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閑話:命の代価

ごめんなさい。

遅れました。

 その日、炎城家は騒然としていた。


 始まりは、家宰が分家から上がってきた陳情書を纏め、現在の実質的当主である久遠の下に届けようとした事だった。

 彼女の執務室を訪ねたが、何の応えも無い。

 偶然、席を外しているだけかと思い、時間をおいて何度か繰り返す。

 しかし、一向に何の応答もなかった。

 他の使用人に訊ねてみるが、久遠の姿を見た者が誰もいない。


 その時点で、おかしいと気付く。


 久遠は少し突発的な所もあるが、それでも誰にも何も告げずに消える様な事はしない。

 なにより、先日、姿を消した永久の事もある。

 久遠の話によれば、悪党に攫われ、道を踏み外しているのだという。

 血族としての地位を剥奪し、一族の恥を雪ぐ為、優先的に排除せよ、と、生死を問わずの命令が久遠から出されている。


 その事を思い出した使用人たちは、もしや久遠までも、と最悪の可能性に思い至り、騒ぎ始めたのだった。


~~~~~~~~~~


 久遠が目覚めたそこは、血に塗れた拷問室だった。

 赤く染まった拷問用具の数々、血飛沫が散ったと思える床や壁の黒い汚れ。

 薄暗い空間に詰め込まれたそれらは、まさしくイメージする拷問室そのものだ。


「? っ!?」


 目に飛び込んできた光景に、動揺を隠せない。

 ざわめく心に身体が反応し、飛び上がろうとする。


「何ッ!?」


 しかし、身じろぎ一つできなかった。

 見下ろせば、武骨な椅子に両手足を拘束されている自分の身体が見えた。


「なっ、なん! これは……!?」


 動揺が更に加速するが、それを鎮める時間は彼女には与えられなかった。

 闇から這い出す様に、一つの人影が久遠の前に起立する。


「クククッ、起きたようだな、炎城久遠」


 久遠は視線を上げ、おそらくこの状況の犯人と思しき人影に焦点を合わせる。

 だが、それで冷めた。動揺が一瞬にして消え去った。


「……雷裂……刹那……?」

「ふっ、俺の名を知っているとは。無知無能なゴミではないようだな」

「いや、そんな演技はいらないから、離してくれないか」


 刹那が、自分を誘拐し、拷問にかける。

 久遠はその発想を有り得ないと断じた。

 彼は過去をどうとも思っていない。

 そうである以上、わざわざそんな事をする訳がない。


 また、同じ理由で、攫われた自分を助けに来る、などという事もないと判断した。


 二つの可能性が即座に潰され、残ったのは演技、演出だという可能性だ。


 そう考えてみれば、答えは周囲にあった。

 匂いがしない。

 染みついている筈の血の匂いが、まるでしない。


 清掃をしたから、という事はないだろう。

 これだけ分かり易く、血痕が残されているのだ。

 匂いだけ消した、なんて事は考えられない。


 拘るつもりはないようで、刹那はつまらなさそうな顔で舌打ちをする。


「チッ。実に面白くない。

 もっとノリ良く生きてみたらどうだね? 世の中、真面目だけでは生きていけないぞ? ん?」

「だとしても、この娯楽は私の趣味ではない。だから、四の五の言わずに離してくれ」

「まったく。仕方ないな」


 そう言って、刹那は渋々という様子で久遠に施された拘束を外し始める。

 全て外されたところで、久遠は無言で目の前にある刹那の頬を張り飛ばした。


「何をするのかね。暴力的な女だね、君は」

「クッ、ダメージは無しか。自らの非力さが憎いな」


 魔力を込めた一発だった。

 全力ではないが、それなりに強力だった筈だが、刹那に堪えた様子はない。


 悔し気に歯噛みしながら、今の一発で鬱憤を飲み込んだ久遠は、椅子から立ち上がる。


「何の用か知らんが、今度からは真っ当に呼び出してくれ。頼むから」

「考慮しよう」


 まるで心の籠っていない言葉。

 思わずジト目を向けてしまうが、それを気にする刹那ではない。

 嘆息を漏らし、久遠は諦める事にした。


