コイバナ≠パジャマパーティ(後編)
クソどうでもいい事ですが、最近、ポケモン縛り動画にはまっています。
長さの割に更新が遅くなった理由はそれです。
平に御容赦を……!
デリバード一匹プレゼントオンリー縛りって、控えめに言って頭おかしいんじゃないですかね。
よくもまぁクリアできるものよ。
「じゃあ、次はラヴィちゃん、行ってみよー!」
ツムギの話が一段落した所で、次なる生け贄に言葉を投げた。
「……私に、御座いますか?」
「うんうん、そうそう。興味津々よ?」
上位種、と謳うに足るだけの力量があった。
たまたま相性の良い技を持っていたが故に、制限を受けていた状態でも戦えていたが、それが無ければ叩き伏せられていただろう。
彼女に正面切って勝てると言える者は、果たして地球にはどれ程にいるのか。
自分は勝てる。
愉悦ピエロがぶら下がっていなければ、余裕だ。
対抗技の元祖である同僚も、まず間違いなく行ける。
あれは、魔王連合による飽和砲撃すら突破してのけた実績があるのだ。
天翼種にとっては、天敵と言っても過言ではない。
ロシアの最古も、まぁ出来なくはない。
近付かれるまでに、あれが保有する〝命〟を削りきれるかどうかが分かれ目だが、単純な耐久度も高いので出来なくはないだろう。
あとは、精々、永久くらいのものだ。
あれも不死性がヤバい事になりつつあるので、もはや倒そうと思って倒せるものではない。
それだけだ。
あとは、どんな魔王を連れてこようと、どんな軍隊を用意しようと、ラヴィリア一人で殲滅出来る。
圧倒的強者だ。
生物的性能として、最初から強いのは気に食わない点があるが、それはそれとして強さには敬意を払うべきだと一人の武人として思う。
(……それに、それだけじゃなかったしね)
美影は、ラヴィリアの戦いを間近で見た。
敵対者として体験した。
だから、彼女が決して天性の能力にかまけた、獣ではないと理解している。
研鑽の痕があった。
より強くなろうと、より上手くなろうと、努力した痕跡が見て取れた。
だから、素直な興味を抱いた。
――こいつはどんな人間なのだろう、と。
故に、訊いてみる。
「ふむ……」
対して、訊ねられたラヴィリアは、腕を組んで思い悩んでしまった。
彼女は、彼女の種族は、おおよそ恋愛というものから程遠い生態をしているが故に。
ラヴィリアは、ちらりとツムギを見やった後、語り始めた。
「では、先達に倣いまして、天翼種という物から語りましょう」
言って、美影へと訊ねる。
「どれくらいの事を知っているので御座いましょう?」
「そうだねー……。始祖精霊に創られた、ってくらいかな? 確か、白と黒の始祖なんだっけ? エルファティシアってのは知ってるけど、白の方は知らないなー」
「……黒様を知っているので御座いますか?」
「うん、あいつは地球に来てるからね」
美影は、隠す程の事でも無い為、足元を指差して言う。
「こいつ……方舟の片割れを担って、星の未来を載せて来たから」
「…………貴女は」
やや掠れた声で、ラヴィリアは訊ねる。
「貴女方は、黒様を受け入れたので御座いますか?」
「まぁ、一応ね。積極的に敵対したい理由が無かったから」
「そう、で、御座いますか……」
今でこそ、精霊の生態を知っている為に、交渉時点で大した力を発揮できなかったと分かっているが、当時はヤバい連中だと思っていた。
加えて、大きな戦争の直後で、各国ともに余力に余裕が無かった事もあり、受け入れざるを得なかったのだ。
そして、現在、火星の開発が思わぬ程に急速に進んでいる事もあり、向こうから敵対しない限りは排除しない、という方向で落ち着いている。
どんな思惑があったにせよ、結果としては受け入れたのだと言えるだろう。
嘘の混じっていない言葉に、ラヴィリアの警戒心は目に見えて解れていた。
彼女は――天翼種は、創造主である白と黒の始祖精霊を、殊更に信奉している。
それこそ本物の神として崇めているのだ。
だから、その神が片割れにせよ無事に逃げ延び、逃亡先が快く受け入れてくれたという事実は、大いに安堵する事であった。
「そもそも、精霊種には女性の方しか御座いません」
「…………そういえば、そうですね。老若の差はありますけど、男性体の精霊の方を見掛けた事はありません」
「はい、意図的に男装していなければ、全てが女性体として生まれます。その影響……なのでしょうね。私たち、天翼種もほとんどが女性として生まれます」
「? じゃあ、どうやって増えてんの? 分裂?」
「まさか、アメーバでもあるまいに」
「「…………」」
そんなまさかな生物が割と身近にいる身としては、なんとも微妙な気分にならざるを得ない。
