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居座るのは……

活動報告でも報告しましたが、月間一位となりました。

読んで下さってありがとうございます!



強くなったゴブリンを倒した後、俺はある場所を探していた。

本来なら別に探すような物でも無いのだが、俺の場合は必要な物。


それは休憩出来る場所だ。

俺は一番近くの拠点が使えず、非常に面倒なことになっている、だから少しでも休憩出来る場所を探しているのだ。


勿論、城壁も結界もないので安全では無いのだが、敵が来ても直ぐに分かって戦いやすい場所。


ゆっくり小休憩出来る開けた場所でもあれば良いと思ったのだ。

それがあれば、闘滅流の修練も出来るし。


「お、あそこは……」


まだ遠目からだが、結構良さそうな場所が見えた。

木が少なく草が生い茂っている訳でもなさそうだ。


結構良い場所を見つけたか?

少し気分を高揚させながら、近づいていく。


近づけば近づくほど、詳しく見えてくる。

日の当たる広場の中心には大きな岩、そして寝転ぶと気持ちの良さそうな草。


これは大当たりを引いたか?

喜びかけたその時。

ある音が聞こえ始めた。


何かの……吐息か?

そしてその音は広場から聞こえてくる。


何か居るのか?

その可能性を考慮し、出来るだけ音を立てないように移動し始める。


そーっと木の陰から広場を覗く。

そこに居たのは……


「フシュー……フシュー……」


イノシシだった。勿論ただのイノシシでは無い。

高さが俺の胸ほどあり、全長は軽く四メートルはありそうだ。

つまりかなり大きい。


更に顔には牙が見え、攻撃力もありそうだ。


ゆっくりと寝息を立てている所を見るに、

恐らくここを根城にしてるのは奴だろう。

ここを使うのなら、奴を追い出さないといけない。


問題は勝てるかどうかだが……少し厳しいか?

自らの実力を冷静に判断してギリギリ勝てるかどうか、という感じだ。


幸いなのは、老師のように絶対勝てそうに無い気配はしない事だ。

『外法の契約』を使えば間違いなく勝てるだろうが、あの重い代償をまた払う気にはなれない。


「一旦引くか」


今、勢いで挑む相手ではなさそうだ。

そう思い、踵を返した所で。

 

ポーンという音が聞こえる。この音は聞いた事がある、メールだ。

えっと……差出人は……ラドからか?


爆発靴の練習をしていた時に知り合ったプレイヤーの吸血鬼だ。

俺と同じランダムスキルプリセットで失敗した仲間だな。


フレンドになってから交流がゼロだったから少し忘れていた。


『ハク。今イノシシのいる広場の近くにいるだろ? もしあのイノシシを倒そうと思ってるんなら返事をくれ』 


何?

まさか近くにいるのか?

そんな気配は感じないが……


まぁ、ラドとは一応フレンドだし、そこまで警戒は要らないか?

取り敢えず返事をするか。勿論イノシシは倒したいと思っている。

その旨をメールにしてラドに送ると、直ぐに返事がきた。


『分かった。なら合流しよう。今から目印を送るからそこで待っててくれ』


目印か。

目印というにはかなり分かり易いんだろうが……

二分ほど待っていると。


「キィ!」


鳴き声が聞こえてくる。その方向を見るとそこに居たのは蝙蝠だった。この昼間に蝙蝠とは……コイツが目印か?


