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11.安住の地を探そう

青空の中、スティクォンたちは目の前に広がる砂漠を見た。

「メルーア、ウィルアムさん、ここが死の砂漠ですか?」

「はい」

「スティクォン様の仰る通りここが死の砂漠でございます」

そこは血のように真っ赤な砂で埋め尽くされている。

「逃げるのにはうってつけだが、この先に住める場所があればいいが・・・」

「わたくしたちもここに来たのは初めてです」

「この砂漠を越えようとする者には死が訪れると聞きますからな」

スティクォンは勇気を出して1歩砂漠に踏み入れる。

砂に足を取られることなく立つことができた。

そのあとも2歩3歩と歩くが問題なさそうだ。

問題ないと判断したメルーアとウィルアムもスティクォンに続いて砂漠に足を踏み入れる。

スティクォンたちは西を目指して歩き出す。

1キロほど歩くとスティクォンたちの体感温度は倍以上になっていた。

それもそのはず、この砂漠の気温はなんと100度を超えている。

普通の砂漠の倍以上の温度がスティクォンたちを襲っていたのだ。

それに逸早く気付いたメルーアが【水魔法】を発動してスティクォンたちの周り全体を霧で覆った。

これにより日差しを遮り地表の熱を奪うことに成功する。

同時に喉の渇きも抑えられて一石二鳥だ。

メルーアの魔力を維持していなければこの砂漠を越えようとは考えもしなかった。

そして、今頃は魔力枯渇で動けなくなり進むことも戻ることもできず、スティクォンたちに確実な死が訪れていただろう。

メルーアとウィルアムにとってスティクォンはまさに救世主だ。

それはスティクォンも同じで、もし2人と出会わなければスキル【現状維持】の本質を知らぬまま死んでいただろう。

お互いがお互いを助け合ったことで新たな生きる道ができたのだ。

空腹を覚えず、体力も失われないのでスティクォンたちはガンガン進んでいく。

やがて太陽が西に沈むと夜が訪れる。

しかし、そこで思わぬ出来事が発生した。

それは気温が逆転したのだ。

昼間の気温が100度を上回るのに対して、夜の気温は氷点下100度を下回る。

その上、メルーアが【水魔法】を使っていた影響で、空気中の水分が凍って更に体感温度が下がったように感じた。

あまりの寒さにスティクォンたちは毛布に包まりお互いに密着する。

異常な寒さに普通なら凍死しているだろうが、スティクォンのおかげで死ぬことなく一夜を過ごすことができた。

翌日、炎天下の中スティクォンたちは進んでいく。

追手はこないだろうが距離的には無理をすれば追いつかれる場所だ。

1歩でも遠くに行くことだけを考えて前に進む。

やがて太陽が西に沈む頃、スティクォンがメルーアとウィルアムに声をかける。

「メルーア、ウィルアムさん、話を聞いてくれ」

「スティクォン、なんでしょうか?」

「今から砂漠をさらに歩きます」

「え? 今からですか?」

「はい」

スティクォンが真面目に告げる。

メルーアは嫌そうな顔をした。

「理由をお聞かせ願いますかな?」

ウィルアムはすぐには否定せずスティクォンに説明を求めた。

「はい、今の砂漠の温度を【現状維持】して一気に進みます」

「え? そんなことできるんですか?」

「今までのことを考えればできますでしょう。 しかし・・・いや、もしかして・・・」

ウィルアムはスティクォンの考えを口にする。

「スティクォン様は私たちの覚醒状態も【現状維持】して進むということでしょうか?」

「ウィルアムさん、正解です。 昼は追手のことを考えてそのままに、夜は一定の温度で進むんです」

「なるほど、それならば仮に追手が死の砂漠に入ったとしても、日中の気温が障害になり私たちを追手は来れない」

ウィルアムは納得するがメルーアはというとあまり良い顔をしていない。

「もしかしてこれから24時間ずっと歩くのですか?」

「は、はい・・・」

スティクォンは申し訳ないと頭を下げた。

メルーアとしては疲れていないとはいえ夜だけでも休んで眠りたい。

だけど、昨夜の極寒地獄を味わったためか、眠れるか不安でしかない。

メルーアはしばらく考えると踏ん切りがついたのだろう、スティクォンに応える。

「スティクォン、爺、わたくしも頑張りますわ」

「わかりました。 それでは始めよう」

スティクォンはまず気温を、そのあと3人の覚醒状態を維持した。

これで夜の極寒地獄ともおさらばだ。

スティクォンたちは夜の砂漠を再び歩き始めた。

脳も覚醒しておりスティクォンたちは強行軍となって砂漠を進んでいく。

朝は太陽が顔を出す頃に気温の維持を解除し、夕方は太陽が沈む頃に気温を維持する。

さらに昼夜問わず休むことなく歩き続けたことにより、僅か10日で死の砂漠の中心部までやってきた。

「メルーアお嬢様、スティクォン様、ここら辺でよろしいのでは?」

「そうだね、僕は賛成です。 メルーアは?」

「ここなら追手もそうそう追ってこないでしょう。 ここを拠点にします」

そこは周りを見渡す限り砂だらけで何もない。

「まずはわたくしたちが住むために必要な土地を作ります」

メルーアはこの砂だらけの死の砂漠の中心部に土地を作ると宣言した。


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