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102.魔王と龍 〔メルーア視点〕

ズシイイイイイィーーーーーン・・・

シディアが地上に降り立つと魔王様に話しかけました。

『誰かと思えばお前か、魔王キーラマカ・デモンロード』

いつもとは違い言葉の端に棘があるような物言いにわたくしは驚きました。

「久しぶりの再会だというのにつれないな。 我のことはキーラと気安く呼んでほしいものだ。 我が友、龍女皇シーディリアル・ドラゴハート」

魔王様が発した言葉にわたくしはまたも驚きました。

(龍女皇? もしかしてシディアは龍族の王なの?)

シディアが何者なのかは気になりますが、今はシディアと魔王様のやりとりを静観するしかありません。

『その名は()うの昔に捨てた。 今はただのシディアだ。 それにお前と友になった覚えなど我にはないぞ』

この場で戦いが始まるのではと思いきや殺意はなく、お互いに名の呼び合いに不満があるのか訂正を求めていました。

「ああ、わかったわかった。 このままでは埒が明かないからな。 素直にシディアと呼ばせてもらおう」

根負けしたのか、それとも面倒になりそうなのを悟ったのか、魔王様が先に折れました。

今の一連のやり取りを見てシディアと魔王様が昔からの知り合いであり、あまり仲が良いとはいえない関係であることがわかります。

『それでキーラは何をしにここ(死の砂漠)へ来たのだ?』

シディアの質問に魔王様は待ってましたと言わんばかりに嬉々として答えます。

「数ヵ月前からシディアの気配を感じたり実際に何度か目視もしていてな、ここで何をしているのか非常に興味があった。 本当はもっと早くに訪れたかったのだが、部下たちが持ってくる山のような量の仕事を片付けるのに手間取ってしまったんだ。 ようやくすべてが終わったので気分転換に来てみたという訳だ」

『それはご苦労なことだな』

「まったくだ。 魔王になって数千年以上経つが、働けど働けど絶え間なく仕事がくるものだからなかなか休みが取れなくて困っている」

そういうと魔王様は疲れた顔をしました。

「まぁ、我の身の上話などこの際どうでもよい。 それよりもここだ。 メルーアを使ってこの地を開拓するとはなかなかに面白いことをするではないか」

『残念だがここの開拓を計画したのは我ではない。 そこにいるメルーアとウィルアム、それとここにはいないがスティクォンの3人だ』

ドクンッ!!

スティクォンの名を聞いて、わたくしの心臓の鼓動が一瞬跳ね上がりました。

「スティクォン?」

魔王様は聞きなれない人物に首を傾げます。

『噂をすれば今こちらに向かってきているぞ』

シディアが南西へと視線を向けたので、わたくしは立ち上がってそちらを見ました。

するとそこには一仕事を終えたのでしょう、タオルで汗を拭きながらスティクォンがわたくしたちの方へ歩いてきます。

「ん? メルーア、ウィルアムさん、シディア、こんなところ(巨木)に集まって何しているんだ?」

「ほぅ・・・この者がスティクォンか。 肌色、耳が尖っていないところからして人間族だな」

スティクォンは魔王様に気付いたのか驚いた顔をします。

「たしかに僕の名前はスティクォンで人間族ですが、えっと・・・どちら様でしょうか?」

「ああ、すまない、名乗っていなかったな。 我はキーラ、シディアの古き友でメルーアと同じ魔族だ」

魔王様はスティクォンに近づくと右手を前に出して握手を求めます。

スティクォンはわたくしを見てきたので黙って頷きました。

「スティクォンです」

スティクォンもタオルで手を拭いてから魔王様の握手に応じました。

それから30秒ほどしてからお互い手を放します。

「今しがたシディアやメルーアから聞いたのだが、メルーアと共にここを開拓したとか」

「え、ええ、たしかにそうですが、僕たちだけでなくここに住むたくさんの人と共に発展させてきました」

スティクォンの言葉に魔王様は好奇心旺盛な目をしていた。

「ほぅ、実に興味深い。 よければこの地を案内してもらえないだろうか?」

「僕は構わないけど・・・」

スティクォンはわたくしやシディアを見てきました。

どう回答すればいいのかわからず、わたくしもシディアを見ます。

『スティクォンがよいのであれば好きにすればいい』

シディアはそれだけ言うとその場で蹲りました。

スティクォンはその場で数瞬考え込んでから魔王様に向き直り回答します。

「わかりました。 僕でよければ案内します」

「我の要望に応えてくれて感謝する」

「それでは早速案内を・・・と、その前にこの恰好ではなんですし着替えてきますね」

一言断りを入れるとスティクォンはその場を離れます。

それから20分が経過した頃、スティクォンが戻ってきました。

「お待たせしました」

「それでどこを案内してくれるのかな?」

待ちきれないのか案内先を聞いてきます。

「うーん、ここの名所か・・・北西は僕たちの住居や飲食物の加工場、南西は野菜や果物を育てている畑、南東は人工海、北東は人工山、それと牧場と温泉があるくらいかな・・・」

「はっはっはっはっはっ、この限られた土地に色々と作ったものだな」

わたくしたちが好き勝手に作ったのを想像したのでしょう、魔王様は豪快に笑いました。

「すべては僕たちが生きるために作ったものです」

「そうか、生きるためにか・・・たしかに必要なことだな」

スティクォンの言葉に魔王様は笑うのを止め、真剣な表情になって同意するように頷きます。

「それでどこか気になるところはありますか?」

「せっかくだからすべて見に行きたい。 そうだな・・・南東から南西、北西、北東と回るとしよう」

「わかりました。 メルーアたちはどうする?」

「わたくしは・・・」

一瞬戸惑いましたが、スティクォンと魔王様を2人きりにして万が一何か起きたらと考えると気が気でなりません。

「わたくしも行きますわ」

「私もご同行いたします」

「それでは行きましょう」

スティクォンにすべてを丸投げする訳にもいかないので、わたくしと爺も一緒に行くことにしました。


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