~~~~~~~~~~


 場所を移した二人は、今度は普通の応接室で向かい合って座っていた。


「まずは、通信機を貸してくれ」

「何故だね?」

「お前……」


 素で訊き返された久遠は、信じられない物を見る目を向けたが、すぐに諦めの吐息を漏らし、丁寧に説明する。


「お前、私を拉致してきたのだろうが。

 いきなり当主が消えたのだ。

 今頃、炎城の本邸は騒がしくなっているだろう。

 その状態を長引かせるのは問題だろうが」

「……ああ、成程?」

「どうにも的を射ていない返答だな」

「俺や愚妹が唐突に消えても、雷裂の連中は気にしないからな」

「…………普段、どういう生活をしていればそんな事になるのだ」


 とんでもない家だ、と認識する。

 ともあれ、要求は簡単に通り、通信端末が用意された。


「……ああ。ああ、そうだ。

 予定は決まっていないが、私は無事だ。

 すまんな、心配をかけた。

 ああ、また連絡を入れる。では」


 やはり本家は騒然としていたらしい。

 永久の件もあるので、いきなり姿を消せば思考が悪い方向へ行くのも無理からぬ話だ。

 連絡の取れた家宰に軽く事情を説明して落ち着かせるように指示を出す。


 通信端末を置いて、一息吐いた久遠は、正面、偉そうに胸を反らして見下す様に座っている刹那へと視線を向ける。


「それで、私に何の用なのだ?」


 訊ねると、刹那は端的に答える。


「借金の取り立てに来た」


 久遠は頭が痛いとばかりに眉間を抑える。


「……私は借金をした覚えはないぞ」

「あるではないか。先日、俺に命を救われた事を忘れたとでも? お前、さては鳥並みだな」

「ああ、それか。素直にそう言え。分からない」

「婉曲的かつ情緒的表現を解さないとは。学のない輩はこれだから」


 喧嘩を売っているとしか思えない発言に、久遠の額に青筋が浮かぶ。

 だが、ここで怒っては負けだ、と自分に言い聞かせて、なんとか心を鎮める。


「で、何をして欲しいんだ? それとも金銭でも要求するのか?」

「俺たち雷裂が満足できるほどの金銭を、お前たちの様な貧乏人が用意できるとは思えんが……」

「良いから。挑発は良いから、早くしてくれ」

「挑発? していたように見えるのかね?」

「ナチュラルか、お前。いや、もう、本当に疲れるから、巻きで頼む」

「仕方ないね。余裕のないお前に合わせて、さっさと話を進めてやろう」


 やれやれ、と肩を竦めた刹那は、要求通りに本題に入る。


「では、第一の要求だ」

「複数あるのか」

「当然だ。それとも、お前の命はそれ程に軽いのかね?

 まぁ、そう思うのならば、拒否してくれても構わんが」

「そう言われては聞くしかないじゃないか」


 苦笑を滲ませる久遠。


「それで、だが、まずは〝サクリファイス〟の術式を寄越せ」

「〝自爆術式(サクリファイス)〟だと? そんな物を何に使うのだ」

「そんな事は気にしなくて良い」


 自爆術式(サクリファイス)とは、炎城家に伝わる奥義ともいえる術式だ。

 まだ魔術黎明期に開発され、命と引き換えに明らかに保有魔力以上の威力を生み出す魔術である。

 これを使用した人間爆弾によって、かつての炎城は多大なる功績を上げ、今の八魔へと繋がる基礎を築き上げたのだ。


 とはいえ、それは過去の話。

 ここ百年ほどは使われる事はなく、炎城の深奥で埃を被っている魔術式だ。

 雷裂がそれを求める理由が思い当たらない。


「大体、それくらい、自分で組めるだろう?

 なんだかんだ言って、あれは旧時代の代物だぞ?」


 まだまだ魔術が未熟だった時代に組まれた術式である。

 何度か改良されているが、それでも旧式の物には違いない。

 その為、今の技術なら片手間に再現できると思える。


 何より、目の前の技術者は、純粋魔力化技術を構築するような天才級の頭脳を持っている。

 その頭脳を以てすれば、出来ないなどという事は考えられない。


 だが、そうした思考は、あっさりと否定される。


「お前、俺が何でもできる全知全能の神だとでも思っているのかね?

