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各国の状況――中華連邦

現在の世界的に不謹慎だとは思っているのです。

でも、こいつは連載当初から考えていたキャラなんです。

偶然、登場がこの時期と重なってしまっただけなんです。

決して、世間に対して喧嘩を売っている訳ではないのです。


はい、ごめんなさい。

本当にすみません。

 中華連邦。


《五虎将》が一人、《仙人》王芳は、真龍斎と同じく《翔爪》――中華連邦名《仙雲》――によって空に上がっていた。


 彼が上がっていく姿は、一種、異様なものだ。


 無数に分裂した王芳。

 空を埋め尽くさんばかりの数で以て、彼が向かっていくのだ。


 彼は、元々、真龍斎と似た術者であり、自らの拳こそが最強最大の武器だと疑わない、近接戦闘者だった。


 だが、ヴラドレン神へと挑み、敗北した事でその思考は僅かな歪みを得てしまう。


 全力の拳でも砕けない強固な鱗。

 人間の拳など、所詮、針の一刺しにしかならない巨体という天然の鎧にして武器。


 正真正銘の怪物を前にして、人間である事の限界を悟った彼は、自らの適性、幻属性を極める事へと繋がった。


 王芳オリジナル幻属性魔術《夢幻人柱》。


 自分自身に限り、実体のある幻術という矛盾したような存在を生み出す魔術である。

 その結果、ただ一人にして軍団を築き上げる怪物となった。


 ちなみに、瑞穂での《仙人》という二つ名は誤植である。

 元々は《千人》と名付ける筈だったのだが、何処かで手違いが起きた為、その名で登録されている。

 求道者である事には間違いないのだが。


「ハッハッハッハッ!

 温い温い温いッ! 温いわ、雑魚共がぁ!」


 狂戦士の気質を持つ王芳は、突然の祭りに対して極度の興奮状態にある。

 誰にも文句を言われず、自身が磨き上げた業を振るう事が出来るという、実に好ましい夢のような時間を味わっていた。


 硬く鍛え上げた鋼の拳は、如何なる敵をも等しく薙ぎ倒していく。

 そんな彼の前に、竜型の異形が現れた。


 竜。


 それは、ヴラドレンが戦闘の際に好んで使う形態だ。

 そして、王芳にとって敗北の思い出のある生物でもある。


「ぬわっはーッ!」


 敗北の記憶に臆する。

 そんな気配を微塵も感じさせぬまま、彼は躊躇なく殴りかかっていく。


 吐き出される咆哮を下に抜ける事で、咆哮を暗幕として利用しながら竜の顎下へと入った王芳は、その頭蓋を思いっきり殴り飛ばした。


 飛び散る鱗。

 強制的に噛み合わされた牙は圧し折れ、何処かに引っ掛けたのか、血を口から大量に溢れさせる。


「はっはー! 頑丈な奴だな!

