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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
八章:破滅神話 後編
332/417

Dieジェスト そのいち

監督:刹那

脚本・演出:美影

ナレーション:美雲


協賛企業:ノエリア(不本意)

第一話:復讐の始まり・表



「クククッ、これが……! この力さえあれば! 僕を捨てたあいつらに! 俺を見捨てた世界に! 復讐できるっ! してやる……!」


『邪神より授かりし〝簒奪〟の力。その力は凄まじく、人間ギリムは次々と周辺の魔物を取り込んで自らの力へと変換していました。』


「流石デス、ゴ主人サマ」


『高揚する彼の傍らに侍るメイド――アルファが、高まっていく力に抑揚の無い声で称賛の言葉を送りました。』


『ギリムは、その称賛に気分が良くなります。今まで誰も見向きもしませんでした。そんな鬱屈とした経験の反動から、ただの小さな言葉でさえも心を上向きにさせます。』

『しかし、同時に疑わしくも思っています。アルファは、邪神から付けられた従者です。つまりは、監視役なのでしょう。100%信じられる筈もありません。』


(……いつか、こいつも〝奪って〟やる)


『今はまだ、する訳にはいきません。肌で感じています。邪神には敵わない、と。それどころか、あれに付き従っていた暗黒の巫女、トクメイ=キボウにすら届かない、と。』

『まだ何も為していません。だから、終わる訳にはいきません。その為ならば、人形として踊り狂ってあげましょう。』

『ですが、いつの日か。』

従者(アルファ)も、巫女(トクメイ)も、主人(カミ)さえも、喰らい尽くしてみせます。』

『ギリムは、固く心に誓いました。』


「やぁやぁ、精が出るねぇ~」


『そこへ、にこやかな笑みを浮かべたトクメイ=キボウがやって来ます。』


「……何の用だ」


『誓いの直後故に、声が硬くなります。あるいは、自身の反逆の心を見抜かれているのでは、と警戒心を抱きました。』

『しかし、それに気付いているのかいないのか、トクメイ=キボウは彼の様子には言及せず、別の話題を切り出します。』


「うんうん、そろそろストレス貯まってくるんじゃないかなー、って、思ってね」

「……別に。不満なんざねぇよ」

「いやいや、強がらなくても良いよ」


『パタパタと手を振ったトクメイ=キボウは、わざとらしく大袈裟な仕草で演じます。』


「〝俺様は凄い力を手に入れたぞ!〟〝あいつにも、あいつにも、俺様を舐め腐った雑魚どもを蹴散らして!〟〝天下の全てに俺様の名を轟かせてやる!〟〝誰もが俺様を怖れて!〟〝跪く世界にしてやるんだ!〟」


『それは、ギリムの偽らざる本音でした。一切の建前や装飾を取り払った、彼の望みです。』


「じゃあ、こんな暗がりでただ鍛えて研ぎ澄ませているだけの時間は、つまんないでしょ? ねっ?」

「…………、……チッ」


『違う、否定する事は出来ます。しかし、変に意地を張る事は情けないのでは、と思いました。』

『とはいえ、見透かされてしまった事は不快に思わずにはいられません。』

『だから、そっぽを向いて舌打ちをしました。』


「むふふ、そんな君に朗報です!」


『トクメイ=キボウは、何かの道具を取り出すと、空中に映像を映し出しました。』

『それは、うっすらと氷がこびりついた洞窟の中です。おそらくは、この魔物領域の何処かでしょう。』

『そして、そこには二つの人影がありました。』

『獣人と鬼人です。』

『彼らは、服をはだけた様子で肌を重ね合わせていました。』

『変に考えるまでもありません。情事の真っ最中でしょう。』


「あい、つら……!」


『ギリムの心が燃え上がります。己を貶めた連中、その筆頭にいる男女なのです。そいつらが、自分の生死も放って、今を楽しんでいるのです。』

『黒く、黒く、心の全てが憎悪が塗りあげられていきます。』


「さぁ、始めようじゃないか。復讐って奴をさ」


『トクメイ=キボウの言葉がギリムへと染み渡ると、彼は凄惨な笑みを浮かべるのでした。』



~~~~~~~~~~


第一話:復讐の始まり・裏



「ふぅ……」


 上映された一幕を終了して、美雲は吐息しながら台本を閉じる。


「どうだった? レクリエーションの映画は面白かったかな!?」

「とっても笑えたであるデスネ! 続きは無いのであるデスカ?」

「んー。これ、リアルタイム撮影だからなー。まだ続きは……」


 そこまで言ってから、美影はガルドルフとツムギへと言葉をかける。


「あっ、そろそろ出番だから用意しなよ! ちゃんと体の用意は出来てるから!」

「あ、そーだねー。じゃー、ガルドくん、いこっかー」

「……はぁぁ、マジでやんのかよぅ」


 ツムギは楽しげな軽い足取りで、ガルドルフは憂鬱そうな重い足取りで、連れ立って立ち去っていった。

 何をしに行ったのか、と聞く気は誰にもない。今の一幕を見ていれば、この先の展開くらいは分かる。


「……復讐を遂げさせるのではないので御座いますか?」


 見ていたが、ギリムの今の力ではツムギには当然として、ガルドルフにも勝てないだろう。あるいは完全な奇襲を極めれば可能性がない事もないだろうが、そこまで出来る時点で力の有無は割と関係ない。

 つまりは、ごちゃごちゃと言うまでもなく、返り討ちに遭うしかないという事だ。


「え? それじゃ実験が終わっちゃうじゃん。もっと道化には踊って貰わないと」

「うむ。その為の小道具として、彼らには劣化クローンを用意している。身体能力及び魔力流路共に未発達の、見た目だけ模しただけの身体だよ。真面目にやっても、まぁ流石に勝てないのではないかな」


 なんと言っても、劣化体ではいつもの調子はまるで出せない。ついいつものクセで戦おうとすれば、その時点で崩壊を始めてしまうくらいに脆く儚い身体だ。

 それだけ弱体化していれば、流石の二人でも勝てない筈だ。きっと、多分、おそらく。勝たれては困るし。

 それでも勝ってしまった場合は、モルモットの雑魚さ加減に唾を吐いて、新しいモルモットの選定を始めなくてはならなくなる。


「さぁさ! という訳で第二話の撮影と上映を始めようかな……!」

「ワレも手伝うであるデスヨ! こんな面白いコト、参加しない訳にはいかないであるデスネ!」


 意気揚々とカメラの準備を始める美影に、スピリも合流してしまう。

 残酷な人間と邪悪な悪魔が手を組んでしまった。


「……趣味が悪いと言われぬか?」


 ゼルヴァーンが問えば、刹那は記憶を思い返して答えた。


「無いね。性格が悪いとはよく言われるが」

「さもありなん」

色々と書き直している内にこんな形に。


しばらくこんな感じな裏表編で行こうかな、と。

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