第伍拾肆話 開戦
――――清水港
「よし、行け。・・・・次・・・貴様!!これは何だ?こっちまで来い。」
「話せ!!くそっ!!」
KGBによる輸送船の検閲を受けている。こちらの輸送船は麻薬が入っていたようだ。
次は紅蓮崎たちの番。
「次だ。・・・これはなんだ?」
「こちら宛で農薬です。・・・これは農地を耕す機械です。」
「・・・この宛先は農家か?」
「ならば調べてきてください。」
「いいだろう。」
――――40分後
「お前行ってよし。」
「どうも。」
「何とかばれずに済みましたね。」
「そうだな。KGBがこの機械は本当に田を耕す機械か?とか、本当に農薬か?とか聞かれなくて済んだぜ。しかも、これだけの大量の機械に100人余りの人間。本当にばれなくて済んでよかったぜ。」
「まあ、広大な土地だからですよ。ついでに、また琉球から出稼ぎに来る人がいるかもしれないっておまけをつけといたから、もう一度兵を呼ぶ時は何とかなるでしょう。」
「どうかな?」
15両のトラックが機械と肥料(火薬)、兵員、物資を乗せて瀬名へと向かっている。親戚に連絡入れたときに許可が下りたらしい。理由としては俺ももう長くないからやりたいほうだいやれだそうだ。
「おーす。おっさん元気にしてたか?」
紅蓮崎は到着してすぐさ間に親戚に話しかけた。
「本当に来るとは・・・よくKGBにばれなかったな。」
「色々とごまかしたんでね。・・・それはそうとあれやっててくれた?」
「まだ完成してないけど、小作人の一部を使って穴掘らせてるよ。七割は完成してるけど。」
「よかった。半分以上完成してなかったらこれだけの機械どこにしまえばいいかわからなかったぜ。」
紅蓮崎は連絡を取った時に親戚に頼みこんであったことがあった。それは穴を掘り地下に広大な空間を作ってくれと。
「えーと、初めまして。海の上司の藤浪翔也です。あなたが紅蓮崎昇さん?」
「いかにも、わしがその昇だが。」
「本当にご協力感謝します。」
「いいっての。どうせわしも人生の半分を終わった。これだけの土地があっても、ソ連侵攻で家族皆失ってしまった。好きに使ってくれ。」
そういうと、自分の家に戻ってしまった。
「他の兵たちはどうします?」
トラックから降りてきたのは陸専門の渡慎と相良亜久斗だった。
「そうだな、穴掘っている農民を休めて代わってやれ。」
「はい。・・・おまえら、聞こえるか?農民に代わって穴掘れ。これは命令だぞ~」
そう言った後紅蓮崎、藤浪とともに二人は他の兵たちとともに瀬名の山一帯の穴掘りを始めた。穴を掘るのは、地下に武器作成工場と武器倉庫、兵と宿舎を作るためである。外に作ってしまったらKGBやソ連軍にばれやすい。ばれたら大変なことだ。
――――――二週間後
だいたいの地下は完成し兵たちは農民の手伝いをしていた。そして、偽装増援部隊1000名(農地開拓・出稼ぎなどの理由。)と、支援物資が届いた。
「製造状況はどうなっている!!」
藤浪大佐の一言により武器を製造していた兵が
「5.56mm弾2000発、7.62mm弾1800発、RPG-7の弾120発、手榴弾130個、焼夷手榴弾160個、自動小銃は肥料と偽装させた火薬の袋の中に隠して入れておいたのを含め1100丁です。アバカン600丁、18式小銃400丁、手製AK-47が100丁です。RPG-7は30個が完成しています。」
「まだまだだな。1100名でこれだけの武器では在日ソ連軍(占領軍)の本格的な戦争ができない。・・・それと、自作AK-47を持つ奴可哀想だな。」
「そうですね。400発に一回は弾詰まりしますから。」
現在計画されている作戦は先程の会話から読み取れるように在日ソ連軍の二番目に大きい基地の御殿場基地を襲撃することによって大量の武器と戦車などの重車両、未来兵器と思われる兵器の略奪、それと同時に付近の反ソ連勢力を吸収し軍事工場などを占拠、勢力が拡大したところでさらに基地を同時襲撃する。といった内容だ。日本はあっという間に首都が陥落したため東京より西では武器を持ったまま終戦になった部隊が主なので、反ソ連勢力が東京より西側に集中している。つまり、反ソ連勢力を吸収するには襲撃する地域は東京より西の地域になる。御殿場は静岡県なので東京より西側。九州や四国に比べれば少ないものの、戦車や榴弾砲まで装備した武装勢力が数多くある。静岡県内のその武装勢力を吸収しようというのが目的でもある。
