エピローグ:後の歴史書 with sister's
・スティーヴン=クールソン(2239~2289)
最後のアメリカ大統領であり、最初の統一人類大統領。激動の時代を生き抜いた英傑の政治家。
『自分の代わりは幾らでもいる』を座右の銘として掲げ、常に前のめりの攻撃的交渉を行ってきた。
そのかいもあり、新時代秩序の雛形を作り上げる偉業を達成する。
しかし、その有能さゆえに最期は暗殺されてしまう。
死に顔は、満足げな笑みだった。
享年50歳。
桃「あの方、凡才だけで劇的な人生を送り過ぎでは?」
影『一般人の限界点、って感じだよねー。ラストまで含めて』
・天帝(2199~2612)
不死の超能力を持つ者。戦争後は政治世界から身を引き、悠々自適な隠居生活を送る。
寿命すら無くなっていた為に、人生に飽きた頃に美影に頼んで殺して貰う事となる。
享年413歳。
桃「たかが400年ぽっちで飽きるなんて……。魂が弱すぎです」
影『どっちかって言うと、そっちの方が人間として普通だからね?』
・山田真龍齋五郎(2199~2280)
生存戦争中に重傷を負い、引退を余儀なくされた。
刀と共に生きただけの人生、刀を握れなくなった時、何が残るのか。
引退後は急激に老け込み、畳の上で静かに息を引き取った。
享年81歳。
影『頼るべき才能が一つしかなかったばかりに。かわいそうに』
桃「いや、才能が無ければ開拓すれば良いじゃない、の貴女の精神と比べては……」
・ナナシ(???~???)
生存戦争中に行方不明となる。
公式の記録上は、ほぼ死亡扱いのMIAなのだが、近しい者ほど誰も探そうとしていない辺りに真実が垣間見える。
闇の中に生まれ、闇の中に生き、闇の中へと消えた怪人。
後に都市伝説となる。
桃「……結局、この方ってどうなったんです?」
影『暫くした後にちょっかい掛けてきたからぶっ殺した』
・ヴラドレン=ジェニーソヴィチ=アバーエフ(2065~2278)
人類史上最古の魔王。
ロシア神聖国における唯一の王として生涯を過ごし、最強の看板を掲げたまま、生存戦争に命を捧げる。
その為に、自身の底を晒した記録がなく、後年における〝最強の英雄〟論争において、常に一定の支持者が現れる程度には歴史の人気者。
一部界隈では女体化されたりも。
享年213歳。
桃「当事者としては、あまり良い為政者という印象はないのですけれど」
影『でも、まっ、上手い事死んだよ。偉人ではあるんじゃない?』
・リネット=アーカート(2261~2350)
生存戦争を無事に生き残った若き魔王。その経験値は、破壊神ミカゲへの飽くなき挑戦によって天井知らずに上がっていき、成熟期に入った頃には自他共に認める最強格へと登り詰めた。
後世の論争では色々とあるが、寒冷地帯で戦う限りにおいては〝絶対無敵〟と称されるほどに理不尽存在の一角を占める。
享年89歳。
桃「この方、本当に、最後の最後、死ぬ寸前まで諦めませんでしたよね~。美影さんと張り合うの」
影『お前は早々に諦めたのにな!』
・クリスティアナ=リリー(2250~2326)
生存戦争後、対海精種専属の外交官となる。水中への適性が全てに優先される海精種において、人間種でありながら水中での永続的な生活のできる彼女は、外交官としては異例なほどに歓迎された。
後に海精種の夫を得て、二種族間の架け橋を担う事となる。
享年76歳。
影『僕が遊びに行くと、すっごい迷惑そうにされるんだけど?』
桃「そりゃあ、海水は電気をよく通しますし……」
・ジャック=ストーン(2233~2289)
生存戦争後は、旧知の仲から頼まれ、大統領専属のボディーガードとなる。その立場故に様々な危地に晒される彼を、幾度となく救ってきた、現在の人類の繁栄を支える英雄の一人。
しかし、最後は大統領と共に暗殺されてしまう。初代統一大統領暗殺事件の真相は、後世においても謎に包まれている。
享年56歳。
桃「……犯人、知ってます?」
影『ピエロ仮面』
・ランディ=オズボーン(2241~2299)
黒人実力者という事で、天翼種黒翼派から熱心なコールを受けて移住する。
