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戦利品の売却


「どうして俺が捕まってるって分かったんだ?」


門の牢屋から出て、婆さんの店に向かっている途中。

アリスに聞いてみた。


「いやね、ハクさんにメールを送ったじゃん? その後に門でいざこざが起きたって聞いてね、まさかと思って来てみたら案の定だったんだよ」


なるほど、そういう事だったのか。

流石、情報屋。耳が早い事で。


「どうして早く帰って来いってメールを送ったんだ?」

「ああ、それはね。お婆ちゃんの店に連絡があったんだ。何でも王城の宝物庫に泥棒が入ったらしいよ? だから警戒して下さいっていう連絡。当然門の警戒は強くなるから…… ハクさん見た目怪しさ満点だからね。捕まると思ったんだ。せめて警戒される前に帰って、と思って送ったんだけど……遅かったね!」


明るく言われても困る。

そうだ、色々あって忘れてたけど聞きたい事があったんだ。


「なぁ、アリス。スキルって簡単に手に入るのか?」

「ん? そんなに簡単には手に入らないと思うよ? まぁ最初のスキル構成にもるけど……」


スキル構成が関係あるのか?

その事を聞いてみると……


「当たり前じゃん! 最初のスキル構成はその後の熟練度の溜まりやすさに影響するんだよ? 例えば、魔法系のスキルを多く選んだ人は魔法系や魔力強化系のスキルが手に入りやすくなって、武器関係のスキルを取った人は、感覚強化や肉体強化とかのスキルが手に入りやすくなるんだよ?」


知らなかった。もしかして常識?


「まさか知らないとは思わなかった……だからランダムを選べたんだね。よく分かったよ……」


むぅ、ホームページに書かれていることを斜め読みしたのが間違いだったのか……

読む所はしっかり読むんだった。


「でも? どうしてそんな事を?」

「スキルが手に入ったんだ。名前は、『脅迫』」

「……何をしたの?場合によっては牢屋に逆戻りになっちゃうよ?」

「ち、違うぞ! 悪い事はしてない!」


俺は、森で起こった出来事を伝えた。


「初めて森に行ったらプレイヤーキラーに会った? 返り討ちにして、所持品を毟り取った? 色々起きすぎだよ!」


その自覚はある。明らかに内容が濃い。ゲームとしては嬉しいんだが……


「まぁいいや。早くお婆ちゃんの店に行こう。クエストを達成しないと」

「そうだな」


クエストを受けてからそれなりに時間が経っている。

早くクエストをクリアしよう。








婆さんの店に着いた。

相変わらず、店の中は暗く、店には見えない。

客なんて来ないだろ。


「おば~ちゃ~ん 帰って来たよ~」

「おお、帰ってきたのかい。大丈夫だったかい?」

「全然。行ったら既に牢屋の中だったよ」

「……そうかい」


呆れられたが、俺は門をくぐっただけだ。だから気にしない。

とりあえず、クエストを終わらせよう。

クエストの材料を一つにまとめた袋を手渡す。


「ほら、婆さん。材料だ」

「おー、そうかいそうかい。じゃあ確認させて貰うかね」


婆さんが袋の中を確認する。

ルポゼ草、ゼガ草、ゴブリンの角

全てある。


「うん、全て問題ないね。ありがとうね」


《クエストクリア!》

《サリ婆の腰の痛みを達成しました》

《これにより、サリア魔道具店での買い取りが可能になります》


よし!


「……合格かね…」

「ん? 何か言ったか?」

「いんや、何も言ってないよ」


何か聞こえたような……気のせいか。


「それじゃあ、約束通り買い取りをしてやるかね」


これで俺の金銭的な問題はとりあえず解決した。

有難い。


「どうする? 今から買い取るかい?」


否はない。あのプレイヤーキラーから()()()道具や武器もあるしな。

俺は、ストレージの中に入っている戦利品を出す。


「これの買い取りを頼む」


ガチャガチャと音が響いた。出したのは、弓と矢、そして短剣だ。


「これは……何所で手に入れたんだい?」

「親切な人が居てな。その人がくれたんだよ」


後ろからアリスの視線が刺さるような気がするが、気のせいだろう。


「この弓は狩人の弓だね。性能はまあまあだが、生産の容易さから広く普及している弓だ。この弓の場合は少し改良がされているね」


そこで婆さんは弓の弦を指さしながら、


「この弦、大毒蜘蛛の糸が使われているね。それによって弦が強くしなやかになり威力が上がっている。ふむこれなら狩人の弓の相場より高く買い取れそうだよ」


よし。高く買い取って貰えるとは、あのプレイヤーキラー様々だな。俺の腕に矢を刺したことは許してやろう。


「矢は、一般的に使われている物だね。せいぜい一本2G程度だろう」


まぁ矢だしな。一本一本が高かったら弓使いが破産するだろう。


「最後は、この短剣だが……ちょっと待ってな」


そう言って、婆さんは短剣片手に何かをした。すると短剣が少し光る。


「今のは?」

「この短剣は魔道具だね。効果は……疲労回復」


魔道具?


「魔道具ってのはね、周囲の魔力を吸収して動くファンタジーな道具だよ。どれも結構な値段で取引されてるはずだけど……」


アリスが説明てくれた。ありがたい。


「何所で手に入れたんだい?」

「言っただろ?親切な人に貰ったんだ」


嘘は言ってない。本当の事でもないけど。

婆さんは軽く俺を睨んでいたが、納得したようだ。


「魔力の消費が少なく、効果も実用的。良い値がつくよ」

「よし!」


これは期待してもいいだろう。

金は常に必要だからな。


「買い取り代金は、占めて95200Gだね。これで大丈夫かい?」

「勿論だ。かなりの値段だな」


思ったよりも高かった。

そんなに魔道具は高いのか?


