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見直し


「よし」


今俺はラドと共に倒した猛進イノシシがいた広場に居る。

ライとメイとは先程別れたのだが、ちょっと大変だった。


ライについていきメイも働きに行こうとした所を止めたのだ。

メイは病み上がりの子供だ。


そんな直ぐ働く物ではない。

そう説得したのだが、今まで苦労させて来たんだからライの手伝いがしたいと言って聞かなかった。


まずは体力作りから始めるべきだとか、三十分くらいかけて説得した。


また倒れたら大変だからな。働く意欲があるのは良いが完全に回復してからにして貰いたい。


そうやって落ち着いたのは『三日間は安静に過ごす』という事だ。

本来なら、寝込んでいた年月から考えるともっと長く休んでもらいたいのだが、それ以上はメイが譲らなかった。


「さぁ、やるか」


とりあえず解決した問題はおいておき、俺のやるべき事をやる。


俺がここに来た理由、それは闘滅流の修練である。


あの劣等悪魔の戦いは反省すべき点が多い。

婆さんがいなければ勝てなかっただろうし。


まずは基本の型の見直しだ。

知らず知らずの内に雑になっていた『型』を一つ一つ確認し、修正していく。


『無常の構え』も丁寧にとる事を意識する。

スキルの説明以上にこの『構え』があるなしで『型』の効果が結構変わっているからな。

しっかり踏ん張って拳を放つ。


やっぱり重心を安定させるのは重要なのだ。


俺は集中し、修練を続けた。






「ん? もうこんな時間か」


修練に没頭していたら軽く一時間程経っていた。

だがそのおかげで、結構『型』を磨けたと思う。

この修練は良い感じだな。これからも時間があったらやっておこう。


じゃあ次だ。

次の修練は『蹴の型』だ。


さっきまでは、『撃の型』とその派生を集中的にやっていたからな。


それに『蹴の型』の難易度は『撃の型』と比べて高い。


蹴る、という性質上どちらかの足は必ず地から離さなければならない。

つまり体勢が崩れやすい。


そのせいで、今まで『蹴の型』をあまり使えなかったのだ。反射的に使った時は体がぶれる事が多かったし。


これをスムーズに使うには、

今まで以上に重心を安定させなければならない。

後は速く足を振り抜き、素早く戻すという事を意識してやってみるか。


「ふっ」


あ、駄目だ。

体がぶれた。

蹴りを速く戻すのを意識し過ぎて体が乱れてしまった。


まずはゆっくり丁寧に、を意識して練習するか。

慌てずに磨いていこう。



●●●



「少しは形になったか?」


そう思えるまで二時間程掛かった。

いや、本当に難しかった。


丁寧に動けば遅くなってしまい威力が無く、

速く動けば体がぶれて隙を晒す。


あっちを立てればこっちが立たず、といった状態だったのだ。

それを少しずつ修正していき、ある程度の速さが出せるようになった。


ここらへんで、実戦で使ってみてもいいだろう。

というかそうしないと成長しない気がする。


ここには老師みたいな組み手や試合の相手もいないし。

ゴブリン辺りを探しに行くか。



●●●



「ギャギャ!」


少し懐かしいゴブリンの鳴き声が聞こえた。

その声の主は少し前から気配を把握している。

『気配感知』も少しは育ったようだな、前よりも広く感知出来ている気がする。


そして、ほぼ忘れていたスキル『忍び足』を発動。

足音が少し減る。完全に消える訳じゃないから安心は出来ないが。


そして、視認出来る距離になったら息を潜め敵戦力の確認。


ふむ。前回は弓持ちが居たが今回はいないな。

ゴブリンの構成は盾と剣持ちが一匹、

槍持ちが一匹と、両手で持つ大剣持ちが一匹の計三匹だ。


前衛ばかりでバランスは悪いが、その代わり力で無理矢理押し切る力はあるだろう。


作戦としては、唯一中距離にも対応できる槍から狙うか。

中距離に対応、という点では大剣もだろうが大剣はその重量故にそう簡単に振り回せないだろう。


槍は間合いの内側に入ってしまえばかなり戦い易いだろうし。

気付かれていない内での最初の攻撃は槍持ちゴブリンから行くか。


「ふー……よし」


槍持ちゴブリンが俺がいる方向に背を向けた瞬間に『構え』をとり飛び出す。

『闘気』も込めた全力疾走で跳ねるように走る。


「ギギャ!?」


槍持ちゴブリンが俺の走る音に気付き、慌てて振り返り槍を構えようとするが、俺の方が速い。


槍の間合いの中に踏みこむ。

まずは槍を持つ手を『撃の型』で殴り飛ばし、槍の動きを封じる。生じた隙を逃さず『撃の型 連』に繋げ、完全に仕留める為に『蹴の型』で回し蹴りを叩き込む。


ゴブリンが吹き飛ぶ。手応えで分かる、仕留めた。

『気配感知』に反応があり、後ろに下がる。


下がった瞬間に、元いた場所に大剣が叩きつけられた。

そのまま勢いを殺さず数歩下がる。


完全に気付かれたが、それは当然の反応だ。


ゴブリン二匹と対峙して、少しの間硬直状態。

その間に考える。


今の攻防は良かった。

何もさせずに倒し切れた。だが、やはり最後の『蹴の型』が鬼門だな。


最初よりは改善されたが、多少の体のぶれがおきた。

地面の状態のせいか、相手に攻撃を打ち込む流れの中で行ったせいか。

改善点ありだな。


逆に良かった点で言うと、戦闘中でも『気配感知』を気にする事が出来た点か。

近寄る気配に反応出来た。

それは戦闘中に余裕が出来たからだろう。


もっと『型』を自然に。

息をするように行えれば更に余裕は生まれる。

そうすれば、あの劣等悪魔の時のような事態になることも減る。


ライとメイはもう俺の家族になったんだ。

例えそれが形式だけでも、言葉だけでも、あんな事態になりたくないと思うのは当然だろう。


ゴブリンくらい簡単に倒せないとな。

俺は硬直を破り、二匹のゴブリンに向かって駆けだした。







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