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先程まで騒いでいたのが嘘のように部屋は静まり返っていた。
ぎぎぎと音が出そうな動きで振り向けば、穏やかな笑顔で佇む侑也の姿があった。
「…おかえり」
「「「…おかえりなさい」」」
それぞれがぎこちなく出迎えると、見た目通り爽やかにただいまと返事が返ってきた。
侑也は手に大きな紙袋と鞄を持ったまま部屋の中央へと入っていき、辺りを見回す。
相変わらず表情は変わらないが、それがかえって怖さを増している…。
「…なーんか色々とあったみたいだねえ。」
俺の方を見て困ったような笑顔を向けてきた。
「…色々あったよ…」
「ふふ。崚、お疲れ様。」
そこまで言うと侑也は3人に向き直り、さて!と声を1つ大きくし、
「俺は今、すっごく怒ってるよー!」
めっちゃくちゃいい笑顔でそう告げた。
♢♢♢♢♢
「ゔぅ……ゆっきーめっちゃ怖かった…」
目に涙をためて体育座りをする陽は、よほど怖かったのかプルプル震えている。
3人が何をしようとしていたか気づいた今は少し可哀想に思いもするが、あの惨状を知っている為怒られても仕方ないと思う。
懲りずにまた同じ事されても困るし…。
湊も昴も例に漏れず怒られて、それぞれしょんぼりと大人しく座っている。
ちなみにソファは汚れは何とか落としたものの(頑張ったが染みが残った)未だに少し湿っているため座ることが出来ず、全員座っているのはラグのなくなったフローリングの上にだ。
侑也はというと、3人をめっちゃくちゃいい笑顔で叱りつけたあとマネージャーに連絡するからとそのまま部屋を出たっきりだ。
…この3人にはマネージャーにも怒られる未来が待っているな…。
「…なあ、こんなことになったのって今日が16日だから?」
どんよりとした空気を変えようと、ふと気になったことを聞いてみた。
未だにしょんぼりとした表情のまま陽が頷く。
「…うん。俺たち3人いつも迷惑かけてるから…ゆっきーに何かしてあげたくって…。」
「…ゆき君喜ぶかと思って早起きしたんだ…。」
「まあ…大失敗しちまった訳だけど…。」
慣れないことはするもんじゃねえな、と昴が大きく溜息をついた。
結果は確かに悲惨だが、その気持ち自体は悪いことじゃない。
そう思った俺は立ち上がり台所へと向かうと冷蔵庫をあけた。
「…どしたの?」
不思議そうに問う陽は釣られて立ち上がった。
「なにかしてあげたいんだろ?…まだ間に合うよ」
そう言う俺を、3人は不思議そうな顔で見ていた。