「魔道具って、高いんだな」

「まぁ普通の道具とは比べ物にならない効果を見せる物もあるからねぇ。同じ効果でも個々で性能にバラつきもあるが基本的に高値で取り引きされているよ」


そうなのか?

同じ効果でも性能が違うとは……

作った人が違うから、とかか?

とことんこのゲームはリアル志向だな。


「この短剣の場合は、常時発動型の疲労回復効果。常時発動型だから回復効果は弱いが汎用的で買い手は直ぐにつくだろう」



普通に欲しくなって来た。

でも、俺のスキルに短剣術はないしな……


「今なら買い取りをやめる事が出来るよ?どうする?」


悩ませてくれるね。

どうしよう……


「因みに、この短剣の買い取り金額は85000Gだよ」


売ろう。

扱えるかどうか分からない物に期待して、大金を逃す事など出来なかった。

ちょっと使ってから様子を見る、という手が無いわけでは無いが……

入手手段が入手手段だからな。何処かでいざこざが起きそうでもある。

大人しく手放そう。


「このまま、売ってくれ」

「いいのかい?」

「ああ」

「じゃあこれが代金だよ」


売ってしまった……

だが代わりに95200Gの大金を手に入れた。

何か、買っていこうかな?

さっきのシステムメッセージでは、ここはサリア魔道具店と言うらしいし、何か良い品が売ってるかもしれない。

やばいな。金を使い果たさないようにしないとな。

調子に乗って全部使いそうだ。

よし、予算は買い取り金額の半分にしよう。


「45000G位で、何かないか?」

「なんだい、せっかく手に入れた金をもう使うのかい?」

「生憎、小市民でな。大金を持っていると落ち着かない」

「何を言うかと思ったら、そんな理由かい。宵越しの金は持たないくらい、言ってみな」


無茶を言うな。

あんなことわざ、実行する気にはならん。詳しい意味は知らないが。


「そうだね……ちょっと待ちな」


そう言って婆さんは店の奥に消えていった。


「ハクさん何を買うの?」

「取り敢えず、戦闘の補助になる物がいいな」

「どうして?」

「ゴブリンとの戦いで手こずったからな。流石に素手はきつい」

「素手で行ったんだね……まぁ武器は買えなかっただろうけど、よく倒せたね……」

「結構大変だったぞ」


ゴブリン二匹の拙い連携であれだけ苦労したんだ。

俺自身の技術の向上も必要だが、武器の入手も大切だろう。

そういえば、


「アリスはいつまでここに居るんだ?」


そんなに店を空けていいのか?


「店に居ても暇だからね。ここに居た方が掘り出し物もあるし」


あの雑貨屋のラインナップの原因はこの店か?

いや、オークションとか言ってたしここだけじゃ無いんだろう。

そんなこんなで、婆さんが帰って来た。


「45000Gで買える物は大体こんなもんだね」


婆さんが持ってきたのは、三つ。


白い片眼鏡、青い腕輪、黒い靴だ。


「まず、この片眼鏡(モノクル)。相手との実力差を調べる事が出来る。自分よりも強いと赤いオーラが見え、同格なら緑、格下なら青に見える効果だね」


おお、なかなか使えそうだな。


「試しに着けて見るかい?」

「ああ」


俺は渡された、片眼鏡を付ける。

おお、凄い。

婆さんの体から、赤いオーラが立ち上る。

『見極めの眼』を使った時のような感じだな。


「どう? ハクさん、どんな感じ?」

「ああ、これが魔道具か……便利だな」


こんな事が出来るとは……

後、軽く驚いたのがアリスから出ているオーラが赤かった事だ。

格上……だと……

まぁ、俺より先にゲームを初めているだろうし、当然なんだがな。


「後はどんな魔道具だ?」


俺は付けていた片眼鏡を外し、婆さんに渡す。

婆さんはそれを受け取り、今度は青い腕輪を差し出す。


「次は、この腕輪だ。腕力が上昇する効果が付与されている」

「俺のスキルと少し被るな……」


『身体能力上昇』の効果と若干被る。


「これも付けていいのか?」

「構わないよ。だが効果を実感出来そうに無いがね」


確かに、そもそも俺の素の力が既にスキルによって上がってるんだし比較対象も無い。


「いや、やっぱいいや」

「なら次の魔道具だね。これが一番変わり種だ」

「この黒い靴が?」

「ああ、ちょっと前に入った魔道具工房の見習いが考案したっていう魔道具だ。名前は爆発靴(ボムシューズ)と言うらしい」


凄い名前だな……

そして、魔道具工房の見習いか……プレイヤーかな?


「効果はこの靴の下に風の爆発が起こる」

「ん?どういう事だ?」


靴の下に爆発?

意味が分からん


「何でも、その見習いは空中を飛べる飛翔靴(ホバリングブーツ)から着想を得て、この魔道具を思い付いたらしい。風魔法のウインド・ボムを靴の下に発生させる事によって高く跳躍する事を可能にしたそうだ。問題点は……」


何だ?婆さんが口ごもる。


「まぁ、使ってみれば分かるだろう」

「? ああ」


さっきの説明から考えるにそんなに悪い物では無さそうだ。

飛翔靴というのも気になるが、きっと高いんだろう。


「ハクさんハクさん、早く使ってみてよ!」


どうやらアリスも気になっているらしい。

俺も気になるし、付けるか。


「付けたぞ、婆さん」

「なら、爆発靴を起動するように念じてみな」

「念じるだけでいいのか?」

「大体の魔道具は念じるだけで効果を発揮するよ」


便利なんだな。

では、早速。爆発靴を使用するように念じる。

その瞬間。

視界が反転した。







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