 術式構築など、俺の専門外だ」

「そうなのか?」

「そうなのだ」


 嘘ではない。

 技術者として、様々な分野に手を出している刹那だが、こと魔術式構築だけは素人同然である。


 というのも、彼が振るう力――超能力に原因がある。


 超能力には、魔術の様に術式というプログラムを組んで、そこに魔力を通す事で発動させる、という面倒な手順が存在しない。

 手足を動かす様に、ただなんとなく、こうしようこうしたい、と思うだけで発現するものなのだ。


 その為、本質的な部分で理解が及ばず、まともに発動する術式を構築できた試しがない。


「雷裂の研究所で作らせてもみたが、どうにも思っていたほどの出力が発揮されなくてな。

 仕方ないからオリジナルを頂戴しようという話だ」

「まぁ、そういう事なら構わんが……」


 あんな骨董品で代価となるならば安い物である。

 少しばかりの不審感を抱きながらも、久遠は了承する。


 刹那は彼女の返答に満足げに頷きながら、話を続ける。


「では、続いて、第二の要求だ。

 炎城永久について、知る限りの全てを話せ」

「…………何だって?」

「世界の敵となっている炎城永久について語れるだけ語れとそう言っているのだ。

 拒否は構わんが、虚言は許さん。嫌なのかね?」


 刹那が訊ねれば、久遠は困惑気味の表情で首を横に振る。


「いや、嫌なのではなくてな。お前が興味を持った事を意外に思ってな」


 あの場で殺す事も出来た筈だ。

 だが、そうする事もなく、痛めつけるだけ痛めつけて、そのまま見逃している。

 だから、てっきり一切の脅威を見出さず、興味もないのだと思っていた。


「興味はないとも。

 だが、あの女怪に良いように踊らされるのも腹が立つ。

 奴があれを惑わした理由など分かりきっている。

 どうせ俺に対する嫌がらせの類だろう。

 ならば、こちらも嫌がらせで返してやるだけだ」


 直接、殴り合った仲なのだ。

 お互いの破壊力くらいは承知している。

 ならば、あの程度の戦力で刹那を害せない、という事は始祖ノエリアとて理解している筈だ。


 それにもかかわらず手を出した、という事は嫌がらせ以外の可能性に思い至らなかった。


(……血族同士で殺し合えば、俺が少しは堪えるとでも思ったのか)


 実に浅い考えだと断じる。

 刹那がかつての血族に何の未練も持っていない事すら見抜けないとは、やる気がないのではないか、と思わずにはいられない。


 嫌がらせを返す、という言葉に、久遠は不安を覚える。

 ごくりと唾を飲み下し、詳細について訊ねる。


「……嫌がらせとは、何をするつもりなのだ?」

「血族同士を争わせようという魂胆なのだろう?

 ならば、望み通りに骨肉の争いを見せてやるだけだ」

「……私に、永久を殺せと?」

「そうするつもりなのだろう? 違ったかね?」

「いや、そのつもりだった」


 そのつもりで、炎城の本家だけでなく分家にも通達してある。


 だが、覚悟と現実は違う。

 果たして、今の自分に永久を討つ事ができるか、と言えば、答えは否だ。

 意志の問題ではない。

 実力として、今では永久の方が上にある。


 その考えを見抜いたのか、刹那は語る。


「まぁ、対処法はそれで良いとして、結果、お前に負けて貰われても困るのでな。

 結局、お鉢が俺に回ってこられても鬱陶しい。

 なので、敵を知り己を知れば、の言葉通りに詳細を知って、万全の対策を立ててやろうという、そんな慈悲の心だよ」

「邪悪な心の間違いでは?

