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脱出と危険な作業


この、野次馬達の包囲網をどうしようか。

爆発靴のチャージが貯まればいいんだが、もう少しかかるな。

それまで持ちこたえないと。


「どっか行っちまえ!」


だったら退いてくれないかな?

この中で一番移動したいのは俺だろう。

間違いなく。


「この卑怯者が!」

「勇者様に謝れ!」


随分と好き勝手言ってくれる。目の前で勝っただろう。

素手で勝ったのに卑怯も何もあるか。

それだったら、武器を持つ勇者の方が卑怯だろ。


「おい! これは何の騒ぎだ!」


おお、警備兵らしき人達が来た。

これでこの騒ぎも終わるだろう。


「こいつは犯罪者だ! 早く捕まえろ!」

「そーだ! さっさと捕まえろよ!」


野次馬はまだ騒いでいる。

怪しい見た目だが、悪いことはしていない

つまり、捕まる理由がない。


何だが……


「お前が騒ぎの原因か!」


どうやら俺が連れて行かれそうだ。

『見極めの眼』が敵意を捉える。

冗談じゃ無い。


また捕まってたまるか。

どうにか逃げないと……


《チャージが完了しました》


待ちに待ったメッセージが来る。

すぐさま跳躍し、爆発靴を起動する。

屋根の上に跳び乗り、走り去る。


「まて!」


後ろから声が聞こえるが、従う必要は無いだろう。

俺は悪くないのだから。

全く、こんなことなら意地でも勝負を受けるんじゃなかった。

今後、街中を歩きにくくなるかもな。

……まぁその場合は路地を中心に動けばいいか。

屋根を移動するのも良い。今屋根を走っているが、全く人目につかない。屋根の上をわざわざ見る奴何てそういないだろう。


適当な所で降りて、ログアウトするか。

今日は疲れた。そろそろ寝る時間だし、寝よう。


俺はしばらく広場から離れると、屋根から降りメニューの項目からログアウトを選ぶ。


《ログアウトしますか?》


勿論


《ログアウトします》


こうして俺の意識は現実に戻っていった。

早く寝よう。


●●●


翌朝、朝ご飯を食べた後。

ゲームにログインする。


目を開けると、そこには薄暗い路地が続いている。

昨日ログアウトした場所同じだな。良かった。

またあの広場に出てしまったら何が起こるか分からない。


さて、取り敢えず現状の確認をするか。

最悪、あの時逃げた事によって指名手配なんかをされているかもしれない。


よし、アリスの店に行こう。

情報を仕入れなければ。他にも買いたい情報もあるしな。

俺は、路地を進む。




だが、道が分からない事が判明した。


昨日逃げた時は何も考えずに移動してしまったため、道が分からない。

仕方ない。ここの住民に聞くか。この寂れた所なら魔道具屋の婆さんのように俺に嫌悪感を抱かないかも知れない。

あくまで、希望的観測だが。


住人は何所に居るかな……

路地で人を見たことはあのチンピラ以外見たことが無い。


お、噂をすれば……

チンピラ発見。しかも前に絡まれたチンピラだ。

また、前のように道を塞いでいる。人も通らないのに、意味があるんだろうか?


まぁいいや。

道を聞こう。きっと教えてくれるはずだ。


「それでよ~……」


脳天気に会話している。

どう話かけようか。道を聞くだけだしな。

う~ん、普通に聞こうか。


「道を聞きたいんだが……」

「あ? 何だ、おま、え……」


だんだんとチンピラの顔が青ざめていく。

どうやらまだ俺の事を覚えているようだ。これなら()便()に道を聞けるな。


「道を聞きたいんだが、答えてくれるな?」

「ふざけんな! 逃げるぞ!」


逃げるのか。

てっきりリベンジをするのかと。だがせっかく見つけた案内役、逃がさない。


路地の壁を蹴り三角跳びの要領で、回り込む。

これ位は出来るようになっている。


「なっ!?」

「道を教えてくれたら、危害は加えないぞ?」

「……」


チンピラは沈黙する。

もう一押しだな。


「道を教えてくれないのなら、このまま……」


指を軽く鳴らす。ゴキゴキと指が鳴る、思ったより音が出たな。

脅しとしては丁度いい。スキル『脅迫』も発動しておく。

今気付いたが、俺のスキルはパッシブが多いな。

消費は少なくて便利だが、決め手にも欠けるという事でもある。

まぁ、その話は今はいい。

今は道案内の確保だ。


「はいっ!分かりました!」

「お、おい! 俺は嫌だぞ!」

「なら、どうすんだよ! また気絶されられるぞ!」

「断るんなら、お前だけ断れよ!」

「そ、それは……」


軽く揉めているようだ。早く決まらないかな。


「まだか?」

「はいっ! 道案内させていただきます!」


聞き分けが良くて大変宜しい。


「表雑貨屋という店をしっているか?」

「あ、あの店ですか? 勿論知ってますが……あの店に行くんですかい?」

「何かあるのか?」

「いや……あの店は呪われてるって噂がありまして。夜中に叫び声やうめき声が聞こえたり、不気味なオーラが溢れたりするっていう話も……」


微妙に心当たりがあるな。オーラはあの人形のせいかも知れないし、あの店の中には叫び声を上げそうな物は結構あった。怨霊の魂とかあったしな。あり得る。


「そこで構わない。案内してくれ」

「はぁ、分かりました。こっちです」


チンピラが先導してくれる。

ついて行くか。



●●●



「ここです」

「ああ、ありがとう」


見覚えのある店が見える。

ついたか。そんなに離れてなかったな。


「それじゃあ、俺達はこれで……」

「あ、少し待て」

「な、何でしょう?」


チンピラ達は青ざめているが、危害は加えない。

働いた者には、報酬を渡さないとな。

俺はメニューから500Gを取り出し、チンピラに渡す。


「報酬だ」

「え? あ、ありがとうございます!兄貴!」

「俺は兄貴じゃない」


何度か礼を言いながらチンピラ達は去っていった。

そんなに嬉しかったのか?

