義兄妹
今回ちょっと短いです。
盛大に勘違いしているライに丁寧に説明する、この入れ墨の意味を。
「そ、そうだったのか……」
「……良かったです」
ホッとしたように息を吐く双子。
しっかりしてそうなメイも俺の事を呪いに掛かっていると思っていたようだ。
まぁ、メイにあった痣も黒かったし、勘違いも仕方ないか?
孤児である二人は、一般的な知識がところ所抜けているかも知れない。
この入れ墨の事も、その抜けていた一般知識なんだろう。
『入れ墨の入った人には近付いてはいけない』のような親からの注意が無いせいかもしれない。
これを機に言っておこう。
「この入れ墨が入っている人は悪い奴だからな。近づいてはいけないぞ」
「じゃあ、兄ちゃんは悪い奴なのか?」
「………」
しまった。何も言えないぞ、自分の事を悪人じゃないとは言えない。いや悪人では無いのだが、それを自分で言うのは説得力が無いだろう。
「そんな訳無いよなっ! だってメイを治してくれたし」
「ええそうですよ、兄さん。悪い人は無償で治療してくれたりしません。打算ありなら分かりませんが……」
「そんな様子に見えるか?」
「「見えない(ません)」」
よかった、無事軌道修正出来た。
薬はなかなかの出費ではあったが、さっき言ったように取り立てる気は全くないし。
「話を戻すが、ここを使わせて貰ってもいいか?」
「勿論! いいよなっ!」
「はい。全く問題ありませんよ。そもそも私たちも正式にここに住んでいる訳では無いですし」
本来の目的だった場所を確保した。
やっと、目的達成だ。長かった。
「ならさ! 兄ちゃんはここに戻ってくるんだよな!」
「ん? ああ、そういう事になるな」
この街に戻ってくる時はそうなるだろう。
ずっとモンスターがいるフィールドにいるのは疲れるだろうし。
「なら家族だな!」
「え?」
「え? ってそうだろ? おんなじ所に住んでいたら家族だ!っておじさんが言ってた」
「以前住んでいた所では、そういう物だと教わりました。と言っても実際にそうなるのは始めてですが……」
なんか、独特だな。
孤児とかスラムの人達は横の繋がりが大事何だろうが、いきなり家族か……ちょっと面食らう。
それくらい助け合えって事なんだろうが……
「では、私は今後はハク兄さん……ハク兄と呼ぶ事にしますか。兄さんはライ兄です」
「じゃあ俺はハク兄で、メイは……そのままかな?」
「大丈夫ですよ」
着々と呼び名が決まっていく。
その双子の目は爛々としている。
この状況で異議を唱えるのは無理だな、それにそこまで嫌な気もしない。
「俺はライ、メイと呼べばいいのか?」
「うん!」
「はい!」
う、笑顔が眩しい……
こうして、俺に小さな双子の義兄妹が出来た。
『麒麟の落とし子』の弟妹に『大罪人の息子』の兄。
字面がやばいな。




