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講習



「よし、訓練終わり!」

「……ありがとうございました」


へろへろの状態で礼をする。

疲れた。

でも、かなり『闘気』の扱いが上達しただろう。


まだ息をするように、とはいかないが意識して直ぐには『闘気』を巡らせるようになった。


「うん、どう致しまして。で、だよ」


アリスが言葉を続ける。


「ハクさんの今の目的って夜烏隊の撃破だよね?」

「ああ」


アイツに勝てれば、俺は一段階強くなったと自覚出来るだろう。

その成長の実感を得る為に俺は頑張っているのだ。


「さて、ハクさん。今のハクさんには足りない物があります。何でしょう?」

「足りない物……?」


唐突なクイズに考える。

でも、やっぱり……


「戦闘能力か?」

「確かにそれも足りないかも知れないけど、このまま鍛えていけば解決出来るよね」

「……」


違うのか……


「じゃあヒント。一旦ハクさんの中で夜烏隊との戦闘を想像してみて」

「夜烏隊との戦闘……」


夜烏隊と戦闘になったら、とりあえず殴りに行くよな?

俺にはそれしか無いわけだし。

躱されても、奴のナイフとか気を付けてれば……勝てる?


難しいぞ、戦闘の想像なんて。

あんまり詳しい事を想像するのは簡単ではない。

相手の事も知らない訳だし。


…………ん?

ある違和感に気づく。

何か見逃してるような……


あ。


「察知能力?」

「せいかーい!」


俺は敵を見つける段階をすっ飛ばしていた。

相手は暗部だぞ。そもそも見つけるのが難しいだろ。

ローズの周辺というのが分かっても、周辺の何処だ? って話だし。


「ハクさんは『周辺感知』を持ってるよね?」

「ああ」

「だからあんまり遠くまでの気配とかは探れないから、そもそも敵を見つけられないと思う」


そうだよな。『周辺感知』のデメリットだ。

遠くの気配は探れない。


「……どうしよ」


もしかして、やってしまったか?

スキルの選択を誤ったかも……


「そんなハクさんにアドバイス!」

「?」


アドバイスでどうにかなるのか?


「ハクさんはスキルに少し囚われてるね。別に『気力操作』のスキルが無くても気力は扱えたでしょ? それと同じだよ」

「……気配を探れ、と?」

「それが出来たら万々歳だけど、『気配感知』系のスキルって補正が大きいんだよね。だからスキル無しでの再現はとっても難しいんだ」


気配なんて探ろうと思って探れたら苦労しない。

気力の時は、『気力』の知覚は出来たけど

そもそもスキルの補正があっても、「何となく分かる」だったし。


「じゃあどうするんだ?」

「教えて欲しい?」

「もちろん」


チラチラとわざとらしくこちらを気にするアリス。

えーと……


「いくらだ?」


アリス情報屋だったよな。

『闘滅流』のアドバイスは師範代としてやってくれたから料金は掛からないがこれは違う、という事だろう。

多分。


「あ、いやお金はいいよー。ただ、お願いを聞いて欲しくてね」

「お願い?」

「店番お願い!」


両手を合わせてお願いするアリス。

いや、お願いする立場はこっちなんだが……


それにそれ位は普通にする。お世話になってるし。


「それで良いんなら、全然するぞ」

「ありがとー! クランの会合があってね、店を外さなきゃいけないんだよ」

「そうなのか?」

「うん。クラメンも薄情でね、「どうせ客来ないんだから出席しろ!」とまで言われちゃって……まぁ、確かに会合はサボり気味だったけどさー……お客さんも殆ど来ないけどさー……」


そこまでいわなくてはも……と、小さい体が更に小さくなるアリス。地面にのの字を書いている。

怒られたんだな、というのが簡単に察せられる。

というか、会合って……もしかしてアリス偉いのか?


「でも今はハクさんという常連さんがいるもんね!」


ガバッと勢いよく立ち上がるアリス。

復活が早いようで何より。


「ふー……話を戻そうかな」

「頼む」


冷静になったようだ。


「簡単に言っちゃうと、知識からの予想なんだよね」

「知識からの予想?」

「うん」


アリスはこう続ける。


「スキルの補正無しに『気配感知』レベルの索敵は不可能なんだよ。少なくとも短時間では」

「そうだな」

「だから周りの観察を常にしておくんだよ。そうすれば、例え奇襲を仕掛けられてもある程度対応できるよ」


……凄い力技だな。

要は怪しい所があったら警戒しておく、という事だ。

それも全方位。


「ハクさんなら出来ると思うけどな。それに便利なスキルも持ってるでしょ?」

「……『見極めの眼』か?」

「そうそう」


確かに、見えないプレイヤーキラーを見つけだしたという実績もある。そう言えばスリ師を発見したのもこれのおかげだな。


「私はたまに斥候の役割もこなすんだけど、その時の位置取りとかを教えるよ」

「助かる」


当てもなく常に全方位を警戒なんて無理だしな。

あと絶対に挙動不審になる。

全身を隠した男が挙動不審、絶対に目立つ。




それから俺はアリスからレクチャーを受けた。

実際に斥候をやった事のあるアリスのレクチャーはかなり分かり易かった。


ストレージから出した白板とメガネを掛け教師、という感じの格好でレクチャーが始まった。


……身長のせいか、ままごと中の子供に見えるとか絶対に言ってはいけない。本人も楽しそうだから良いじゃないか。


話の内容自体はとても有用だった。


意識の隙間に出来る死角とか、

斥候をやる人の心理とか。


非常に実用的だ。


ま、話を聞いただけで全てマスター出来る訳もないし、地道に慣れていこう。メモもとったしな。


「さて、教えたい事は教えたし、店番は頼んだし、今日は終わりだね」

「ああ、ありがとう。あと聞きたいんだが、店番はいつやれば良いんだ?」

「んーちょっと待ってね」


懐から取り出したメモ帳? を確認するアリス。


「明後日の昼からだね」

「分かった。じゃあ昼前当たりに店を訪ねる」

「はーい」


よし、後はアリスから教わった事を磨くだけだな。

俺は決意を新たにしたのだった。





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[一言] 身に付けられたらすごそう
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