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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
八章:破滅神話 後編
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モルモット観察

繋げても良かったのですが、結構長くなったのでこっちだけ独立させました。


本日二話目です。

 ある程度話が済んだところで、唐突に、スピリは周囲を見渡して問いかける。


「ところで、人間種は良いであるデスカ? いないであるデスヨ?」


 惑星ノエリアでの常識として、種族単位が一種の国家単位である。

 ならば、仮にも人間種を名乗っている刹那たちは、人間種(ハゲ猿)には同胞として特大の配慮をすべきなのだ。

 それが、彼らの常識である。


 とはいえ、それは人間しかいなかった地球人類には、適応されない常識なのだが。


「ああ、あれか。まぁ、人間は地球には腐るほどにいるのでね。正直、連れていくぐらいなら、その席分を君たちに分けた方が良いと思っている」

「……マジで言っているであるデスネ」

「とはいえ、まぁ成果を出してくれれば、少しは席を用意しても良いとは思っているよ」

「成果?」

「そう、成果だよ。モルモットとしてね」


 薄く酷薄に笑みながら、刹那は機材を操作する。

 すると、中央部にあった立体映写機が反応し、何処かの洞窟内を映し出した。


『俺は! 俺は究極の力を手に入れたぞ! これで、この力で! あいつらに! 世界にッ! 全てに復讐してやるッッ!!』

『流石デス、ゴ主人様。貴方様コソ、世界ノ王ニ相応シイ御方デス』


 そこでは、てっきり死んだと思っていた人間種の元仲間――もうパーティ解消手続きしてるし――であるギリム少年が、なんだか怪しげなオーラを立ち上らせて叫んでいた。

 その傍らには、メイド服を纏った女性が、何処か抑揚のない声で褒め称えている。


 なんとも香ばしい映像である。


「……んあー」

「ぶははははははっ……!」


 とっくに舞台裏から見ていたガルドルフは呆れたように気のない吐息を漏らし、ツムギは指差して笑っていた。


「見たまえ。彼こそが、実験体(モルモット)二号だ。一号のゴブリン君ほど、期待が持てないのが残念極まる」

「貴様ら、人の心を持っていないのか?」


 ドン引きである。


「仮にも我々と同じ種族なのだからね。鍛えれば良い所いくのではないか、と思ったのだよ。まぁ、どうにも芳しくないのだが」

「ホホゥ? 何をしたのであるデスカ?」

「ああ、妖怪猫……ノエリアを真似てね。この猫は、本来、魔力を持たない地球人類に魔力を植え付ける事をしたのだ。なので、逆にこちらからも力を植え付けてみたのだよ、君たちの星にはない力を。それを使いこなせて見せる事が出来るのならば、少しばかり席を割いてあげても良いのだがね」

