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猫耳さんの放浪記  作者: ゆうきノ助
8/8

赴くままに

村を後にし、森を抜けて、草原を三人で歩いています。

途中、リオデの奢りで宿屋に泊まらせてもらいました。

すごく感謝しています。

さて、その翌日のこと─

「あの、リオデさん」

「なんだ?」

「その、ホロウスまであとどれくらいですか?」

「うーん、頑張れば今日中に着けるんじゃないか」

(あ、曖昧だなあ…)

そう思いつつも、素直についていくしかありません。

リーリエの方はと言うと、私と一緒に手を繋ぎながら黙りこくっています。

「そうだ、お前たちに見てもらいたいものがあるんだが、ちょっといいか?」

「?はい、大丈夫です」

リオデに誘わがれるままついて行くと、やがて道が坂道になってきました。

「ちょっとキツイからな。気をつけろよ」

「は、はい」

「ねえゆかちゃん」

「リーリエ?どうしたの」

「…疲れちゃった。おんぶして」

「もう、しょうがないな」

リーリエをおんぶすると、対してキツくなかった坂道が急にしんどくなってきました。

「ふう…ふう…」

「おい、大丈夫か?」

「大…丈夫です。私のことは気にしないでください」

気にかけてくれるリオデに感謝しながら答えました。

「あとちょっとだから、もう少し頑張れよ」

「ゆかちゃん頑張れ♪」

「はいい……」



登り始めてもうどれくらい経ったのか分からなくなってきた頃、

「よし、ついたぞ」

リオデが言いました。

「つき…ましたかあ?」

「ありがとう、ゆかちゃん」

「うん…」

疲れ切り、肩で息をしていた私はしばらくまともな返事が出来ませんでした。

疲れがだいぶ癒えてきた頃、

「ゆかちゃんすごいよ!見てみて!」

リーリエがやけに私の腕を引っ張ってきます。

リーリエが指さす方向を見て私も驚きの声を上げました。

「わあ…!」

目線の先に、これぞ街と言わんばかりの無数の家々、更にその中に目を引く巨大な建物が二つ見えました。

「あの、リオデさん、あれってもしかして…」

「俺たちが目指す街、ホロウスだ」

目指している場所がようやく、見えました。

「あの大きい建物、何でしょうか」

「左に見えるのはホロウスの大聖堂、右に見えるのはフィーデオス魔法学園だな」

リオデが説明をしてくれました。

「はええ、凄いですね」

「まあな。それより、目的地はすぐそこだ。行くぞ」

「はい。リーリエ、行くよ。…リーリエ?」

リーリエの方を見ると、彼女はなぜか街の方を呆然と眺めていました。

私には、魔法学園の方を眺めているように見えました。

「あ、ごめんゆかちゃん。いまいく…」

少し違和感を覚えながらも、その場を後にすることにしました。



「あの、リオデさん」

「どうした」

「その、今更聞くのもおかしいと思うんですけど」

「おう、なんだ」

「リオデさんがホロウスに行く目的ってなんですか?その、何となく聞いてみたくて」

「………」

(ちょっと失礼なこと聞いちゃったかも…?!どうしよう)

すると、

「俺のダチに会いにいくためさ。もう久しく会ってないダチにな」

「ダチ…ですか?」

「ああ。実は、俺はさっき言った魔法学園に通っててな。その時の同級生なんだ」

「つまり、その同級生にこれから会いに行くんですね?」

「まあ、そんなところだ」

安心感と共に、リオデがあの学園に通っていたという事実に驚きもありました。

「あいつには久しぶりに会うからな…。元気にしてればいいんだが」

彼の様子を見るに、そのダチに会うのをかなり楽しみにしているようでした。

「おっと、もう街についたようだ」

「ホロウスについちゃいましたね…リオデさんともここでお別れ…」

「お別れだと?ちょっと待て。ゆかり、まさかお前、ここで俺が"じゃあな"と言って二人を置き去りにしていくと思ってたのか」

「えっと、あっ、はい」

正直に答えました。

するとリオデが真剣な面持ちで言いました。

「まず、俺のダチに会わせてくれないか。お前たち二人のことは、それから考えよう」


リオデの後につきながら、街の住宅街にあたるであろう場所を歩いています。

この場所に、リオデのダチの家があるそうです。

夕暮れが近いのか、家々の隙間からオレンジ色の光が漏れ出ていました。

「確か、ここら辺だったはず…」

家を見て回りながら、ダチの家を探しているようでした。

やがて、

「あった。この家のはずだ」

一軒の家の前に立ち止まりました。

これといって特徴がない、まあ普通、と言う感じの家でした。

リオデがそのドアを手で軽くノックして言いました。

「来たぞ、ナツメ。ドアを開けてくれ」

次の瞬間、ドアがスっと開き、中から誰か出てきました。

するといきなり、

「ちょっとリオデ!あんた私と一緒に学園を卒業した後、早く地元に帰らなきゃいけないんだとかほざいて、勝手に帰ったくせに、今度はそっちからいきなり連絡してきて"俺の頼みを聞いて欲しい"って…。ちょっと都合良すぎるんじゃない?」

出てきて早々、リオデを説教するように喋り立てる声。

見ると、リオデを睨みつけながら腕組みをしている謎の女の人が、そこにいたのでした。


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