とあるアイドルたちの日常
━━━━━━━バンッ
「崚っ!!」
「崚くんっ」
「お願いっ!りょーちゃん!!助けてっ!」
勢いよく開け放たれたドアに続く声の騒々しさにふわふわの羽毛布団を頭まで被る。
夢と現実の狭間にいながらも、この声の主達に今付き合うとかなり面倒なことになると分かる。と、なれば夢の世界に舞い戻るのが最善だろう。
「起きてーー!!!!ほんとに!!お願いだからっ!!」
声と同時に布団を剥ぎ取られ、寝起きの俺━━━━雪下 崚
(ゆきした りょう)は体を震わせた。
「…さ、さむい…」
「りょうちゃん!」
「崚!寝てる場合じゃねえんだよ!!」
「崚くん!面倒なのは分かるけど…お願い…起きてっ!」
無理やり上体を起こされ揺さぶられる。
…や、やめて。…吐きそう。
「…わかったから…起きるから…やめて…」
そう言うと漸く揺れは収まった。
掴まれた肩が痛み、俺は肩をさすりながら傍にあったパーカーを羽織る。
「…で?なに?何やらかしたの?」
「…いや~。説明はー…難しい…かな?」
ねえ?とオレンジ色に近い茶髪のクソガk…いや、少年━━━野口 陽は頭を掻きながら明るい茶色の瞳の猫目を左右にキョロキョロとさせた。
陽に目を向けられた2人━━━アッシュグレーの短髪で長身の下槻 昴とダークブラウンの髪でタレ目が特徴的な野田 湊は、陽と同じように困ったように眉を下げ言葉もなくお互いを見やっている。
「…とにかく!一緒に来て!!んで、見て!」
その方が早い!と陽に腕を掴まれた俺は、半ばこけそうになりながらもベッドから降り部屋から連れ出されることとなった。
部屋を出て、しばらく廊下を歩く。
ここは俺たちが所属する芸能事務所が若手に提供している寮であり、俺やこの3人以外にも住んでいるがこの階には他に1人住んでいるだけである。
個人の部屋以外には、共有のトイレや風呂、キッチン、あとはリビングが各階にあり、寮生活とはいえなかなか広く快適な暮らしをさせてもらっている。
…のだが、今日のようなイレギュラーなことが起こると早く寮生活から抜け出したくなる…。
廊下を進みリビングへの扉が近付くと何とれ、。、わまーみたみも形容し難い臭いが鼻を刺す。
あまりの臭いに思わず鼻を抑え足を止めようとすると、後ろからガシッと肩を掴まれ無理やり押される形でリビングへと連行された。