 いや、だが、助かる。

 身内の恥だ。きっちりと私の手で片を付けよう」

「本当に頼むぞ。俺の手を煩わせないようにな」


 そうして、久遠は話し始める。


 永久の能力だけに留まらず、これまでの生活、両親から受けたであろう教え。

 それによって生じた歪みなど、事細かに、時に刹那からの質問を交えながら。


 やがて、話は先日の一幕に及ぶ。


「力が増したのか? 隠していたのではなく?」

「ああ。永久にあのような力はなかった。

 あの女、あー、女怪とか言ったか? あいつの仕業なのか?」

「ふむ。原因は奴だろうが……成程。そうなのか」


 何か、思い悩む様な仕草を取る刹那。

 今までにない様子に、久遠は首を傾げる。


「何か問題があるのか?」

「問題、という程ではない。

 だが、もしかしたら、何かする必要もないかと思ってな」

「? どういう事だ?」

「遠回しに言うが、俺を見て、少し変だと思わないか?」

「お前はいつでも変じゃないのか?」


 入学式での出来事に始まり、普段の行動や美雲から漏れ聞こえる話からして、常識的な人間とは言い難い。


「お前も言ってくれるな。

 まぁ良い。もう少し具体的に言おう。

 今の俺は、あまりに過去に対して無頓着だと思わないか?」


 自分から過去の事に触れる刹那。

 それに、忘れようとしていた心の痛みが僅かにぶり返す。


 久遠は苦い顔をしながら、答える。


「過去を、割り切った結果なのだろう?」

「だとしても、過去の象徴である血族、お前に対してごく普通に接しているだろう。

 本当に何もなく、憎悪や憤怒もないどころか、嫌悪すらないというのは、あまりにおかしいだろう?」

「それは……正直、思うが」


 だが、人の心は分からない物だ。

 そういう人物だったのだ、と思うしかない。

 久遠はそう思って深く考えていなかったのだが、彼の言い方からしてどうもそうではないらしい。


「では、ここで、もう一つ、面白いサンプルを提示しよう」


 そう言って、刹那は何処からともなくリモコンを取り出し、それを操作する。

 すると天井からプロジェクターが降りてきて、白い壁に映像を映し出す。


『ほら、トシ、食え、です』

『ははは、何で君が恋人みたいなマネしてんのか、俺っち、さっぱり分かんねぇんですけど?』

『良いから食え、です。剥きたてのリンゴ、うめぇぞ、です』


 何処かの病室らしく、ベッドに寝かされている緑髪の少年は全身を包帯に巻かれている。

 その傍らには黒髪の幼い少女が座っており、剥いたリンゴをフォークに突き刺し、少年の口元に押し付けている。


「やぁやぁ、トッシー後輩君。彼女といちゃついている所、大変悪いね」

『あ!? な、なんだ、せっちゃんセンパイの声が何処からともなく!?

 悪夢か!?』

『あれじゃねぇか? です。セツ、ヤッホー、です』


 仕掛けられていた通信機に気付いた雫が、視線を合わせて軽く手を挙げる。


「ああ、です子よ。元気そうで何よりだ。

 どうやらトッシー後輩を気に入ったようだね」

『まぁまぁ良いぞ、です。で、何の用だ、です』

「実はトッシー後輩に用事があってね。

 おい、いちゃつくのは後にして、少し質問に答えたまえよ」

『いいいいい、いちゃついてなんかねぇよ!

 俺っち、こいつとは初対面だぞ!?

 いきなり現れてなんか恋人面されて困ってんだよ!』

「素直になりたまえよ。まぁ良い」

『良くねぇよ!』


 刹那は無視した。


「それでだが、トッシー後輩よ。

 正直に答えてほしいのだが、貴様、《嘆きの道化師》の事、今も恨んでいるかね?」

『え? 当然じゃん? 何言ってんの? ボケたの?』

「本当に? それは心からの恨みで憎しみで怒りかね?