黒い肌の子を求めて、誰も彼もからアピールされて超絶ハーレムを築き上げる。
精力剤やら何やらを大量に使用して頑張っていたのだが、最終的には耐えきれずに腹上死してしまう。
しかし、その甲斐もあって、次世代の天翼種のほとんどは、彼の血が入っているという常軌を逸した状態となっており、この世代はオズボーン王朝などと呼ばれている。
享年58歳。
桃「いや、ホントに凄かったですよ、あの種馬生活」
影『ある意味、人類で一番の偉人なんじゃないかな。天翼種をたった一人で征服したんだぜ?』
・ツムギ(実質2254~2355)
鬼の才媛として、戦争後は絶大な抑止力を発揮する。破壊神ミカゲと増殖怪獣トワを除けば、最強の暴力装置という事もあり、ノエリア移住組から大変に頼りにされていた。
但し、本人はミカゲやトワと親密な交流があり、巷間はともかく、政治の場において本当に抑止力として機能していたのかは、後世においては疑問視されている。
霊鬼種の政策として、能力及び血筋で選定された4人の男との間に、男児4人女児5人を出産する。
また、恋愛的に結ばれた夫、獣魔種の男との間には、男児2人女児1人を設けている。
ちなみに、彼女が母として認知している子は、後者の3人だけであり、政策として出産した9人の子に関しては、一切の関わりを断っていた。伝わっているエピソードによると、出産後、一度たりとも抱き上げる事すらしなかったらしい。
母となって以降は穏やかな性格へと変わっていき、喧嘩友達だったミカゲやトワとも、平和的な交流をしていた。
享年101歳。
桃「いや、私たちは政治に距離置いてたから、ちゃんと抑止力になっていましたよね?」
影『つーか、あいつ、子供には僕を会わせなかったんだけど。教育に悪いからって』
桃「私には普通に会わせてくれましたのに……」
影『その憐れみの視線が超ムカつく』
・ガルドルフ(実質2244~2324)
獣魔種の戦士であり、鬼の才媛ツムギの夫。
才能では劣るものの、それでも上を目指す心意気を気に入られ、妻と結ばれた。
勝負して勝った方が負けた方を押し倒す、という謎の夫婦ルールが敷かれており、生涯においてほとんど妻に押し倒されて犯されるという受けの代名詞として後世に伝わる。
ちなみに、勝てたことは一度だけあるとのこと。
長きに渡って因縁のあった獣魔種と霊鬼種の友好の架け橋となった。
享年80歳。
影『尻に敷かれててクソ笑えた』
桃「ドマゾ呼ばわりされておりますの、不憫でしたね」
・炎城久遠(2260~2339)
永久のコントローラー役として、大変に、大変に頼られていた。
何かあれば適度に動かし、何かやらかせば燃やし、と、実に波乱万丈な生活を送っていた。
雷裂の系譜を夫として迎え、彼らの力を背景に炎城家を盛り立てていく事になる。
怪物な妹のせいで、平穏とは程遠い人生を送っていたが、なんだかんだで退屈しない良い人生だったと遺した。
享年79歳。
桃「お姉様、お姉様の血筋は私がちゃんと守り続けます。ですから、どうか安らかに」
影『マジでずっと守り続けるとは思わなかったわ』
・ノエリア(???~32505)
惑星ノエリアの守護者として、そして愛娘であるエルファティシアの願い故に、ノエリア由来の命を見守って余生を過ごした。
ノエリアの地で生まれた最後の命、最後の精霊が世界へと還った事で、自らの役目は終わったのだと悟り、誰にも別れを告げる事なく世界へと溶けて消えた。
功罪様々あれど、今の文明があるのは彼女の功績である。それ故に、彼女の喪失は多くの種族、国家、個人に至るまでから悲しまれ、命日は地球・ノエリア文明圏における不動の祭日として認められている。
桃「あの駄猫、ものっそいあっさりと私には別れを言ってきたんですけど……」
影『ああ、〝じゃ、我死ぬから〟って言ったんだっけ? 僕、寝てたから知らないんだけど』
・風雲俊哉 後、碓氷俊哉(2262~2370)
宇宙文明黎明期を支えた禁断のエネルギー機関、豊穣の小月の管理者である碓氷雫の夫。
彼女の夫として、またルーナの筆頭護衛として、常に妻の隣にあった。