「……力、とは、どれ程の物に御座いますか?」

「ふむ……」


 問いかけに、少しばかり考える。

 並んでいる面々を見渡し、端的に答えた。


「まぁ、下位種の精鋭程度には、頑張れば勝てる程度だろう。そこの鬼娘や、三種の上位種、そして精霊種や天竜種には、まず勝てないだろうね」

「……凄いと言えば凄いけど、なんとも微妙な」

「本気で与えた力を物にすれば、それらを上回り地上最強へと至る可能性もあろうが……」


 なにせ、〝星を喰らう獣〟の断片である。

 その潜在能力は、それこそ星の力を一心に受け止める刹那やノエリアさえも超えかねない。

 完全に同化できれば、それこそ全生物を越えた最強生物となれるだろう。


「しかし、そこまで行くと自我の崩壊は不可避故に、やはり本人の目標である復讐とかは無理だろうね」

「救いの道がないであるデスネ。楽しくなってきたであるデス」

「ふふっ、話には聞いていたが、妖魔種とは良い酒が飲めると思っていたのだよ。良い趣味だ」

「ワレも、人間種への評価が爆上がりであるデスヨ」


 ぐっと頷き合う外道二人。

 周囲はドン引きせずにはいられない。


「隣の女性は、貴方方のお仲間に御座いますか?」


 メイド服を纏った女性を指して、ラヴィリアから問いが飛ぶ。


 とても整った、人形のような美しさを持つ女性である。

 先程からギリム少年の言葉を全肯定しており、どうにも煽っている様にしか見えない。


「ああ、あれかね」


 指摘に、刹那が指を鳴らす。

 すると、この場に一体の人型が転移させられてきた。


 画像の中の女性と瓜二つの容姿。

 違いと言えば、映像の中ではメイド服を着ているのに対して、こちらは一切服を着ていない全裸であるという事だろう。


「ベータ、Zコードを」

「了解シマシタ」


 刹那の命令に、ベータと呼ばれたそれは、即座に従う。


 結果。


 彼女の全身が花開いた。


「「「っ!!?」」」


 全身の肌に亀裂が入り、中身を大きく展開していく。


 開かれた中身には、肉の色が一切無かった。

 金属やプラスチックなどの無機物ばかりで構成されており、つまりそれが生物ではなく、人形である事を示している。


「ほぅ……!」


 鉱精種(ドワーフ)の男が、その精緻を極めた構造美に、感嘆の声を漏らす。


「とまぁ、広義では我々の仲間だね。単なる人形だが」

「人形に自我が芽生える、という現象は、物語のお約束であるデスヨ?」

「安心したまえ。あれに搭載している人格は、人口無能という拡張性の一切存在しないものだ。男心をくすぐる〝女のさしすせそ〟しかインストールしていない単調ぶりだよ」


 さ(さすが)し(知らなかった)す(すごい)せ(センス良い)そ(そうなんだ)という言葉しか吐かない単純ぶりである。

 もしもの裏切りの余地など残さない為に、そんな旧式のAIを搭載しているのだ。

 当然の措置である。

 更には、魔力の本場故に、よく分からん変質があるかもしれないという事を考慮して、自爆装置も付属させてある安心設計をしている。


「クックックッ、実に愉快な事よ。我が掌の上で他人が躍る様は、実に心が温かくなるものだ!」

「イヤー、全くその通りであるデスネ! ワレも楽しませて貰うであるデスヨ!」

「うぷぷぷ、あたしもたのしみだよー。どれくらいもちこたえるかなー?」

「……俺様は、あれが哀れでならねぇよぅ。まぁ、嫌いだから助ける気もねぇんだがなぁ」


 人が笑い、悪魔も笑い、鬼も笑う。


 そのあまりにも救いのない扱いを受けているギリム少年に、他の者たちは心からの憐憫を向けるのだった。

 尤も、やはり誰も助ける気はないのだが。


(人間性が)腐るほどいるもんで。いらないかなって。


どうでもいい事なんですが、ふと思う。

この作品、一応、バトル物なのに王道の剣とか刀を武器にしてる奴がメインキャラにいねぇな。


刹那:うん、まぁ、あれよ。

美影:拳系。

美雲:銃、砲、要塞(!?)。

久遠:弓、人造悪魔(!?)、巨大ロボ(!?)

永久:一応大剣(だけど、あれ、ただの砲身としてしか……)、あとはもう肉弾系。

俊哉:鉄腕。ムラクモが剣と言えなくもないけど、あれってアマテラスを押し固めただけの爆弾だしなぁ。

雫:武器なんて持ってねぇよ。病弱御嬢様に何を求めてんだ。

ノエリア:羽衣。

ガルドルフ:爪。牙。

ツムギ:拳系。あとは魔力糸。

ゼルヴァーン:剣と言えば剣だけど……。

ラヴィリア:槍……に見せかけた連接剣。

スピリ:一応、ナイフ? か? 幻惑系故に……。


王道武器がねぇなぁ。

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