兵や、武器、物資の偽装輸送の繰り返しで半年の月日がたった。瀬名の山一帯は地下がほぼ要塞化され、地元の武装組織吸収し傘下に入れることで戦闘兵は6千人にも上る数になっていた。またそれに伴い小銃の数、対戦車ロケットや、弾薬の数も増えていった。
そして、大和民族解放戦線による反撃は1ヶ月後の1951年4月に始まるのであった。
1951年4月24日 夜11時
――――――御殿場
「こちら、異常なし。」
「こちらもだ。問題なし。」
「門の前に門番係のソ連兵が二名か。手薄だな。」
「そのようだな。人数の確認をするぞ。御殿場基地夜襲部隊600名いるか?」
今作戦の指揮官の紅蓮崎は御殿場基地から数百メートル離れた森で点呼をとっていた。御殿場野襲部隊600名の確認である。その他にも、神奈川のソ連の軍事工場襲撃部隊や、かつて陸軍飛行隊が使っていて現在ソ連の空軍が使っている浜松基地襲撃部隊などが作られている。軍事工場襲撃や飛行場襲撃、基地襲撃は一日でやれる場所(静岡や神奈川など)は4月24日の夜11時に決行する予定だ。その後静岡県と神奈川を併合させ中部を開放したのちに日本列島のソ連の根拠地の東京を包囲し日本を解放する。これは日本解放作戦の前哨戦である。
「いいか、銃は特に使わないように。使っていいのはナイフ、日本刀、もしくは腕につけた携帯用のボウガンだ。銃は最終手段と考えよ。いいな。」
「はい。」
「では、二手に分かれてあの二名の兵士を殺した後、入り込むぞ。」
紅蓮崎がそう言うと、600名の兵士は300名ずつ分かれて、暗闇に溶け込みながら森を歩いて行った。
ガチャ
「おい、何か物音がしなかったか?」
「いや、聞こえなかったが?」
紅蓮崎たちが歩く音がわずかにソ連兵に聞こえたようだ。しかし、これは危険であり、チャンスだったのだ。紅蓮崎や、亜久斗、慎はこのチャンスを逃さず首に一太刀浴びせ殺した。
「侵入経路確保完了。あの照明が付いている見張り台の兵士を殺してこい。」
「はっ!!」
一人の兵士は見張り台に上り後ろからソ連兵を刺殺した。
「よくやった。次はテントと宿舎で寝ている兵たちだ。」
「了解。」
ガサゴソ
「こいつら黒人だぜ。どうする?」
占領地から徴兵されたのだろう。黒人ばかりいる宿舎だった。
「ロシア人じゃないしな・・・」
「でも武器は持っているぜ。」
「じゃあ一人一殺で。」
「了解」
ブシャアア グシャ
果てしなく鈍く、何かが飛び散る音が聞こえてくる。気が付いたらテントや宿舎は血で染まっていた。
――――40分後
「制圧完了です。」
「御苦労。こちらでの死傷者は?」
「ゼロです。」
「それはよかった。捕獲した兵器は?」
「この時代に作られていないはずのAN-94を600丁。7.62mm弾数千発。ドラグノフ狙撃銃70丁、RPK軽機関銃200丁、RPG-29が300セット、105mmサーモバリック弾頭と思われる弾頭が900発、T-80と思われる方の戦車が15両、T-95と思われる戦車が9両、たぶん、BMP-3だと思いますが26両。その他車両がちょろちょろと。Ka-50らしきヘリが16機とMi-28らしきヘリが25機コードネームTが2両ありました。」
「近代化しすぎだな。1950年代とは思えないぜ。」
「やはり未来からの干渉が・・・?」
「たぶんな。しかし、これではっきりしたぜ。コードネームTは大量生産できない。」
「なぜ?」
「数的に見てもT-95ですら9両あるのに2両しかないだろう。しかもこれだけの大規模な基地に1両とは・・・。でもこれだけとれば、戦力UPだぜ。周辺の反ソ連組織に呼びかけをしろ。大和民族解放戦線の隷下になれと。その方がいい武器が使えるとな。」
「はっ!!」
同時に行われた浜松基地襲撃作戦と神奈川軍事工場襲撃作戦、その他地方の警察組織襲撃作戦も成功し、数々の反ソ連組織が合流し4月25日神奈川と静岡県は独立を表明。それに少し遅れて愛知、長野、山梨、岐阜駐在のソ連軍が反ソ連軍駆逐のため神奈川、静岡に軍事進行作戦が計画された。