せっちゃん式治療術
治療回。
あるいは、エロ回とも。
だが、これをエロと捉えるのは中々の上級者な気も。
人によっては(おそらく大多数の方には)グロかもしれぬ。
携帯でポチポチと書いています故、いつもと若干違う感じになっております。
後で直しますので、今はこれで勘弁を。
「やっ。お疲れさま、我が愛しき愚妹よ」
気絶したリネットを担いだ美影が、氷塊に阻まれて立ち往生している船へと辿り着くと、不可思議な生物に迎えられた。
刹那(左)である。
片手を上げて、爽やかに労う彼を見て、美影はリネットを投げ捨てて駆け寄る。
「わーい、お兄だー。やっふー」
ぎゅっと抱き付くが、その感触に違和感を覚える。
なんとなく、胴回りが細い気がしたのだ。
そして、改めて見たところで、ようやく彼女は兄の異変に気付いた。
「お兄!?なんかまた半分しかないよ!?
ダイエット!? それとも、また自爆!?」
「まさかダイエットという選択肢があるとは思わなかったぞ、愚妹よ。
なに、少々余裕ぶっこいていたら二枚に下ろされただけだ」
「へぇ。お兄を斬るって、凄いね、それ。
まぁ、つい心配しちゃったけど、大丈夫なんでしょ?」
「うむ。右側は凍らせて保存してある。
まぁ、適当にくっつけるか、もしくはその内生えてくるだろう。
にゅるっと」
「にゅるっとかぁ」
美影は刹那の断面を弄りながら、安心する。
くすぐったいのか気持ち良いのか、時折、ピクピク痙攣するのが面白い。
脊髄辺りは反応が大きくてお気に入りだ。
刹那は抱き付いてじゃれついてくる美影の頭を撫でながら、代わりとばかりに彼女の傷に言及する。
「そういう愚妹も、なにやら欠けているようだが。
それほどの強者だったのかね?」
彼は投げ捨てられているリネットを見る。
美影もつられて見れば、遅れてやってきた船員たちが倒れている彼女を担架へと乗せている所だった。
治療の必要を訊ねてくる船員にやんわりとお断りを伝えながら、美影は言う。
「ううん。全然。めちゃめちゃ雑魚だったよ」
「ほう。にもかかわらず、片腕をくれてやったのかね?」
「まぁ、頑張ってたからね。
将来性に対しての餞別かな?
めげずに頑張れってね」
「優しい事だな」
語らいながら、二人は船室へと向かう。
彼らが辿り着いた部屋は、簡素だが中々の広さがあり、この船の中では一等船室なのだろう事が伺えた。
「では、私はともかく、愚妹の治療はせねばな」
刹那は放っておいても、自然治癒の延長線で勝手に欠損部位が生えてくる。
トカゲの尻尾のように。
完全に人間の生態ではないが、これでも刹那は人間のつもりだ。
しかし、美影は違う。
彼女はまだ普通に人間の範疇にいる。自己治癒を促進させても、腕が生えて来るような事にはならない。
よって、ちゃんと治療をしなければならない。
選択肢は、主に三つ。
一つは、治癒系超能力を持つ母、雷裂瑠奈を頼ること。
治療の際に色々と仕込みをしてしまう悪戯心旺盛な彼女であるが、流石に娘にはそういう事をしないので無難な選択肢だ。
次に、普通に現代医療を頼ること。
死んでさえいなければ大抵の事はなんとかなる、という段階にまで達している医療技術は、魔術的治癒と合わせれば問題なく失った手足を生やす事もできる。
但し、時間と金銭が多大にかかる。
雷裂である以上、金銭的問題はどうでもいいが、時間がかかる事は痛い。
細胞を増殖させて新しい腕を用意し、それを繋げてリハビリをするとなると、優に年単位の時間がかかってしまう。
なので、あまり好ましい選択ではない。
最後に、俊哉のような義手を用意すること。
生身の腕にはない特殊機能を追加できるし、生身よりもよほど頑丈な点も利点だろう。
だが、可愛くない。
見た目がごつくなるのは、女の子としてマイナスである。
細身に作って皮を被せれば見た目上は生身に見せる事もできるが、それをすると特殊機能を仕込む余地がほとんどなくなってしまうし、結局、触った時の感触はやはり生身とは大きく違うのだ。
だから、美影はこれは遠慮したい。
「さて、どうしようか。
行方をくらませている我が母を捕獲する所から始めねばならんかな」
「お兄が治してよ!
