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各国の状況――ロシア神聖国

剃り残しの無い三枚刃戦法!

訳:三日連続更新だぜ!


初めての快挙じゃないでしょうか!?

まぁ、一話一話が短めでお送りしている所為でもあるのですけども!

 ロシア神聖国。


 広大な土地を有するこの国には、相応の数の人々が住んでいる。


 才能を持ってさえいなければ安全な国。

 それが、民に共通した思考だ。


 そんな彼らは、全土に響き渡ったアラートに対して、即座に行動する。


 避難。


 地下深く、貫通弾ですら届かない奥底に造られた、最大級のシェルターへと全力で逃げ込む。


 それは、襲い掛かってきた脅威から逃げる為では、断じてない。


 彼らの王、神とすら崇めている世界最古にして最強の魔王、ヴラドレンの攻撃に巻き込まれて、死なない為の避難だった。


~~~~~~~~~~


「……煩わしいハエ共が」


 宮殿の奥にて、玉座に深く腰掛けたヴラドレンは、静かに呟く。

 外からは、微震が伝わってきており、敵襲は既に地上へと至り、好き放題に活動している事が分かる。


 ようやく、重い腰を上げたヴラドレンは、天を見上げた。


 玉座の上には、ガラスの天窓が備え付けられている。

 彼が簡単に空へと舞い上がれるように、という設計だ。


 夥しいという表現が適切な敵勢が、空から降り注ぐ光景は悪夢以外の何物でもないが、ヴラドレンにとっては煩わしいという言葉だけで片付けられる程度の事だ。


 彼は待っていた。

 立場を弁えた有象無象たちが、逃げ出す時を。

 邪魔にしかならない民たちが、早々に避難し終える時を。


 そして、その時は満ちた。


『GYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAA……!!』


 巨大な咆哮と共に、ヴラドレンは魔力を放出し、自らの身体構造を作り替える。

 より強い肉体へ、より強い生命へ、全力を出しても壊れない身体へと変貌させる。


 天窓を突き破り、一個の生命体が空へと舞い上がる。


 跳ぶのでも飛ぶのでもない。

 空を掴んで、空を踏みしめて、行く。


《災禍》ヴラドレン。


 二億千三百八万四千五百六十六の命を持つ、最強存在が殲滅態勢で以て空へと舞い上がった。


 顕現するは、純白の龍神。

 百八の翼をはためかせ、四十九の瞳で世界を睥睨する、人智を越えた地球の怪物である。


 何処までも広大な国土を覆いつくすほどにまで、自身を膨らませたヴラドレンは、その巨体をうねらせて害虫を見据える。


 無数の、羽虫。


 巨体であるヴラドレンからすれば、巨人型や竜型でさえ、虫けらと変わりない。

 それ以下ともなれば、塵芥同然だ。


 それらが、突如として現れた龍神へと集り、攻撃を加えてくる。


 だが、ヴラドレンの龍鱗は砕けない。

 全属性によって多重に強化され、強大な魔力によって支えられた防護は、針の一刺し如きでは貫くなど不可能である。


 やがて、己が守護すべき全ての領域を、己の巨体で覆い尽くした時、ヴラドレンは重厚な雄叫びを上げて、魔力を高ぶらせる。


 純白の龍神が、光り輝く。


 龍鱗が、体毛が、数多の翼が、ヴラドレンの何もかもが例外なく、莫大な魔力の輝きを燐光として纏い始めた。


 異形の軍勢に、死の恐怖はない。

 彼らは命を捨てて、愚直に上位存在からの命令に従うのみである。


 だが、そんな彼らをして、一つの確信を得た。


 滅ぼされる。

 このままでは、間違いなく消滅する。


 そんな、どうしようもない理不尽への確信を抱いてしまった。


 訪れる滅びを阻止すべく、後先考えない決死の猛攻を叩き込んでいく。


 それでも、巨大な空中要塞はびくともしない。


 痛痒の一つさえ感じていないヴラドレンは、しかし苛立ちを募らせていた。


 それは、虫けらに集られているという、ただそれだけの不快感。

 脆弱で矮小で、何の力もない羽虫が、耳元で小うるさく羽ばたいている時に感じるような、たったそれだけの苛立ち。


 それを彼は遠慮なく吐き出す。


『鬱陶しいわッ!!』


 全身の輝きが爆発した。


 ヴラドレンオリジナル全属性混合魔術フレア・バースト


 それは本来、口腔から吐き出されるドラゴンブレスの一撃。

 それを全身から、全方向に向けて放射した。


 天地を貫く、光輝の巨塔。


 それは大気すらも吹き飛ばし、宇宙にまで伸び上がっていた。

 大地をも粉砕し、地下の奥深くに作られていたシェルターの中にいてさえ、激しい振動と龍神の威光を届かせる神話級の一撃だった。


 やがて、ロシア神聖国を包み込んでいた光が消え去る。

 吹き飛ばされていた大気が戻り始め、豪風が渦を巻く。

 それは砂塵を巻き上げるばかりで、その他の一切に影響を及ぼさない。


 何故なら、影響を与えるべき何もかもが存在しないが故に。


 都市も、自然も、敵勢も、虚空に口を開けていた全ての異界門さえも、ヴラドレンの一撃によって消滅していたから。


 かつて、誰かが言った。

 最古の魔王は、ただの〝災害〟である、と。


 まさにそうとしか言えない光景が、そこにはあった。


 真っ新にくり抜かれた大地の上で、巨龍は静かに佇む。

 その顔には、何の感情も浮かんでいない。

 国が消えた悲嘆も無ければ、敵を消し去った喜悦も無い。


 当たり前のような顔をして、何もかもが失われた世界を見下ろしていた。


 その姿は、まさしく神のようであった。


『ふん。無駄な事を』


 暫くそのまま空に浮かんでいると、ヴラドレンは虚空に染みのような物が広がる場所を見つけた。

 その正体は、ブレスに空属性を混ぜ込む事で、力任せに閉ざしてやった筈の異界門だ。


 地球上に開いた他の異界門からの圧力を受けて、再開通しようとしているそれを見て、彼は鼻で笑う。


 何度来ても無駄だと。

 全て消し飛ばしてやろう、と。


『良いだろう。そんなに滅びたいと言うのならば、望みを叶えてやろう』


 純白の龍神が、無数の小型の翼竜へと変化する。

 その一つ一つが、確かな命を持つヴラドレン自身である。


 ヴラドレンオリジナル命属性魔術《群竜(クラスタ)》。


 二億を超える命を分割して分け与えた、一つの意思の下に統制された竜の軍勢だ。

 彼は、彼らは、再開通して新たな敵勢を吐き出し始めた異界門へと殺到する。


 それは、殲滅の為ではない。


 捕食の為だ。


 異界の大魔力を有する集団。

 人々にとっては脅威であっても、災害の前には儚い存在だ。

 どれだけ食べたとしても、誰にも文句を言われない、自身の力と命を増やす極上の餌という認識にしかならない。


『絶滅するまで、喰らい尽くしてやろう……!』


上空通過中だった馬鹿どもの叫び

黒雷「ギャー! 近道なんてするんじゃなかったー!」

病毒「てっめぇ、絶対に殺してやるネー」

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