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124.一曲踊りましょう

晩餐会の会場にてスティクォンたちはワインを飲みながらキーラと談笑していた。

「それにしてもこのワインは何度味わっても美味いな。 これ(ワイン)をいつでも飲めるシディアが、いやマルチブルグの民たちが羨ましいぞ」

「酒に関してはシディアが本気で欲しがっていたからな・・・」

それを聞いてクーイが苦笑いをする。

多分スカウトの時のことを思い出したのだろう。

「それでスティクォン、話があるのだが、我の国と国交を考えてみないか?」

「え?」

キーラからの突然の提案にスティクォンだけでなくメルーアやウィルアムも驚いた。

「国交ですか? 属国とかではなくて?」

「属国なんかしたらシディアがキレるだろう。 下手をすれば我とシディアの全面戦争になる」

スティクォンたちはシディアがキレて暴れる姿を想像して身震いした。

「そういう訳で属国はなしだ。 それで国交なんだが、できれば前向きに検討してもらいたい」

「キーラ、すまない。 今すぐには決められないよ」

スティクォンとしてもメルーアたちと話し合って国交をするかどうか判断するべきだと考えている。

「我としても今すぐ返事が欲しいわけではない。 国の者たちと話し合って決めるがいい」

キーラはグラスに残っているワインを飲み干した。

「さて、いつまでも話していたいところだが、我も忙しいのでな。 ここで失礼する。 あとでまた時間を作るのでその時に話し合おう」

それだけいうとキーラは玉座へと歩いて行った。

その堂々とした態度に周りにいた貴族たちは羨望の眼差しで見つめる。

玉座に着くと振り返り会場内に聞こえるよう高らかと挨拶した。

「皆の者、我が開催する晩餐会によくぞ集まってくれた。 日頃の感謝を込めてささやかだが酒と食事を用意した。 最後まで楽しんでくれ」

挨拶が終わると待ってましたとばかりに楽団が演奏を始めた。

落ち着いた曲で場を和ませる。

何組かの魔族たちが中央に進むと曲に合わせて踊りだした。

「魔族たちの宴も人間族と変わらないな」

スティクォンが王国のことを思い出しているとメルーアがスティクォンの前に立つ。

「スティクォン、せっかくだからわたくしと一曲踊りますわよ」

それだけいうとメルーアはスティクォンの腕を掴んで中央へと歩いていく。

「ちょ、ちょっと! メルーア!」

到着するとメルーアはスティクォンに対してカーテシーをする。

「さ、踊りましょう」

「僕は踊るのはあまり得意じゃないんだけどな・・・」

苦笑いしながらもスティクォンはメルーアの手を取って踊りだした。

決して優雅ではないが、それでもリズムに合わせて2人は踊る。

「あら、スティクォン、結構上手ですわね」

「メルーアがフォローしてくれるからだよ」

そんなメルーアだが、ある1点から視線を感じる。

メルーアはその視線が誰なのか、そして、何を意味しているのかを瞬時に理解した。

一頻り踊るとスティクォンとメルーアはお互いに礼をする。

「楽しかったですわ」

「僕としては突然のことで緊張したよ」

ウィルアムたちのところに戻るとメルーアはハーニに近づいてその背中を押す。

「え? メルーア?」

「ほら、スティクォン、次はハーニと一曲踊ってきなさい」

突然のことに驚くハーニ。

「わ、私がスティクォンとですか?! 私、踊れませんよ!!」

「大丈夫ですわ。 スティクォンがリードしますから」

「おいおい」

困った顔をするスティクォン。

メルーアはスティクォンに聞こえないようにハーニの耳元で囁くように話しかける。

『ハーニ、ここで頑張らないとわたくしがスティクォンを貰ってしまいますわよ』

『!!』

ハーニが驚いた顔でメルーアを見るとウィンクで返した。

メルーアとハーニはお互いスティクォンのことが好きで愛している仲間でありライバルだ。

この気持ちだけは公平でいたいというのが2人の共通点である。

(ゆえ)にメルーアは自分だけ踊るのはフェアではないと感じたのだろう。

それが敵に塩を送る行為であったとしてもメルーアは後悔しない。

そんな事とは知らないスティクォンはハーニに手を差し伸べる。

「ハーニ、よければ僕と一曲踊らないか?」

「は、はい!」

ハーニはスティクォンの手を取ると2人で中央まで歩いていく。

お互い一礼すると曲に合わせて踊りだした。

踊りなんて一切したことがないハーニだが、スティクォンがリードする。

「スティクォンは踊るのが上手なんですね」

「以前僕が貴族という話をしたと思うけど、王国・・・母国にいた時に貴族としてのマナーを徹底的に叩き込まれたんだ。 その中には踊りも含まれている。 といっても、先ほどもいったけど僕は踊るのはあまり得意じゃないんだよ」

ハーニの質問に答えるスティクォン。

ぎこちない動きで踊るハーニだが、スティクォンは見事にフォローしていく。

演奏が止まると同時にスティクォンたちも踊りを終えてお互いに礼をする。

「ハーニ、どうだった?」

「とても楽しかったです」

スティクォンたちはメルーアたちのところへと戻った。

「スティクォン、ハーニ、お疲れ様」

「スティクォン様、ハーニ様、お疲れ様です」

「ウィルアムさん、皆、僕だけ楽しんで申し訳ない。 もし、よければ皆も踊ってきたら」

次の演奏が始まったのか中央では何組かの貴族たちが踊っていた。

「私は遠慮させていただきます」

「私も格式の高い踊りはちょっと・・・」

「祭りみたいのなら俺たちも踊ったんだけどな」

「こういうかしこまったのは踊れねぇわ」

スティクォンが勧めるもウィルアムたちは皆首を横に振る。

「あはははははっ、まぁ無理にとはいわないよ」

ぐぎゅるるる・・・

談笑していると突然バーズやスポーグたち獣人族の腹から音が鳴った。

「ああ、すまねぇ」

「酒や食べ物の匂いでつい」

頭を掻くバーズたち。

「ここだと目立つから会場の隅にでも移動しよう」

「それならばあちらの席がよろしいでしょう」

ウィルアムが指さしたところには貴族がいない。

「そうですわね。 あの席なら迷惑もかけませんし、問題ありませんわ」

「なら、決まりだね。 向こうに移動しよう」

スティクォンたちは貴族がいない会場の隅のほうへと移動するのであった。


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