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「………………っ。」
「………わかるよ。」
「……うん、わかる。」
「……崚、ごめんな?」
リビングの惨劇を目の当たりにし、俺は思わず言葉を無くした。
本来であれば青色を主体としたセンスのいいカラーコーディネートで作られたリビングルームの筈が、青色のソファには潰れたケーキの残骸や何かわからない赤い液体のシミ。落ち着いた暗めの黄色のカーテンは無惨に破れて床に落ちており、白い壁は緑や黄色、青など様々な色の液体が混ざりあって付着していて毒々しい雰囲気を醸し出している…。
そして床一面に広がる…、
「………この雪みたいなのって…なに?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……おい、あそこに落ちてるの…消化器か?」
3人が黙り込んで答えない為、視界に入ったものを尋ねた。
尋ねた通りの物だとすると…この白い雪みたいなものは消化剤だと思うけど……いやいや、そんなまさかな……。
……俺が寝てる間に火事でもあったのか?
…………俺、死にかけてたのかな……?
「ほんっっっとにごめんーーーーーー!!!」
現実逃避で遠い目をしていると半泣きの陽に抱きつかれた。というかこいつ…泣いてる!
「このままだとゆっきーに俺ら殺される…!」
「……瀕死くらいで侑也のこと止めてやるよ。」
「そんなこと言わないで!!俺らメンバーでしょ!?つまり家族みたいなもんでしょ!?」
ね?と瞳を潤ませて見つめられても…これは、残る1人の同居人━━━━━━━━、馬渕 侑也の怒りを買うことは間違いない。うん、確実に。
というよりもまず、俺を起こして助けを求めるよりもだ
「何しようとしてたかは知らないけど、怒られたくないなら片付けろよ。」
この異様な部屋と臭いになれてきた俺は、唯一汚れず無事な部屋の片隅に立ち腕を組んだ。
「…フンっ。俺に出来る訳ねーだろ。」
「…昴、お前は侑也に絞められろ。」
「わーーーー!!待って待って!」
「ばるくんも陽も俺も、頑張って片付けようとしたんだよ…?」
「……これで?」
訝しむような視線を向ければ、ブンブンと音がしそうなほど陽と湊は首を縦に振って肯定した。昴はというと気まずそうに視線を逸らし頬をかいている。
普段からやんちゃなくそg…高校生の2人と、御曹司な昴は確かに掃除とは無縁そうだけど……それにしてもこれはわざと汚したとしか思えない。酷すぎる。
ちらりと視線を壁掛け時計に向け……だめだ…汚れてて時間がわからない……。
ポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
現在、朝の7時。
侑也の仕事が終わり戻ってくるのは、恐らく8時半。
あと、1時間半。この間になんとか片付けなければ…。