第伍拾伍話 防衛
4月26日
「いいか、奴らは隠れられない。俺たちは隠れられる。これをうまく使うんだ。」
「はい。」
「では散開!!」
「はい。」
大和民族解放戦線に吸収された東方会などの元右翼団体によりつくられた反ソ連組織のなかでも幹部のほうだった永島恭一率いる重武装した小隊が山林の中で散開した。彼らがいるのは静岡県東部山梨県との県境当たり。ソ連軍の基地周辺でソ連軍が侵攻する時通ると思われる道でソ連軍を待ち伏せしていた。
「奴らは車両だから隠れられない。だけど俺たちは隠れられる。」
「ソ連軍確認。基地から出てきた模様。戦車27両。装甲車36両。歩兵・・・数えきれません。」
確実に反抗勢力を抑えるために基地からは全部隊が出動したらしい。
「俺達だけじゃ無理だな。ここから一番近くで待機している部隊はどれくらいだ?」
「3個小隊ほどです。」
「呼んで来い。」
「はっ!!」
一人当たりの装備はAN-94が1丁に7.62mm弾が30発セットのマガジン5個。RPG-7かRPG-29等の対戦車ロケットの本体が一つ。弾頭は3つ。その他に水筒、携帯食料。医療セット等。ヘルメット。小隊長には防弾チョッキに防弾ゴーグルが付いている。他のゲリラに比べれば高級な装備だ。
2~3分ぐらいしてから呼んできた部隊が来た。
「何処にいる。」
「あそこだ。」
そう言って永島恭一は敵の方向を指す。その大部隊を見て他の小隊長は
「俺達としては戦車とか装甲車はあまり壊したくないんだが、どうすれば?」
「歩兵に攻撃を仕掛ける。奴らは歩兵を探そうと必死になる。ここで一両ぐらいは車両を攻撃して破壊させる。そうすれば俺達が対戦車ミサイルを持っていると気づく。俺達を探すために車両に乗っている奴は一人ぐらい顔を出させて確認させようとする。それがチャンスだ。歩兵がいなければこの山林では俺たちに気付くことはないだろう。」
「成程。」
「どうしようもなかったら攻撃していい。」
「解った。」
「では山林に散開。とにかく最初は歩兵の処理をするんだ」
“ブルルルル”とキャタピラの音がする。戦車の動く音。その周りを“カサカサ”と音を立てるのは歩兵。部隊が完全に山林に入ったことを確認すると
「攻撃開始。」
の一言により歩兵めがけて一気に十字砲火をかける。草むらに隠れて攻撃をするもの。木の上から攻撃をするもの、急な攻撃に焦り歩兵部隊は混乱した。戦車の砲は角度的に撃てないところに潜伏しているため機関銃による攻撃しか対処法がなかった。問題は歩兵戦闘車だったが周りを囲っている歩兵やその他車両に流れ弾が来る可能性があり攻撃ができない状態でいた。さすがに火器管制装置に赤外線カメラが搭載されてない。
「装甲車めがけて発射。」
の一言により一発だけRPG-7が発射された。
「装甲車被弾。炎上。」
ロシア語でそう言った。まあロシア語を習った日本人以外は分かるはずがない。
「奴らは対戦車ミサイルを持っている。気をつけろ。歩兵部隊は壊滅。戦車から頭出して探せ!!」
「はい。」
「やつら、ついに顔出したぜ。チャンスだ。攻撃開始。」
更に一言。この声で木の上から攻撃していた兵が戦車に飛び乗りガンナーに攻撃。内部に乗り込み車内の兵を殺した。これによりソ連軍はたくさんの車両を奪われ指揮系統はグタグタになり、結果的に降伏。ソ連側の死傷者は百名を越したが、こちら側は数十名だった。これにより山梨県でのソ連軍の優位さはなくなり結果的には山梨から静岡に侵攻したソ連軍は返り討ちにあい、装備を奪われ山梨の反ソ連組織を吸収。そして山梨全土を占領されてしまった。
そのころ―――長野
面積が広い割には配備されている軍隊が少ないと吸収した反ソ連武装組織から聞いたので長野県では渡慎が率いる部隊による奇襲により奪還されていた。その後数々の反ソ連武装組織を吸収していった。愛知県では元々工業地帯なので工場を守るため配備されている軍隊が多い。そのため静岡県で義勇兵を集めなどをして戦力増強を図った。そして、万を超える兵隊と共に愛知から進行する部隊よりも早く愛知に侵攻し豊川基地を強襲。武器の強奪に成功した。しかし、基地の規模が御殿場に次ぎ大きく出て死者は1000名を超え山梨の死傷者を超えた。それでも現地調達の兵(義勇兵、もしくは反ソ連武装組織)により数を兼ね備えて工場を奪い、愛知を奪還した。これによりソ連軍が計画していた侵攻作戦はもろとも崩れた。




