった。

「がはぁっ!!」

竜巻に弾かれて国王の方へと落下して地面にたたきつけられる。

「っ! 新入りっ! 貴様ぁっ!!」

その隙に俺は謁見の間を出て走って逃げた。

「ロニーを捕まえろっ! ただし、殺すなっ!!」

開け放たれた扉からは俺の捕縛命令が下されていた。

「冗談じゃないっ! もうこんな国(フーリシュ王国)にいられるかっ!!」

俺は最短ルートを通って王城から脱出すると逃亡先を考えた。

「東と南はダメだ。 追手の事を考えると最適なのは北か・・・そうと決まれば急いで行くぞ」

俺は北にある魔族の国を目指して逃げるのであった。


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