 そうでなくては殴り甲斐もないがなッ!」


 流石は竜という所か。

 仮にも近接戦闘に特化した魔王の拳を受けても、一撃では絶命はしていない。


 ヴラドレンよりは遥かに柔いが、その頑丈さと生命力の高さに、王芳は、そうでなくては、と更に戦意を滾らせる。


 王芳オリジナル幻属性魔術《無限連衝》。


 竜に止めを刺すべく、彼は対ヴラドレン用に開発したオリジナル術式を発動させる。


《夢幻人柱》の幻術が、王芳に重なりながら出現する。

 重なりながらも、実体はある。

 寸分違わずに重ね、動かす事でズレによる世界の矛盾を無効化しているのだ。


 一人にして無数。

 無数にして一人。


 重なり合った王芳は、竜の懐へと入ると、もう一度、同じように殴りつける。


「三連! 深く響け!」


 三人分の拳打を受けた竜は、体内で拡散し反響し合う打撃によって身体を破壊され、一瞬の後に肉片へと弾け飛んだ。


「チッ! 手応えからして、二連でも充分だったな。

 もっと硬いの連れてこい、カス共がぁ!」


 あっさりと死んでしまった竜に不満を漏らした王芳は、新たな獲物を求めて跳躍した。


~~~~~~~~~~


 中華連邦の各都市は、甚大な戦火に見舞われていた。


 その理由は大きく二つ。


 一つは、瑞穂の《金剛》のように国を覆うほどの防御壁を張れる者がいない事。

 もう一つは、単純に国民のほとんどが近接魔術師であり、空中で迎撃する対空砲火が誰もできなかったが故だ。


 だが、だからと言って被害が大きい訳ではない。


 建築物などの物的損害こそ派手に見えるが、人的被害については限りなく少なく抑えられている。


 それは、偏にこの国の教育方針による所が大きい。


 物心付いた頃には武芸を学ぶ事を義務として定められている中華連邦において、身動きすら出来ぬ赤子を除けば、老若男女の全てが戦士として機能する。


「行くぞ、爆陣門!」

「応! 来い、鉄心門!」


 灰髪の一団が、赤髪の一団へと突撃する。

 赤髪たちは、タイミングを合わせて彼らへと蹴撃を放った。


 それは攻撃ではない。

 空へと打ち上げる為の一撃だ。


 灰髪たちは放たれた赤髪たちの足へと乗りながら空を見据える。


「爆陣門! 空襲城落とし!」


 爆撃すらも推進力としながら、弾丸を蹴り出す。

 通常は鋼鉄の玉などを城壁を越えて撃ち込む為の技だが、これを頑強な土属性の魔術師たちを弾丸の代わりとして使用していた。


 真っ直ぐに飛び上がった灰髪たちは、両手を揃えながら前に突き出す。

 その手は濃密な魔力を帯びており、鋼よりも猶硬き凶器へと変貌している。


「鉄心門! 千枚鎧通し!」


 自らを槍として、空の異形を撃ち抜いていく。


 勢いが落ちてくると、今度は重量を増して身を固める。


「鉄心門! 重身地割り!」


 ごく普通に、落ちるだけ。

 兎に角、身体を重くしながら、身体を固くしながら、重力に身を任せるだけだが、その威力は決して馬鹿にできる物ではない。


 落下の軌道上にいた異形たちは、あまりの重さに耐えきれず、諸共に墜落するか一部を引っ掛けて引き裂かれていく。


 真っ直ぐに落ちた彼らは、眼下の建物を叩き潰しながら、地面と同化し、土中へと潜りながら次なる動きへと繋げる。


 灰髪たちを打ち上げた赤髪たちは、地上へと降り立っている異形たちの相手をしていた。


「爆陣門! 雷原走破!」


 足元に爆裂魔術を込めながら、走り回る。

 それ自体は、火属性魔術師として特に難しい事ではない。


 だが、彼らはあくまでも近接魔術師。

 通常の魔術師ならば、そのまま魔術を地雷として保持していられるが、彼らにはそんな芸当などできない。


 一歩進んだ時点で地雷は炸裂してしまう。


 しかし、それで良い。

 彼らはその状況を利用する。


 背後から押し寄せる爆裂を、背中に集めた耐火能力の高い魔力で受け止めながら、その勢いに乗って更に加速して走っていく。

 それは、さながら地雷原を爆発するよりも早く駆け抜ける、という映画もかくやというビックリ光景だった。


 敵陣の中を走り回る馬鹿どもの曲芸に巻き込まれた異形たちは、千々に引き裂かれ、周囲の建物の崩落に巻き込まれ、その命を儚く散らせる。


 何度でも言おう。


 人的被害はほとんどない。

 だが、物的損害は甚大である。


 主に、自分たちで壊した結果だが。


