自由
三題噺もどき―ろくじゅうきゅう。
お題:ビル群・空・綺麗
空へ向かって、たくさんのビルが立ち並ぶ街で。
ビル群のなかの狭い路地裏を進んでいく。
ザワザワと、人がひしめき、ビルが突き刺されている。
綺麗なんて言葉とは程遠い。
美しさなんてものはどこにもない。
汚い世界が、そこにはある。
人の醜さが、そこにはある。
ふと立ち止まって、空を見上げる。
そこには、真っ青な空の中、悠々と翔ぶ鳥が一羽。
自由を生きるそれに、嫉妬に似たものを覚えてしまう。
完全に自由な世界で生きていけるのかと、言われてしまうと、即答できない。
自分の意思など無かったから。
周囲に促されるままに、いきてきたから。
今更、自由に思うままに生きろと言われても、そんなことはできない。
自由を生きる彼らを、綺麗だと、美しいと思っても、その生き方を羨むなど。
烏滸がましいにも程がある。
それでも、自由を求めてしまうのが性というものなのだろうか。
ビル群の立ち並ぶこの世界で、自由を求めることなど無理難題ではあるけれど。
自由を求めながら生きることを自らの運命だと、そう思いながら。
今日もまた、この汚い世界で生きていくのだ。