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117.魔王再来

学校を作るということで建設地はどこにするのか、また、どのようなことを具体的に教えるのかを考えていく。

「うーん、僕が王国の学校で学んでいたことはあまり役に立ちそうにないな・・・」

フーリシュ王国の学校は主に10歳になった貴族の令息令嬢が6年間通うところだ。

例外としては、毎年行われる厳しい入学試験に合格したとても優秀な平民が特例で通うことが許される。

学校の内容だが、勉学の場というよりどちらかといえば貴族家同士の繋がりを強めたり、将来優秀な者を召し抱える場といっても過言ではない。

スティクォンも将来を見据えて自分より爵位の低い者や優秀な平民を取り込むために奔走していた。

もっともスキル授与の儀で【現状維持】のスキルを授かったことで実父であるイコーテムから追放処分されて3年間の努力がすべて水の泡になったが・・・

「僕は学校に通う前に家庭教師から厳しく教わったからな・・・ウィルアムさん、魔族の学校はどんなところですか?」

「そうですな・・・今スティクォン様が仰った内容と然程変わりません。 必要な事は入学する前に私が家庭教師役としてメルーアお嬢様にお教えしておりました」

スティクォンとウィルアムはどうするか悩んでいる。

ちなみに一緒にいるアリアーサは学校自体を知らないので話の内容についていけず、一人置いてきぼりの状態だ。

話し合いをしているとリルがやってきた。

「スティクォンさん、お客さんが来てますよ」

「客?」

話し合いを中断してリルに案内されてやってきた巨木にはキーラがいて、そのうしろにメルーアが申し訳なさそうに控えていた。

「久しいな、スティクォン」

「キーラ、久しぶり。 今日はどうしたんだ?」

「スティクォンにこれを渡しに来た」

挨拶もそこそこにキーラは懐から一通の封書を取り出すとスティクォンに手渡した。

「これは?」

「2週間後に我が城で晩餐会を開催する。 その招待状だ」

キーラは招待状を渡すためだけにわざわざマルチブルグまで足を運んだ。

「晩餐会ですか・・・」

「ああ、それとメルーアとウィルアムにも是非参加してもらいたい」

「か、んん、わかりました」

メルーアとウィルアムがキーラに一礼する。

「要件はそれだけだ。 では、さらばだ」

それだけいうとキーラは宙に浮いて北東へと飛んで行った。

招待状を見てスティクォンは顔を顰める。

「うーん、困ったな・・・」

「どうされましたか?」

「着ていく礼服がない」

スティクォンの指摘にウィルアムも思い至ったのか難しい顔をします。

「アーネルとシャンティに頼むとしても実物の礼服など見たことがないから作れないだろうし・・・」

「たしかに困りましたな・・・ロストアークでご購入しますか?」

「そうですね。 僕とメルーア、ウィルアムさん、あとは護衛に獣人たちを連れて行きましょう」

スティクォンたちは学校についての話し合いは一時中断して礼服の購入を最優先にした。

シディアに頼んでロストアーク伯爵領に行くも服飾店の扉に1枚の紙が張られている。

そこには『店主急病につきお休みとさせていただきます』と書かれていた。

「困りましたな」

「ええ、まさか店が閉まっているとは予想外です」

ほかにないかと探すもロストアーク伯爵領には服飾店が1件しか存在しなかった。

「スティクォン様、どういたしますか?」

「ほかの貴族領の服飾店も見て回りましょう」

ウィルアムの案内で魔族の国内にある貴族領を見て回るスティクォンたち。

しかし、晩餐会が近いということでどの服飾店も礼服が品切れ状態だった。

残るはメルーアの実家であるウィンアーク伯爵領だけだ。

「あと残っているのはウィンアークだけど・・・行ってみますか?」

「メルーアお嬢様の身に危険が及ぶ可能性がありますので承服いたしかねます」

ウィルアムの言葉にメルーアも頷いた。

「そうなると困ったな・・・うーん・・・」

スティクォンはどうしようと考えているとある考えが浮かんだ。

「こうなったらフーリシュ王国に行って購入するしかないな。 そうと決まれば一旦マルチブルグに戻ろう」

スティクォンたちはマルチブルグに戻るとマムモとシャンティに化粧を施してもらった。

それからフーリシュ王国最北端の村である『世捨て村』へと向かう。

到着したスティクォンたちは以前お世話になった商人のところへと足を運んだ。

「らっしゃい・・・って、この前の兄さんじゃないですか。 どうしたんです?」

「実は礼服とドレスを探しているんだ。 ありますか?」

「ちょっと待ってな」

商人は奥に行くと礼服とドレスを1着ずつ持ってきた。

(わり)ぃな。 要望の服はこれしかないんだ。 それもあまり良い状態じゃない」

持ってきたのはそれなりの物だが、よく見ると汚れて色がくすんでいたり、糸がところどころ解れていたり、穴がそこかしこに開いていたりしていた。

それを見たスティクォンたちは苦笑いをする。

「さすがにこれはちょっと・・・」

「せっかく買いに来てくれたのに(わり)ぃな」

「いえ、無理を言ってすみません」

礼だけするとスティクォンたちは村を離れた。

「スティクォン様、どういたしますか?」

「・・・王都に向かう。 そこなら礼服があるはずだ」

スティクォンたちはシディアに乗って王都フーズベルグ近郊にやってきた。

手頃な森に到着するとシディアをその場に残してスティクォンたちは王都フーズベルグを目指して歩く。

本来なら多くの人が往来する道も今は誰ともすれ違うことはない。

王都入口に到着すると身分証を見せて無事入都することに成功した。

王都内を散策するも活気がないのか閑散としていてまるでゴーストタウンだ。

スティクォンは記憶を頼りに服飾店を探す。

程なくして目的の店を発見して中に入る。

「いらっしゃいませ。 何かお探しですか?」

「貴族用の礼服とドレスを購入したいのですが」

「こちらでございます」

案内されたところには多くの礼服が置かれていた。

スティクォンたちはそれぞれデザインが異なる礼服を10着ずつ選ぶと購入する。

「ふぅ、なんとか手に入って良かったよ」

ついでに宝飾店で指輪、ブローチ、ネックレス、ティアラといった服に合う品も購入した。

無事目的を果たしたスティクォンたちはマルチブルグへと戻るのであった。


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