旧文明の粋を集めて作成されたオーパーツを所有しており、最強の個人戦力の一角に数えられていた。特に妻の雫からの支援がある状態だと手が付けられず、彼の存命中に彼を越える宇宙戦力は、まず存在しなかったとまで言われている。猶、例外存在である2名は除くものとする。
妻との間に、男児11人女児9人をもうけ、死没寸前には孫や曾孫なども合わせて、3桁にも及ぶ血族がいたのだという。
享年108歳。
桃「人口で文明に貢献した男、とかって称されてるの、何度見ても笑えます」
影『……僕たちは非生産の権化だから、余計にね』
・碓氷雫(2266~2370)
豊穣の小月の管理者として、宇宙文明発展の基礎を支えた偉人。その功績から、〝月の女神〟という敬称を贈られていた。
少しばかり口は悪いものの、優しく面倒見も良かった為に、皆から慕われて最後まで自らの名声を守りきっていた。
ちなみに、そんな女性の旦那に収まっている事で、夫の俊哉氏は随分と嫉妬を買っていたという逸話もある。
夫とは魂が繋がっている為に、秒単位で同時に死去する。畳の上で、並べた布団の中で、夫婦仲良く、子供たちに見守られながら、静かに最後の時を迎えたという。
ちなみに、世界でほぼ唯一、破壊神ミカゲに対して酷く辛辣に当たる人物であり、周囲の者はいつ報復が降り注ぐかと戦々恐々としていたと言われている。猶、その報復がやって来る事は最後まで無かったとか。
享年104歳。
桃「本っ当に、最後の最後まで美影さんにはブリザード対応でしたよね、彼女」
影『もう許してくれても良いと思うんだけどなぁ』
・炎城永久(2264~???)
もはや伝説。全文明史上最強最悪の化物。
無限増殖する万能細胞で全身が構成されており、その身体質量は、最終的に銀河サイズまで膨れ上がったとかなんとか。
非常に扱いに困る身近な怪物ではあるのだが、有事の際にはこれ以上なく頼りになる存在であり、幾度となく文明の危機を救ってきた偉人でもある。
確認されている限りでは、宇宙世紀4600万年台までは確認されているのだが、それ以降は何処にも活動の痕跡がなく、行方不明となっている。
一説では遂に寿命を迎えたのだ、と言われている。ただ、有識者によると、本当に死んでいたら、自分たちの暮らしている大地の大半も一緒に死滅するであろうから、何処かで生きているのではないか、とも。
真偽は不明である。
桃「この頃にこの宇宙でのお姉様の血筋が途絶えてしまったのですよね。だから、もうこっちにいる必要はないかな、と」
影『別宇宙に放逐するとか、特定外来危険生物過ぎるよね。ちなみに、どんな事してた訳?』
桃「え? 色々? 救世の女神やったり、破滅の魔王やったり、善き母になったり、楽しい恋人やったり、性奴隷になったり、ペットになったり、食用家畜になったり」
影『最後の方が、なんというか、節操がないっつーか』
桃「何事も経験ですよぅ、キヒヒ♪」
・雷裂美影(2263~???)
言わずと知れた、我らが破壊神。
宇宙存続を掲げており、正義や人類の味方ではなく、世界の味方である。その為、時として文明に対して、驚く程の破壊を振り撒く事もあった。
とはいえ、基本的には善性であり、喧嘩を売りさえしなければ気の良い女性である。
幾度とない宇宙の危機を救っている守護神ともいえ、皆からは程好く慕われている。
特に別宇宙からの侵略者に対しては、最速で最前線まで駆け付けてくれる為、軍属の者達からの信頼は絶大なものとなっている。
彼女自身の目的意識などは記録にはない為、いつまで人類に寄り添ってくれるかは分からないが、我々と神との蜜月が末長く続く事を祈っている。
影『対侵略者戦だと、お前って超便利。最大サイズで敵にぶつけるだけで雑魚は一掃できるんだもん』
桃「あー、あのたまに呼び出されていきなり投げられるあれって、そーゆー」
影『気付いてなかったの?』
桃「太陽が細菌の生死を気にするとでも?」
影『サイズ差ヤベーwww!』
最後の歴史書【人類文明】より抜粋
メインは全部書いたと思いますが、誰か知りたいってキャラがいたら、言ってくれたら追加します。
あと一話で最終話。
明日、投稿します。