 理性で、恨んでいる筈だと言い聞かせている事ではないのかね?」


 刹那の問いかけに、横で聞いていた久遠は息を呑む。


 何らかの要因で、感情は消費されている。

 質問から考えれば、それを証明しようとしている。

 更に考えれば、これまでの話からして、それは力の覚醒に起因すると予想できる。


 久遠の思考を裏付ける様に、訊ねられた俊哉は苦い顔を浮かべる。


『……確かに、前みたいな煮え滾る様な感じはねぇな。

 てっきり、仇が討てて少しは満足したんだと思ってたんだが、その様子じゃ違うみたいだな』

「まっ、それはまた今度な。今は存分に彼女とラブ空間を形成しておきたまえ」

『だから彼女じゃねぇって!』

『おい、トシ、包帯変えてやんぞ、です』

『いやいや、そこはちゃんとプロに頼むから。

 だから、剥がすのを止めろ! あっ、駄目! そこは敏感な場所!

 助けて瑠奈さん! 瑠奈さーん!』

『ウチ、包帯変えんの、プロ級だから安心しろ、です。痛くしねぇから、です』


 訊きたい事は聞けたので、刹那はそれで通信を切る。

 今後の二人の関係がどうなるのか、実に楽しみだ。


「さて、少しは気付いてくれたかな?」

「……力の覚醒には、代価として感情が消費されている、のか?」

「正確には、魂のエネルギーだ。

 それが感情であったり、記憶であったり、あるいは人格であったり、と場合によって違う。

 まぁ、余裕があるうちは感情である事が多いようだがね」


 刹那は、魔の森で生き残る為に、幾度となく強引な覚醒を繰り返してきた。

 その結果として、過去に対する感情を失い、記憶も失い、人格も歪んだ。


 俊哉も、美影に鍛えられ、急速成長の為の覚醒をしている。

 その影響で、彼の中で最も溢れていた感情、憎悪や憤怒が消費され、燃え盛る様な激情ではなくなってしまった。


 その事例に照らし合わせれば、今回、覚醒を経験した永久もまた、何かを消費しているに違いなく、その何かの正体は、その時の彼女に最も強く発現していた感情だろうと考えられる。

 即ち、刹那への憎悪だ。


「案外、その歪みとやらも、エネルギーを失って冷静さを取り戻せるかもしれんな。

 せっかくお膳立てをしようというのに、実につまらん。

 もしもそうなれば、本当につまらない幕引きだぞ」


 冷静になって、客観的に物事を捉えられる様になれば、勝手に帰ってくる可能性がある。

 話によると、元は素直で純粋な娘なようだから。


「そうだと、良いのだが……」


 本当にそうなるならば、嬉しい事だ。

 淡い希望に久遠は、少しだけ笑みを浮かべる。


 続く刹那の言葉が、それを打ち砕くが。


「まっ、やり過ぎると廃人にしかならんから、気を付けんといかんぞ。

 あの女怪が、その辺りを気にかけてくれると良いな」

「ぐっ。お前、実は楽しんでいるだろう?」

「分かるか? 悪だくみは楽しい物だからな」


 と言って、表情を改める。


「しかし、となると、面倒だな。

 最悪、二つ名持ちの魔王レベルまで成長すると考えておくべきか。

 このままでは炎城久遠では勝ち筋がないな」

「……どうするつもりなのだ?」


 自分の力不足は自覚している事だ。

 ここまで言ったのだ。

 何らかの仕掛けをするつもりなのだろうが、久遠には見当もつかない。


「どうするもこうするも、お前も同じ土俵に上がるしかあるまい。

 まっ、それが身に付くかは、お前の覚悟次第だが」

「? どういう……意味、だ……」


 刹那の言葉に首を傾げる。


 瞬間。


 久遠の思考が千々に乱れた。

 唐突に襲い掛かってきた、抗い難い睡魔に負け、彼女の意識は深く落ちていった。


 ソファの上に力無く倒れ込んだ彼女を見ながら、刹那は呟く。


「そういえば、ショゴスはあれと行動を共にしていたな。

 場合によっては、同時に相手にしなければならん、か。

 そっち用の兵装も整えてやらんとな」


 昨日の微睡の中で思いついた兵器があるのだ。

 それの実験台となって貰うのも、面白そうだ。


 楽しい未来に、刹那は邪悪な笑みを浮かべるのだった。


今まででトップクラスに長くなったような……。

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