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132.イコーテム公爵8 〔イコーテム視点〕

部下たちに早馬でツッカヘナイとヤークタニズの首をラストールへ送るよう指示してから2週間が経過した。

その間に帝国からの嫌がらせで攻めてきた者たちをわし自ら出陣して相手にする。

帝国はいつも通りの戦術で攻めてきてわしを苛立たたせ、頃合いを見て逃げようとしたのだろうが今回はいつもと違い、わしから逃げ切ることができなかった。

それはなぜかというと、部下の魔法士たちに体力上昇や走力上昇などの【身体強化魔法】を馬に何重にもかけたからだ。

敵兵たちもまさかわし1人で追いかけてくるとは想像していなかったのだろう。

わし自ら攻めてきたことで相手はアバラス領を落とす千載一遇のチャンスと捉えたのだ。

それから敵兵たちは全員でわしを攻撃する。

だが、帝国は知らなかった。

わしの怒り()を。

「舐めるな!!」

わしは剣を抜くと襲ってくる敵兵たちを斬る。

数こそ圧倒的ではあったが、わしからしてみれば実力が伴わない烏合の衆に過ぎない。

侮っている者たちを1人また1人と殺していく。

最初こそ優勢であった敵兵たちも気づけば残りわずかになっていた。

勝てないと悟った者たちは逃走するもすでに遅すぎた。

誰1人として逃がしはしない。

それから残っていた敵兵を全滅させたことで煩わしい蠅どもの駆除が完了する。

これにより長らく続いていた苛々の原因の1つが解決された。

しかし、これで終わりではない。

帝国兵はツッカヘナイとヤークタニズの領地を占拠している。

両地ともわしの領に面しているので、放置していると攻め込んでくるだろう。

わしは王都フーズベルグを攻める前に近場にいる煩わしい帝国兵を一掃することに決めた。

軍を二手に分けてそれぞれの領地を同時に攻略する。

ツッカヘナイの領地をわしが、ヤークタニズの領地を騎士団長が主軸となり攻めることになった。

攻め込む準備をしていたであろう帝国兵たちは突然の襲撃に面を食らうが、すぐに体制を整えて防衛にあたる。

ツッカヘナイが戦わずして逃げたこともあり、帝国兵たちは万全な状態であった。

先陣を切ったわしは怒りのまま帝国兵たちがいるであろう館へと突入する。

領地内のどの建物よりも堅牢である館は攻め辛いが、そんなことはわしには関係ない。

「わしの邪魔をするな!!」

正面から堂々と攻めて敵兵の攻撃をすべて弾き返して突破する。

わしが抉じ開けたところから部下たちが雪崩込み、帝国兵を次々に殺していく。

其処彼処から断末魔の悲鳴が聞こえるなか、わしは帝国の司令官()と相対する。

「フーリシュ王国でも名高い剣聖イコーテム・アバラス様とお見受けします」

「わしの邪魔する奴は貴様か?」

「邪魔をしたというなら謝罪いたします。 それでアバラス様にお話があるのですが」

「話し合うことなど何もない」

わしは剣を構える。

「そういわずに。 実はアバラス様に帝国に来てほしいのです。 貴方ほどの人材をこのまま消すのは惜しい。 どうでしょう? 今までのことは水に流して帝国に・・・」

「やかましいわっ!!」

ザシュッ!!

わしは司令官を袈裟斬りにした。

「ぎゃあああああぁーーーーーっ!!」

斬られた場所からは大量の血が噴出する。

司令官はうしろに倒れこむとそのまま絶命した。

あとの事は部下たちに任せてアバラス領に戻る。

しばらくしてヤークタニズを侵攻していた部下が戻ってきた。

「旦那様」

「そちらはどうだ?」

「ヤークタニズにいる帝国兵をすべて討ちました」

「ご苦労。 全員に休むよう伝えろ」

「はっ!!」

こうしてわしの邪魔をした帝国兵たちを一掃することができた。


鍛錬場で騎士たちの練度を確認していると王都フーズベルグに向かわせた部下たちが戻ってきてわしの前に跪く。

「旦那様、ただいま戻りました。 旦那様のお言いつけ通り、国王陛下にツッカヘナイ子爵とヤークタニズ男爵の首を差し出して宣戦布告をして参りました」

「ご苦労。 3日後に王都フーズベルグに向けて進軍する。 それまでの間、疲れた身体を休ませろ」

「「「「「はっ!!」」」」」

部下たちはわしに一礼すると自室へと戻っていった。

「お前たち、修練はここまでだ。 3日後に王都フーズベルグに向けて進軍する。 それまでに出撃の準備を終わらせろ」

「「「「「はっ!!」」」」」

それだけいうとわしは鍛錬場を出て行った。


3日後───

朝食を終えたわしは自室に戻ると壁にいくつか飾られている剣から一振りを手に取り鞘から抜いた。

抜き身の剣はよく磨かれており、剣身はわしの顔を映している。

「ラストール、それにわしをバカにした貴族ども、わしを怒らせたことを後悔するがいい」

わしは剣を鞘に戻すとそれを腰に差す。

それから部屋を出て館の外に移動するとそこには多くの部下たちが整列していた。

「皆、準備はできているな」

「「「「「はっ!!」」」」」

「良い返事だ」

わしは用意された馬に騎乗すると部下たちに命令した。

「これより王都フーズベルグに向けて進軍する。 皆、わしに続け」

「「「「「おおおおおぉーーーーーっ!!」」」」」

アバラス公爵家の旗を掲げると王都フーズベルグへ向けて進軍を開始した。

途中、わしの派閥であるシターテ、リックル、ヘツラーたちの領地に踏み込む。

彼らはわしの軍を見ると顔を蒼褪めさせた。

「こ、これはアバラス公爵閣下。 きょ、今日はどのようなご用件で?」

「ラストールを討ちに行く。 貴様に問おう。 貴様はわしに付くか? それともラストールに付くか?」

「も、もちろんアバラス公爵閣下に付きます」

彼らはわしの怒気に触れてすぐに降伏した。

「その言葉(たが)えるなよ。 もし、裏切れば・・・わかるな?」

「は、はいっ!!」

ツッカヘナイやヤークタニズとは違ってわしに敵対せず、味方に付くといったので軍門の末席に迎える。

そして、ついに王都フーズベルグが見えてきた。

わしが進軍しているとの情報が入っているのか、すでに王都の門前には多くの兵が身構えている。

「さぁ、ラストール。 わしを虚仮にしたことを償ってもらうぞ。 おい」

「「「「「はっ!!」」」」」

わしの呼び声に近くにいた兵が何名か反応する。

わしは懐から一通の封書を取り出す。

「これをラストールに渡してこい」

「畏まりました」

わしは王都に宣戦布告を伝える使者を送るのであった。


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