表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/157

120.門前でのトラブル

スティクォンたちはキーラの住む城へと移動していた。

先頭は馬に騎乗したバーズとスポーグ。

そのうしろを走る一番目の馬車にはメルーア、ウィルアム、ファリー、ドーグが、二番目の馬車にはクーイ、ティクレ、アールミスが、三番目・四番目の馬車にはキーラへの贈呈品が載っている。

それぞれの馬車の横を馬に騎乗した獣人族の護衛たちが走り、一団の最後尾にはスティクォン、ハーニ、ビューウィ、マムモ、アーネル、シャンティを乗せて低速飛行で飛んでいるシディアがいた。

程なくして巨大な外壁に到着する。

そこに外壁の門を守る門兵が警告してきた。

「止まれ! 怪しい奴らめ! ここは魔王様が治める領域だ! 何者だか知らぬが悪いことは言わぬ。 ここから立ち去るがよい!!」

馬車よりウィルアムが出てきて門兵に事情を説明する。

「突然の来訪、誠に申し訳ございません。 私たちは多種族共生国『マルチブルク』から来た者です。 キーラマカ・デモンロード魔王陛下より本日行われる晩餐会の招待を受けて参りました」

ウィルアムは懐からキーラが渡してきた招待状を門兵に渡す。

「・・・たしかに魔王様の封蝋だが、これをどこで手に入れた? 場合によっては身柄を拘束させてもらうぞ」

「こちらは魔王陛下より直々に頂いたものです」

「魔王様が直々に? 嘘をいうな! どこの国だか知らぬが魔王様を語る不届き者め! 全員牢にぶち込んでやる!!」

門兵は懐から笛を出すと鳴らした。

ピイイイイイィーーーーーっ!!

その音を聞いて門から多くの衛兵が現れた。

「こいつらを一人残らず捕まえろ!!」

「「「「「はっ!!」」」」」

衛兵たちがスティクォンたちを捕まえようと動こうとした時だ。

「何事だ? 騒々しい」

門の奥から男性の声が聞こえてきた。

その声を聞いて衛兵たちはすぐに門の左右に分かれて直立不動する。

姿を現したのはキーラだ。

「魔王様! なぜこのようなところに・・・」

「招待客が見えたので我直々に迎えに来たのだ」

キーラは門兵の問いに答えるとウィルアムたちに歩み寄った。

「シディア、それにウィルアム、よくぞ来てくれた」

「魔王陛下、お久しぶりでございます」

『うむ』

ウィルアムが頭を下げようとするのをキーラは手で制した。

「我が招待したのだから気を楽にするがよい。 それでスティクォンとメルーアはどうした?」

「少々お待ちください」

すると状況を察したのかシディアの背中からスティクォンが、馬車の中からメルーアが降り立つとキーラのところまで歩いた。

「スティクォン、メルーア、久しぶりだな」

「キーラ、久しぶり」

「招待いただきありがとうございます」

スティクォンとメルーアはキーラに挨拶する。

「息災で何よりだ」

「キーラに会ったら伝えたいことがあったんだ。 僕たちの国だけど多種族共生国『マルチブルク』と名乗ることにしたよ」

「そうかそうか、国名が決まったか。 それは良かったな」

キーラは我が事のようにスティクォンたちのことを喜んだ。

それからウィルアムに向き直ると質問する。

「ところでウィルアムよ。 ここで何があったんだ?」

「実は・・・」

ウィルアムが答えようとしたところで門兵が遮った。

「魔王様、この者たちはいったい・・・」

キーラは質問の邪魔をされたことに怒りを感じたのか門兵に鋭い眼光を向けた。

あまりの圧力に門兵は言葉が詰まる。

「この者たちは我の客人だ。 我が直接招待状を送った」

その言葉を聞いて門兵の顔が蒼褪めた。

「そ、それでは、こ、これは、ほ、本物っ?!」

門兵は手元にある招待状を見て震えだす。

「ん? 3日前に防衛大臣を通してこの者(スティクォン)たちが来ることを通達したのだが聞いていないのか?」

「は、はい!!」

キーラが門兵や衛兵たちを見渡すと皆知らないと肯いていた。

「詳しい話を聞きたいところだが、これ以上我の客人を放置するわけにはいかんのでな。 今は不問とする」

「ははぁっ!! 寛大なお言葉ありがとうございますっ!!!」

キーラはスティクォンたちに状況を説明する。

「どうやら我の手違いで面倒事になったようだ。 許せ」

「別に気にしていませんよ」

「あとで伝達を怠った者には責任を取らせるとして、まずは多種族共生国『マルチブルク』から来た者たちよ。 歓迎する。 ところで馬車が多いようだがそんなに人を連れてきたのか?」

キーラの疑問にスティクォンが答える。

「前2つはそうだけど、あとはキーラへの贈り物を載せている」

「ほぅ、我に贈り物とな?」

「気に入るかはわからないけど・・・」

「スティクォンたちのことは信用しているが毒物や危険物があっては問題なのでな。 どれ、我の【探知魔法】で調べてみるか」

そういうとキーラは【探知魔法】を発動してすべての馬車を確認した。

「ふむ、毒物や危険物はなさそうだな。 よかろう、すべての馬車の通行を許可する。 では、我についてくるがよい。 シディア、悪いが上空から入ってくれ」

『壁を破壊して進むわけにもいかぬからな』

キーラは背を向けると歩き出した。

そのうしろをスティクォンたちがついていく。

シディアはキーラの言う通り空から中に入っていった。

外壁の門を(くぐ)るとそこには整備された城下町があり、その先には大きな城が建っている。

「はぁ・・・すごく綺麗な街並みだな」

「ここに住む者たちの努力の賜物だな。 各々が自主的に取り組んだ結果だ」

町中にいる魔族たちはスティクォンたちを不審な目で見ていたが、隣にいるキーラを見た途端、皆(こうべ)を垂れる。

「僕たちの国は未だに発展途中だから参考にさせてもらうよ」

「国造りに役立つなら好きにするがよい」

他愛ない会話をしながら歩いていると城門に辿り着いた。

城の周りは堀になっていて、堀の中は透き通るような水で満たされている。

跳ね橋が降ろされており、キーラに気づいた門兵が最敬礼で出迎えた。

「ここが我が城だ」

城門の隙間から見える城はスティクォンの知るフーリシュ王国の王都フーズベルグにある城よりも立派だった。

「立派な城だな」

「ゆっくりと見せてやりたいところだが、まずは落ち着ける場所まで案内しよう」

キーラの案内でスティクォンたちは城門を通過して入城するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