永久の生殖及び繁殖機能はどういう事になっているのだろうか。
今まで気にした事は無かったが、疑問に思うととても気になる事項だ。
「ほとんどが女性というだけで、男性の天翼種も僅かに存在します。そうですね、割合としては一万人に一人、という所で御座いましょうか」
「……それは、中々にシビアな数字ですね」
「ええ、とても。なので、同族の男性は私たちにとって、種族の存続に関わる重大な宝と言っても差し支えないでしょう」
種族存続の為に、男の天翼種は生まれた瞬間から種馬として使われていく一生が決まる。
それをどう思うのか、他種族の男には羨ましいと思えるものかもしれない。
なにせ、天翼種の女性は美女ばかりである。
タイプも様々で、判子で押したような似た顔立ちばかり、という事もない。
普段は上位種として高慢に振る舞っている魅力的な彼女たちを、彼らだけは好きなだけ侍らせて性交する事が出来るのだ。
他種族の男からすれば、相当に羨ましいものだろう。
しかし、現実として、天翼の男に訊ねれば、そこまで有り難がってはいない事が分かるだろう。
確かに大事にしてくれる。
どんな願いだろうと、彼女たちが叶えてくれる。
それが当たり前なのだから。
贅沢も、それがいつもいつまでも続けば、それはただの日常でしかない。
そんなものを、どれだけ有り難く思えるのだろうか。
決して不満はない。
他種族の男が、日々を生きていく為に、魅力的な番を得る為に、どれだけ苦労しているのか知っている。
だから、自分が恵まれているとは分かる。
抜け出して、同じ苦労を背負いたいとは、間違っても思わない。
だが、そこまででしかない。
女を侍らせる事も、女と交わる事も、彼らにとっては日常で義務なのだから。
ちっとも楽しいものではないのだ。
籠の鳥。
自由はなく、ひたすらに管理された、種馬としての人生だけが彼らの一生である。
そして、その不自由は、決して男性だけのものではない。
「さて、本題に戻りますが……。そんな天翼種において、自由な恋愛というものが許されるとでも思いますか?」
「……あー」
まさに、彼女たちにとっては、種族が滅びるかどうかという瀬戸際の問題なのだ。
一人いれば、単純計算で一万人の天翼種の女性――性交妊娠は許可制なので、実際には精々数千人くらいだが――に種を蒔ける男を、果たしてたった一人の女の恋心の為に明け渡せるのか。
答えはノーである。
「天翼種において、同族の異性への恋愛は〝大罪〟に御座います」
恋心を抱くまでは、内心の自由という事で流石に許される。
しかし、実際に行動に移した瞬間、それは最低で追放刑、大体は死刑が確定する紛う事なき大犯罪扱いである。
ちなみに、他種族の男を狙う分には、何の咎めもない。
それで発散できるのならば、むしろ望む所という扱いをされる。
人間で言うところの、犬猫や家畜に恋するような奇特な趣味に分類されるのだが。
「故に、私はこの場で語るような何かを持ち合わせておりません」
そもそも、恋って何?
それがラヴィリアの本音である。
既に優秀な遺伝子を持つ母体という事で、かれこれ十人以上の異父子を出産している彼女だが、どの〝父親〟に対しても、特別な感情を持った事はなかった。
「…………うん、その、ごめんね?」
流石の美影も、素直に謝った。
異次元文化過ぎる。
まさか、恋愛が罪などという文明が存在するとは、夢にも思わなかった。
「分かって下されば、それで良いので御座います。異文化交流が目的に御座いますから」
「……うん、ありがと」
たまに男女比狂った世界観作品あるけど、そんな世界だと誰か一人に執着する感情と行動は、大罪にしかならないと思うんですよね。
男にせよ、女にせよ。
戦力的にはヤベー種族です、天翼種。
ラヴィリアは随一の戦士ですが、決して地球で言う魔王たちのような特別に優れた個体ではありません。
そして、現在の全人口は10万人弱程度ですが、その全てが【自然回帰】を使えます。練度の差はありますが。
ぶっちゃけ、全員が魔王級と言っても良いでしょう。
下位種が総力を結集しても、本気で相手にならない超戦力種族です。
星を支配していないのは、同格の地竜と妖魔がいる他、精霊と天竜という更にヤベー連中がいるからです。
もしも、地球に生まれていれば、人間なんて滅ぶか家畜か、二つに一つだったでしょう。
但し、時代が悪い。
美影たちの時代に来ても支配は不可能なのです。
だって、彼女の同僚がナチュラル天敵やっているもんで。
魔力投射系に対する絶対優位を誇る彼ならば、10万の魔王軍団すら単独で屠り切ります。
相性差って悲しいね。ポケモンで学んだよ。