~~~~~~~~~~


「う~わっ、超こわ。

 あそこに行かなきゃならないの?」


 瑞穂から跳んだ美影は、直近の中華連邦へと来ていたが、標的がいる場所を見て、嫌そうに呟いた。


 各国の魔王及び準魔王たちは、その危険性故に基本的に他国から入国制限を受けている。

 無断で入国しようものなら、即座に捕縛命令が下されるし、困難な場合は無力化、つまり殺害さえも許容される。


 そんな危険度の高い人物たちの中で、入国制限ではなく、無条件の入国禁止を受けている者が世界で一人だけいる。


《疫災》《ハザード》趙紅花。


 命属性の魔王であり、その二つ名の通り、病毒を生産し拡散する魔術を得意とする人類の敵である。


 美影の見る先では、無数の異形たちがなんやかんやで死んでいる。


 突然に全身から血が噴き出したり、ドロドロに身体が溶け出していたり、幻覚でも見ているのか、自分で自分の身体を掻きむしり、引き裂いて死んでいたり、と、死に方は様々だが、兎に角、地獄絵図と呼ぶに相応しい光景だ。


 そんな光景が、彼女がいる場所では、突然に起こりかねない。

 感染力などによっては、ほんの僅かな手間で大国すら跡形もなく滅ぼしかねない絶滅を齎す魔王なのだ。

 各国から絶対の入国禁止令を言い渡されるのも当然だし、見かければ捕縛など考えず、即座の抹殺指令が下され、同時に緊急事態宣言すら出されてしまうというのも無理からぬ話だろう。


 目の前で蔓延している病害が、異界の住人だけに感染する物だと、そんな楽観主義を美影は持てない。


 あれは、間違いなく地球人類にだって有効な病だ。


 そうと確信できる美影は、このまま見なかった事にして別の場所に行こうかと脳の端で考えるが、それをすぐに打ち消す。


「ああ、悲しきかな、サラリーマン」


 大した額ではないとはいえ、一応、給料を貰ってお仕事をしている身だ。

 個人的に嫌だからと、それで業務を放棄できる筈もなし。


「大丈夫大丈夫。

 僕は廃棄領域にだって適応したんだ。

 あんな病毒なんて怖くない怖くない」


 死毒に侵された禁忌の大地。

 そこで生きていける自分の免疫機構を信じろ、と自らに言い聞かせた彼女は、気合いを入れて死の支配する土地へと侵入する。


 中心部にて呑気に歩き回っている黒髪の女性を見つけると、彼女は勢いに任せてその手を取って空へと駆け上がる。


「アヤー。もう来ちゃったネー、黒雷の」

「……僕は、宿題は速攻終わらせるタイプなんだよ」


 嫌な事は一秒でも早く終わらせる主義なのだ。


 目的地は、北極の地。


 あそこならば、人類がいない。

 生物だってそう多くない極限の土地だ。趙紅花がどれだけ猛威を振るっても、被害は最小限に抑えられる、と思われる、多分、きっと。


 美影の足ならば、秒で辿り着ける。

 極点に彼女を放り投げてお仕事は終了だ。


 そんな中、とても不穏な言葉が聞こえた。


「それにしても、おかしいネー」

「聞きたくないけど何がッ!?」

「内臓がグズグズに腐る病を感染させているのに、何で君は平気なのかネー?」

「何してくれちゃってんのさ、テメェは!

 僕は廃棄領域だって闊歩できる超生命体だよ!?

 お前の病毒なんて効かないんだよ!

 人類の免疫機構の進化を舐めんじゃねぇ!」


 一応は、現在の状況下では味方に対して、本当に何をしているのか。


「そうなのカー。仕方ないネー。

 色々試してみようカー」

「止めろよ! ほんっとにッ!

 止めろよッ!

 ロシアに叩き落すぞ、テメェッ!?」

「……それは勘弁してほしいネー」


 耐久力に乏しい趙紅花では、ヴラドレンの攻撃に耐えられない。

 直撃を受けずとも、余波に巻き込まれるだけで蒸発できる。


 雷裂の自由人ならやりかねない脅しを受けた彼女は、比較的弱い病を感染させるだけに留めるのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「雷裂の自由人ならやりかねない脅しを受けた彼女は、比較的弱い病を感染させるだけに留めるのだった。」 やれやれだぜ・・・。 [一言] ワーオ、ナイスタイミングネーー(棒読み
[一言] 封神演義の昔から生物兵器が出てくるお国ですからねw
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