そんな大金じゃない筈だが。


まぁいいや。

店に入るか。


扉を開けると、前と同じ不気味な人形が見える。不気味なオーラも健在だな、これは消えていて欲しかった。


「アリスー居るかー?」

「はいはーい! 居るよー」


奥から、アリスが出て来た。

相変わらず茶色の服だ。


「ハクさん。昨日何かした?」


開口一番そう言われた。


「どういう事だ?」

「NPC間で噂になってるよ? 勇者様を負かした奴が居るって。見た目はフードを被っていて、顔に入れ墨がある。この話を聞いたらハクさん以外に考えられなくてね」


もう噂になっているとは。


「指名手配とかはされて無いんだよな?」

「うん、今の所聞いてないね」


良かった。それだけを恐れていた。

そうなったらどうしようも無いからな。

というか、


「情報屋がそんなに喋って言いのか?」

「あ~、このくらいの情報はお金にならないんだよね。あくまで噂だし。もっと詳細が明らかになったら、お金も取れるんだけど……」

「勇者に勝ったのは俺という事は売るなよ?」

「勿論! 人の情報は買った物しか売らないのが、私のポリシーだしね」


そうなのか。

そのポリシーが無かったら、俺の情報が売られてたな。

情報を売ったのがアリスで良かった。

小声で、勇者の情報はタダで買ったからオッケー……と聞こえる。まぁ、あれはな。

俺の情報を売られてしまったら、俺の身に何が起こるか分からん。


「やることが無くなったな」

「あれ? 魔道具の練習はもういいの?」

「それならもう、使えるようになった」


まだ、少し荒いが後は使っていけば慣れていくだろう。


「凄いね……」

「コツを掴めばすぐだぞ?」

「そうなの?」


簡単では無かったけど、練習すれば誰でも出来ると思うが。


「あ! やることが無いんなら、(ウチ)で手伝いしてくれない?」


手伝い?


「何をするんだ?」

「特に難しい事はしないよ? ただ、店の商品の整理をして欲しいんだ。ちょっと物が増えちゃって……」


周りを見渡すと、商品が並べてある棚もあるが、反対に乱雑に物が置かれている棚もある。

確かに、物が多いな。


「私一人でやると、全然進まなくてね……お願い出来る?」

「何所にしまうんだ?」

「それは、店の奥に倉庫があるんだ。そこに入れる仕事だよ。報酬も出すし……どうかな?」


それなら、別に良いかもしれない。特にやることもないし、


「ああ、分かったよ」

「やった! ありがとーハクさん!」


あ、そういえば何もする事が無いのなら普通にフィールドを攻略すれば良かった。というか大体プレイヤーはそうする。いろいろあって失念していた。

受けてしまったし、攻略はいつでも出来るし別にいいか。


「何からすれば良いんだ?」

「そうだねぇ、まずはこの箱をそっちに運んでくれる?」

「分かった」


こうして、俺は店の手伝いを始めた。

このときの俺は簡単な仕事だと思っていた。



●●●




「あ、ハクさん。それは気をつけてね?下手に触ったら呪われるから」

「その液体、刺激すると暴発するかも……」

「その木箱、開けるとモンスターが飛び出すから開けないようにね」

「その肉片と血は近づけ無いでね。共鳴して何が起こるか分からないし」


マジでおっかねぇ。

一個一個の危険度が高い。緊張で手汗がでる。

だって、扱いを間違えたら普通に大惨事だ。そんな物がゴロゴロしてる。緊張するだろ。

そんな爆弾処理班じみた作業をこなすこと数十分。


「これで終わりだよ~」

「やっとか……」


やっと……やっと終わった。

勇者と戦った時よりも神経を使ったかも知れない。

そして、結構片付けられた。

乱雑に置かれた場所が無くなり、より雑貨屋らしくなった。商品のラインナップは相変わらずだが。


「ありがと~ハクさん!。はいっ報酬!」


アリスから報酬が渡される。

中身を確認すると、3000Gほど入っていた。


「ありがとう」

「いやいや~結構大変なのを運んでくれたし」


大変だという自覚はあったんだな。


「気になった物は買っちゃう癖、直さないといけないんだけどね。リアルだとそんなに何だけど……」


この商品たち、衝動買いなのか……

どんな店から買ってきたんだ? この店みたいなのが他にもあるのか? ……怖いな。


「まぁ、ゲームの中だし。良いんじゃないか?」

「う~ん……そうだよね! ゲームだもんね!」


あ、まずい事を言ってしまったかも知れない。

少しばかり残っていた遠慮が無くなってしまったかも……


まぁいいか。アリスの店だし。好きにさせよう。

取り敢えず現実逃避した。


「じゃあ俺は、そろそろ行くぞ」

「うん! また来てね~!」


断りを入れてから、俺は表雑貨屋を去った。

これからは、また森に行こう。筋トレをするのもいいし、ゴブリンの相手をするのも良い。


行くか





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