《無敵要塞マジノライン・高天原バージョン》
他のシーンと抱き合わせて長めにするか、短く刻んでいくか。
悩んだ末に刻む方で。
という訳で、短いです。
直径13㎞という巨大構造物が、更に規模と質量を増して大海に展開した。
36のカタパルトを有し、もはや数える事が馬鹿馬鹿しいと言える大小無数の砲門が針山のように連なっている。
重厚な装甲を各所に配置しており、その威容は鋼鉄の怪物そのものだ。
最大径46㎞。
《無敵要塞マジノライン・高天原バージョン》。
全ての装備を展開し終えたそれは、全体に魔力の光が流れた。
「封魔炉、第一から第八まで解放。
魔力伝達はパターンDで固定。
魔動艦載機、機動タイプに換装後、各リニアカタパルトにて待機」
美雲は、中心部の制御ユニットと無数のコードで繋がりながら、高速で設定を打ち込んでいく。
同時に、《サウザンドアイ》のリミッターも解き、その真価を発揮させる。
「オール・アイズ・システム、接続。
探知範囲、太平洋全域。
……目が足りてないわね。
観測プローブ発射」
小口径の砲塔が稼働し、千門近くが一斉に火を噴いた。
それは攻撃の為ではない。
見通しきれない戦場を、鮮明に映し出す為の〝目〟を射出したのだ。
太平洋全体へとばら撒かれた観測プローブは、早速、周辺情報を収集して《サウザンドアイ》を介して美雲へと送り届ける。
より鮮明になった世界を見渡し、美雲は情報の解析を行う。
「異界門総数、167。
敵勢総数、4,467,091。
現在も増加中。
リスト。
形態別に選別。
保有魔力量順に並べ替え。
各個0.3秒後の位置を予測――確定。
全砲門、解放。
封雷弾、レベルSからレベルDまで装填」
針山の針が、美雲の意思に従ってそれぞれに狙いを付けていく。
必要な威力を必要な敵に。
Dランク相当の全魔力を込めた砲弾から、Sランクの全魔力を込めた砲弾まで、出し惜しみは無しで各砲塔へと装填していく。
「うわわわっ!?
何だこれ何だこれ、何だこれッ!? です!」
そんな中、制御室の中に混乱する雫が放り込まれてきた。
彼女は瑞穂の戦闘力を支える心臓だ。
下手な場所をふらつかれて、戦闘に巻き込まれては敵わない。
その為、彼女の安全を確保するべく、《マジノライン》の展開と同時に身柄を拉致して、こちらまで送り届けさせたのだ。
「ああ、ごめんなさい。
高天原が戦闘態勢に移行しちゃったから。
ここが一番安全だから、大人しくしててね」
「つーか、どんなギミックだ! です!
派手好きにも程があるぞ! です!」
「これからもっと派手になるわよ?」
美雲が片手を真っ直ぐに上げる。
彼女の仕草に合わせて、高天原全体に獣の唸りのような音が充満した。
「――一斉射」
手を振り下ろす。
直後。
無数の砲門が、電磁加速された砲弾を発射した。
同時に、周辺の海面から莫大な蒸気が発生する。
「冷却システム、稼働率11%。
まだまだ行けるわね。
魔動艦載機、順次発進。
異界門直下にて格闘戦」
36のリニアカタパルトより、矢じりの様な細い機体が高速で射出され、各所に向けて発進していく。
全て無人機だ。
その全てを操縦しているのは、AIではなく、この場にいる美雲であり、この時点で彼女の処理能力は神の領域に踏み入れている。
「直近、異界門構成解析完了。
封印弾、形成、装填――発射」
以前の物を参考にしつつ、以前とは比べ物にならない観測態勢で以て全力で解析したおかげで、前回は半日もかかった解析作業を、僅かな時間で完了させる。
それを元に封蓋を創り上げた美雲は、それを即座に撃ち込む。
命中と同時に、極光が放たれる。
空に開いた穴が折り畳まれる様に縮小していき、しかしあと直径数mという所で止まってしまった。
「? 観測、解析――おや、まぁ」
異常事態に気付いた美雲は、すぐに情報を集積し、その結果に頭痛を覚える。
どうやら、敵勢も無策でいる訳ではないらしい。
空属性魔力が展開され、異界門の維持を行っている事が判明した。
防壁の発生源を排除しなければ、異界門の閉塞は難しいだろう。
何発も撃ち込めば不可能ではないと思われるが、問題は異界門が一個ではなく無数に存在する事だ。
今もなお増殖中であり、悠長に相手にしていられない。
更に、面倒な事が判明する。
どうやら、各異界門が連結しているらしく、他所からのエネルギーが流れ込んでいるようなのだ。
縮小した異界門が凄まじい速度で再拡大していく様を精査した結果、完全に閉じたとしても、封印を維持できる時間は精々で6秒弱という結果がもたらされた。
「ほぼ同時に、世界中の異界門を塞がないといけない、と。
これは私一人では無理ね」
確実に刹那の力がいる。
しかし、現在、彼は不在だ。
いつ帰ってくるかも分からない。
早々に諦めた美雲は、さっさと意識を切り替え、方針を改める。
「じゃ、弟君が帰ってくるまで、お付き合いしてあげるわ」
全員、出てくる端から殺してやる。
数百万にも及ぶ敵勢を前に、美雲は笑みを浮かべる。
冷たく、残酷な、普段の彼女とはまるで違う笑みを。
「《フォートレス》の名は、伊達じゃないって思い知らせてあげるわ」
その言葉と同時に、《マジノライン》は終わらぬ弾雨を、全方位に向けて放ち始めた。
イメージは、アームズフォートのスピリット・オブ・マザーウィルな感じで。