「お前が目印なのか?」

「キィ!」


頷くように羽ばたく蝙蝠。あっているようだ。

そしてそのまま何処かに飛んでいく蝙蝠。


ついてこいという事か。

俺は蝙蝠を見失わないように気をつけながら、追いかけていった


●●●


蝙蝠に付いていき、着いたのは洞窟。

中は薄暗く、見えにくい。


蝙蝠はその洞窟の中に入っていく。

ここで引き返す訳にも行かないので、ゆっくりと足下に気をつけて進む。


そうして少し進み、目が慣れてきた頃。


「よっ、久しぶりだな! ハク」


ラドの声が聞こえた。声の方向には人影がうっすらと見える。


「……おう」

「ん? ああ、悪い。灯りをつけるのを忘れてた」


人影が少し動き、その後に洞窟が照らされる。

そこに居たのはフードを被っていないラドの姿。何気にしっかり見たのは始めてだな。少し色白で、整った顔をしている。そして特徴的なのは赤い眼だ。


「よく暗闇で動けるな」

「吸血鬼って夜の生き物だからな。『暗視』のスキルをもってんだ」


それもそうか。

吸血鬼って夜行性だろうし。


「便利だな」

「いやぁ……前話したように昼間の行動がネックだな。お前こそ、結構活躍してるらしいじゃねぇか」

「いや、俺の場合は活躍では無く報復だな」

「……………」


微妙な顔をするラド。内容が穏やかではないからな。

まぁ、それはおいておき。本題に入る。


「で、何で呼び出したんだ?」

「ああ、そうだったそうだった。ハク、俺と一緒にあのイノシシを倒さないか?」

「それは良いが……どうして倒したいんだ?」


イノシシを倒すのは俺は構わない。『見極めの眼』でもラドからは敵意は見えないから何かの企みという事も無いだろう。

だけど、なぜラドがあのイノシシを倒したいのかが分からない。


別に、森の先に行くために絶対に通らないといけない場所では無い。

迂回しようと思えば簡単に出来るのだ。


「それはな、ハク。あの広場にあった大きな岩を見たか?」

「あの身の丈くらいある岩か?」

「ああ、それそれ。その岩に用があるんだよ」


岩に用がある?

ますます分からないぞ?


「実はその岩には『月光石』っていう鉱物が含まれていてな。その石があれば吸血鬼でも昼間の活動が少しだけ出来るようになるんだ」


そんな物があるのか。

確かに吸血鬼のラドにとっては絶対にほしい物だろう。

弱点が軽減されるんだから。


「そんなわけであそこを根城にしてる奴を倒したいんだ」

「分かった。俺もアイツは邪魔だし、倒したいしな」

「よっし! じゃあパーティーを組もう!」


その声からあまり経たずにパーティー申請が飛んでくる。

迷うことなく了承。

俺の始めてのパーティーが結成された。

視界の端にラドの名前が浮かぶ。


「じゃあ、互いの戦い方のすり合わせをするか?」


ラドに問いかける。

どちらもスキルプリセットのテーマくらいしか知らない。

ラドからは前に少しだけ聞いたけどな。


「おう、じゃあ俺が誘った訳だし、俺から言わせてもらうぜ。俺の攻撃手段は爪か牙の噛みつきだな。牙の方はあんまり使わないが」


そう言ってラドは片手の指を俺に見せてくる。

次の瞬間、ラドの指の爪が急激に伸びて鋭利な武器と化した。


「こんな風に体の一部を変化させられるんだ。慣れるまで結構掛かったぜ」


おお。凄いな。

なかなかファンタジーな物を見た。

だが、ラドの能力紹介はそれだけに留まらなかった。


「後は攻撃手段とは言えないが、『群体化』っていう体を蝙蝠に変身させる事が出来る。さっきハクに送ったのがそれだな。感覚もある程度共有できる」


ラドの体の一部が蝙蝠になった。

あれラドの体なんだな、使い魔とかだと思っていた。


「回避や偵察には使えるんだが……防御力がガタ落ちするからあんまり使える手じゃないな。指先一つ変化させるだけならそこまで魔力消費は無いけど、全身となると桁違いに消費が増えるし」

「だけど、いざという時の回避手段があるのはいいな」

「まぁ、その瞬間が訪れない事を祈るけどな。そんで後のスキルは『暗視』なんかの補助的な物や、今回は使えそうに無い『吸血』とかだな」


ラドはそんな感じか。『群体化』は体が小さくなる分日陰を通りやすくなるから、少しだけなら割と使い勝手が良いらしい。

さらに夜には強化されるだろうし、期待出来るな。

よし、今度は俺か。


「俺の攻撃手段は基本的に格闘だな。素手で戦う」

「素手……か?」

「ああ。ワイバーンも倒せたから大丈夫だぞ」


その言葉にちょっと驚いた顔をしたラドだが、実際にここに居る俺を見て納得したように頷いた。


「スキルは身体能力を上げる物がメインで補助が複数ある感じだな」

「ああ、問題無さそうだな。ここまでこれた時点で強いのは間違い無いだろうし」

「あ………」

「? どうしたんだ?」


一つスキルを思い出した。

正直……使いたく無いが、ラドには話しておいた方が良いだろう。


「いや、一つスキルを思い出してな。『外法の契約』っていうスキルだ」

「なんか毛色の違うスキル名だな」

「ああ。効果の方も全く毛色の違うスキルだ。ざっくり言うと代償を払った対価に力を得る効果だ。代償はかなり重いからなるべく使いたく無いな」

「……分かった。そのスキルは使わないで良いぞ」

「ありがとう」


これで互いに情報のすり合わせが済んだ。

これからあのイノシシを倒す算段をつけないとな。




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