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夜烏隊



今、俺はライとメイと別れて雑貨屋の前にいる。

どこの雑貨屋かは言わなくても分かるだろう。

アリスが営む表雑貨屋だ。


ちょっと来てない内になんか、負のオーラが増えてる気がする。

まぁ今更なので、さほど躊躇もなくドアを開ける。


「いらっしゃーい。あ、ハクさん久しぶりー」

「おう。ちょっと最近いろいろあってな」


中に入るといつも通りカウンターにアリスがいた。

日本人形の髪を櫛で解いている。

だんだん慣れてきたな、この光景。


まぁ、それはそれとして、だ。


「今日は情報を買いに来た」

「おお! いいよいいよ! 何が買いたいの?」


アリスの目が爛々と輝く。

そんなに嬉しいのか?


「欲しい情報は幾つかあるんだが……一つ目は、勇者と関係のあるローズって女の事だ。無理矢理聞き出す気は無いから、言える範囲で買おう」


以前アリスは買った情報しか売らない、と言っていた事がある。それ故に俺も信頼している訳だが……正直ローズが自分の情報を売りにここまで来る筈がない。


だから、あまり期待していなかったんだが……


「あーハクさん知らなかったんだね。その情報は割と安いよ、2000Gだね」

「えっ」


安くないか?

もしかして皆知ってる情報とか?


「それでいい。ローズは何者なんだ?」

「この国の第二王女だよ」

「第二王女……」


偉そう偉そうと思っていたが本当に偉いとは。

てっきりそこら辺の金持ちの娘なのかと……

そんな奴と仲良しって何をやったんだよ勇者。


「補足だけどこの国って言うのは東西南北に存在する国境の街までだよ。そこから先は違う国だけど、この国の領土は結構あるね」


へー……国とかいう概念があったとは。


「ローズ第二王女はやんちゃな方でね。結構街の方にもお忍びで出て来て、バレたりとかしてるから知ってる人は知ってるんだ」


それが安さの理由か。

やんちゃって……まぁいい。

まだまだ買いたい情報はある。


「まだ幾つか買いたいんだが……ローズの護衛って何者だ?」


結局一番知りたいのはそれだ。

いきなり首に刃を向けられた相手。

俺はリベンジがしたいのだ。ならまずは相手のことから知るのが良いだろう。


「ローズの護衛……見たの?」

「いや見てはない、襲われた。ローズ様って言ってたからローズの身なりも良いし護衛だと思った。今となっては王女に護衛を付けるなんて当たり前だと思うけどな」

「また凄い事経験してるね……護衛ってどんな装備してたのか分かる?」

「……ナイフらしき刃しか見てないな。だが、金属が擦れるようや音はしなかったし鎧とかは着けていない筈だ」


完全に後ろをとられたからな。


「うん、分かったよ。それは10.000Gだね、大丈夫?」

「ああ、分かった」


それくらいなら払える。


「それは夜烏隊(よがらすたい)だね」

「夜烏隊?」

「王家直属の暗部だよ。一般的にはいない事にされてる部隊で、名前の通り後ろ暗い事とか担当してる」


なるほど……ローズにバレないように護衛って事なら一番適任な訳か。もう普通に護衛しろよ、騎士とか多分いるだろ。

おかげで暗殺されかけたじゃないか。


「他に何かある?」

「そうだな……あ」


まだあった。


「俺達プレイヤーって何で腹が減らないんだ?」

「あ、それは3000Gだよ」

「また安いな……」

「ギルドの方で総出で売った情報だからね。その分安くなってるよ」

「よし、買った」

「まいどありー」


ニコニコしながらアリスが答える。


「一時私達(プレイヤー)の間で話題になってね。何で腹が減らないんだ?ってね。それでギルド総出で調べたの。その結果判明したのが……」

「判明したのが?」

「私達は正確には普通の生物じゃ無いって事」

「は?」


普通の生物じゃない?

どういう事だ? 


「この情報源はある教会所属の司教様からでね。私達プレイヤーはこっちの中じゃ『創造神の加護』を受けた、一段階上の存在って見られてるみたい。だから死んでも生き返るし、お腹も減らないと」

「なるほどな」


こっちの人達には俺達プレイヤーはそう見られてるのか。


「もっとも、そう詳しく答えられたのは司教様だけだったし、一般の人は、「そういう物」って感じで見てるらしいけどね。いやー、これは調べるのが大変だったよー」

「司教ってそんな気軽に会えないだろうしな」

「そうそう」


俺は宗教関連は詳しく無いが、司教って結構上の方だった気がするし。


ん? ある疑念が湧いた。


「なぁ、俺ってどうなんだ?」

「どうしたの? ハクさん」


俺の商号権スキルの中には『悪魔契約者』がある。その効果には神からの祝福が受けられなくなる、という物が……


それをアリスに伝えると……


「本当だね……どうなるんだろう」

「下手したら死んだらキャラクターロストみたいな事に……」

「いやいや! 流石にそんな……無いよね?」

「…………」


無言の時間。

どちらも答えが、わからず話が止まる。

キャラクターロストの危険があるのに「試しに死んでくる」なんて出来ないし。


「あ、そうだ!」


アリスが閃いたように声をあげる。


「聞けばいいじゃん! 悪魔に」

「あ、なるほど」


それがあったか。

俺はウィジャ盤を取り出す。

そして呼び出す


「フェレス」

「はいはい、全く君と来たら全然呼び出さないよねぇ」


ウィジャ盤の上に小さなフェレスが浮かびあがる。

さっさと質問をすませる。


「フェレス。俺の『創造神の加護』はどうなってる?」

「はぁー……聞かないで欲しいねぇ」


ため息をつくフェレス。

その態度に少し冷や汗が流れる。

まさか本当に効果が無くなって……


「『創造神の加護』は特別なんだ。今の僕と君の契約じゃあ、そこまで無効化できないんだよ。ああ、全く忌々しい」

「じゃあ俺は?」

「今だに生き返るよ。というか、食事が必要ない時点で気付きなよ。はぁー……」

「「あ」」


本当だ。気付けたな。


「嫌な事思い出させないで欲しいねぇー」

「いや、その……すまん」


ふてくされたようにフワフワ浮かんでいるフェレス。

なんか悪い事をしてしまった。


「なら僕と更なる契約をっ」

「じゃあな」


ウィジャ盤を直ぐさましまう。

こいつに心配とか要らなかったな。

反省反省


「よ、容赦ないねハクさん」

「すぐに調子に乗るからなこいつは」


まぁ何はともあれ。疑問は解決だ。






皆様、良いお年を

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