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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
終章:永劫封絶の刻
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未来創造

 燃え上がる戦場。

 その中で、異形の勢力が激突する。


 一つは、言わずもがな。

 星獣から分化した腐肉の軍団。

 統率もなく、敵を倒し、喰らい尽くすという本能にのみ支えられた暴虐の集団だ。


 そして、もう一つは、瓦礫の軍勢だ。

 大地や瓦礫をなんとなく生物の形に整えただけの、粗雑な団体。


 まともな生物の姿が見えない二つが、燃える大地の上で戦っていた。


 数の上では腐肉が勝る。

 しかし、連携という意味では瓦礫が遥かに勝る。


 統率の取れた瓦礫の軍団は、乱雑に見えながらも相互に支え合い、着実に腐肉を叩き潰していた。


「あっつ! 熱い、焼けちゃう!」

「んふぁ~ん、と~け~ちゃ~い~ま~す~」


 そこへやって来た美雲と永久は、文字通りに燃えている大地の洗礼を受けて、這々の体で高い場所へと逃げ出していく。

 なんとも情けない姿だが、二人ともに熱耐性はさほど高くないのだから、仕方がない。


「久遠ったら、はしゃいじゃって淑女らしくないわね。もっとお淑やかに戦えないのかしら」

「お姉様は、割と泥臭い感じなので。仕方ありません」

「聞こえているぞ、馬鹿者ども」


 文句を呟いていると、両者の背後に巨大な影が轟音と共に落ちてくる。


 鉄巨人。

 まさにそうとしか言い様の無い怪物である。


 その肩には、赤い炎髪を靡かせる女性が一人。

 炎城久遠である。


「あっ、お姉様ー。もうちょっと熱量抑えて下さぁい。私、溶けちゃいそうですよぅ」

「出来ん相談だな」


 姉の姿を認めた永久の要求をさらりと却下して、久遠は巨人の手を差し出す。


「乗れ。グズグズするな。あまり時間はないぞ」


 激化していく戦場は、ところどころに綻びが見え始めている。

 封印剣の担い手たち……特に雫の参戦により、多少は持ち直したが、それでも数の差は厄介に過ぎる。


 雫の活躍によって、魔力の消費については抑えられている。

 しかし、彼女が一度に転送できる魔力量には限界もあり、優先順位を付けている為にどうしても後回しになって余力を磨り減らしてしまう場もある。


 加えて、体力や精神面については、回復せずに目減りしていく一方だ。

 様々な薬剤や魔術によって誤魔化しているが、終わりなく押し寄せる敵勢に、皆の心は加速度的に疲弊していた。


 このままでは、持たない。

 早期の決着が必要だ。


 その為には、美雲が先に進まねばならない。


「お邪魔します」


 差し出された巨腕へと乗り込む。


「あ、待ってー」


 そのまま持ち上げられようとした手に、置いていかれそうになった永久が飛び付く。

 そして、とろけた腕が身体の重さを支えきれず、ずるりと落ちてしまった。


 久遠は、それを無視して、戦域の端を見据えてイフリートに腕を振りかぶらせる。


「ねぇ、久遠」


 投擲に身構えながら、美雲は友人へと話し掛ける。


 そう、友人だ。

 世界の中に、自らと家族くらいしか置いていない美雲において、大変に珍しい分類をされた者の称号である。


「貴女、楽しんでるかしら?」

「……今現在を、楽しめる程に戦闘狂のつもりはないのだが?」

「ああ、訊き方が悪かったわね」


 美雲は、眼下へと視線を向ける。


 そこでは、全身が燃え上がり、火達磨になって慌てている永久がいた。

 そうしながらも、近付く有象無象を潰して回っているのだから、なんだかんだでプロ意識が高いと言うべきか。


 愉快な娘である。

 決して〝友人〟にはなり得ないが、見ていて楽しい玩具だ。

 末長く大切に見守っていたくなる。


「未来に、希望は持ってるのかしら?」


 美雲の視線を追った久遠は、目を細めながら確かに頷く。


「勿論だとも。私はここで死ぬ気はないし、幸せに畳の上で最期を迎えるさ」

「そう」


 その答えに、満足する。

 友人が未来を欲するなら、自分がその未来を作ってあげるべきだろう。


「じゃあ、早く終わらせないとね」

「…………頼んだぞ」

「任せておきなさい」


 ぶん投げた。

本当は他の戦場も描くつもりだったけど、全部描くと冗長かな、という事で知り合いだけで他はカット。


ウッキー軍団・エルフ・ドワーフ連合戦場。

雲「地獄じゃない?」

永「なんでも、方舟の中の廃棄領域毒素とか、ウランだかプルトニウムだかを取り込んで変質したみたいですよ?」

廃棄領域の毒を取り込んでダークエルフになったエルフと、通常攻撃が核爆発となったドワーフ、そしてせっちゃんの愉快な猿仲間たちの戦場を見ながら。



みたいな感じな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 永久ちゃんを玩具扱いしてる様に、超ナルシストである美雲にとって、自分以外は『モノ』でしかないんですね~。 何せ、実妹の美影すら『最も価値のあるアクセサリー』ぐらいに思っているらしいですし。 …
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