お兄の細胞を使って!」
番外の選択肢として、変身能力を駆使して刹那の細胞を移植する、という方法もある。
別に、それをしたからと言って細胞に侵食されたり人間をやめたりする訳ではないのだが、通常の人間は忌避感を覚えるだろう。
以前、美雲に提案したら、断固拒否を食らったから間違いない。
尤も、拒否をした理由は、移植そのものではなく、移植のためにしなければならない事に忌避感を覚えた可能性もあるが。
そして、美影がこれを望む理由も、そこにある気がする。
とはいえ、彼女がそれを望むと言うのであれば、刹那に否はない。
先日も、ヴラドレンにやられた傷を同じ方法で治療したのだ。
今更、副作用などの心配もない。
「では、まずは身体を生やさねばな」
言って、刹那は能力を発動させる。
身体強化と治癒能力を並列起動したのだ。
柔らかく暖かな光と共に、正中線に沿った断面部から骨肉が生えてくる。
まず、骨格が作られ、次いで内臓、それらを覆うように筋肉と血管が張り巡らされていく。
最後に皮膚が貼られ、完成である。
完全復活までに要した時間は一分弱程度。
急ぎではないので、丁寧に作った為、少々長くかかってしまった。
ちなみに、繋げる必要性がなくなった為、凍ったまま放置している右半身は接続を切っておいた。
その内、腐って食われて、自然の一部へと還るだろう。
流石に半裸では見苦しいので、今度は変身能力を発動させる。
船室に備え付けられていたシーツを生け贄に捧げて、破損しているスーツの残骸と繋ぎ合わせる。
「見た目復活!
さぁ、愚妹よ。準備は良いかね?」
「うん! ばっちこーい!」
声をかければ、腕を広げ、満面の笑みで兄を迎える美影。
そんな彼女に、刹那は頭からかぶり付いた。
比喩ではない。
文字通りの意味だ。
擬音語で言えば、ぱくり、という所か。
大きく裂けた彼の顎は、一口で美影の胸元までを咥え込み、首を上げて軽い身体を持ち上げると、重力に従って、あるいは喉の蠕動に従って、徐々に徐々に奥へと落ちていく。
咀嚼はしない。
当然だ。
これはあくまでも治療行為なのだから。
傍目には捕食にしか見えないが。
「ふぅ」
やがて爪先まで全て飲み込んだ刹那は、一息吐く。
彼の腹は、まるで妊婦のように大きく膨らんでいる。
矮躯とはいえ、人一人が、丸ごと入っているのだから当たり前だ。
暫し、待機する刹那。
今、彼の腹の中では、欠けた右腕はもとより、その他の細かい傷や悪い部分を治療したり切り離したりしている。
ぐにぐにと表面が蠢いていて、消化されゆく獲物が必死の抵抗をしているようにも見えるが、それは気のせいだ。
そうして待つこと、およそ十分後。
完璧な健康体となった美影が、刹那の口から吐き出された。
「うぅん……」
腹の中に入っている間は微睡んでいる様な感覚らしく、外気に触れた彼女は寝起きのような悩ましげな呻きを漏らした。
何故か、一糸纏わぬ全裸の状態で。
衣服は溶かされたのだ。
治療するのに邪魔だったからというだけで、決してエロスな理由はない。
全身が体液で濡れてエロいが、単なる治療の結果だ。
それ以上の理由はない。
全然、全く、これっぽちも、ない。
「おにいのなか、あったかかった……」
夢心地で呟いた美影は、刹那の元へと這い寄り、その腹部に手をかける。
「もういっかい……」
引き裂いてもう一度中に入ろうという魂胆なのだろう。
兄のヘソに指をかけ、みちみちと肉を引っ張る妹。
若干、肉が裂けて血が滲み始めた所で、刹那はようやく美影の凶行(いつもの事)を止める。
「待て待て、愚妹よ。目を覚ますが良い」
肩を揺らし、頬を軽く叩くと、やっと彼女の意識がはっきりとし始める。
目の焦点が合い、瞳が兄の姿を映し出した。
「あっ、おはよー。お兄」
「うむ。グッドモーニング。身体の調子はどうかね?」
治療していた事を思い出した美影は、体液まみれの身体を両手で抱き締める。
「ああっ! こんなにお兄の汁で汚されちゃった❤」
言葉とは裏腹に、とても嬉しそうに言う。
「まぁ、汁と言えば汁だな。主な成分は唾液と胃液だが」
「これじゃあお嫁に行けない。
だから責任取って孕ませて貰うしかないね!」
「ああ、責任は取るとも。二年後くらいにな」
「ぶー、ケチ臭いんだー。
借金の返済は早めが良いんだよ?」
「取り立てる側的には、利子が嵩んだ方が良いのではないかね?」
「それもそうだねー」
なんて、いつも通りのやり取りを一通り行い、改めて訊ねる。
「で、どうかね?」
「うーん……」
右手を中心に、各部を確かめた美影は、納得したように頷くと笑みを見せる。
「うん、良い感じ! バッチグー!」
「それは良かった。
悪くなっている部分は全部食べたからね。
そうでなければ困るが」
後半の言葉に反応した美影は、ぶるりと身体を震わせると、頬を赤くしながら恍惚とした表情に顔を弛ませた。
「ああっ、また僕の身体がお兄の血肉になるんだね!
それってとっても、す・て・き❤」
「相変わらずの精神で何よりだ、愚妹よ」
これが目的でわざと怪我を負っているのでは、と、刹那は内心で疑わしく思った。
一番のサイコは愚妹な気がしてきた。
カニバリズムのタグを追加すべきか悩む今日この頃。




