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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
八章:破滅神話 後編
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君たちに決めた

ここに至るまで、を具体的に書いていくと、それだけで章が終わりかねないので、省略。


その内、ダイジェスト版とかをあとがきで載せるかと思いますわ。

 そして、現在へと戻ってくる。


 見つめ合う邪神と異形の集団。

 妙な緊張感が、両者の間に流れる。


 邪神に顔らしい部位が存在しない為に定かな事は分からないが、少なくとも『崩壁の誓い』を認識していそうな事は分かる。

 そこまでしか分からないとも言うが。

 何を考えているのか、そもそも思考回路があるのかさえ、その姿からは判別できない。


 一方で、『崩壁の誓い』である。

 彼らは彼らで困惑の中にいた。

 明らかに邪悪で醜悪な造形であり、平素で出会えば一目散に逃げるか攻撃を仕掛ける所だ。


 しかし、一応は紹介された相手なのだ。

 何らかの思惑が含まれた経緯があるが、ただただ自分たちを抹殺する為に魔物を差し向けた訳ではない、筈だ。

 それであれば、あまりにも杜撰というか、こちらを甘く見過ぎていると言うべきか、ともあれ正気で立てた作戦とは思えない。


 なので、目の前のそれは、姿形こそ醜悪極まりないが、きっと理性くらいはある筈だ。

 そうであって欲しい。そうでなければ困る。


「はああぁぁぁぁぁぁ…………」

「うぷぷっ」


 案内した当の本人たちは、獣は疲れ切ったように深い深い溜息を吐き出し、鬼は口元を押さえて楽し気に笑いを堪えている。


 沈黙。

 お互いの出方を伺うように、囁き一つ漏らすどころか、微動だにしない。


「……なぁよぅ、こんな予定あったかぁ?」

「きいてないねー。あそびごころじゃなーいー?」


 仕掛人二人は、顔を寄せ合ってヒソヒソと互いにだけ聞こえる声量で言葉を交わす。


 当初の予定では、こんな筈ではなかった。

 もっと穏便に、平和的に対話するつもりであったのだ。


 二人にとっては、もはや見慣れた――細かいビジュアルは初だが――姿だが、慣れていない者たちにとっては、新手の凶悪な魔物にしか見えないだろう。

 あるいは、どこぞの違法な魔法研究所で開発された魔法生物か。

 その辺りが関の山だ。


 正直なところ、警戒心を抱きつつもいまだ手を出していない現状が、既に奇跡の類に思えるほどである。


 どういう思惑なのか、ここからどう推移するのか。

 仕掛人の立場にあるにもかかわらず、全く分からない有様となっていた。


 ゴクリ、と誰かが生唾を飲み下す様な音が聞こえた。


 それを合図に、のそり、と、化け物が体勢を変える。

 不自然に身体を捻った体勢から、こちらを正面に見据える体勢へと。


 構えた武器を持つ手に、力が入る。

 積み重ねてきた経験値故に、遠くなってしまった恐怖という感情が彼らの心の底から湧き出していた。


「……魔物、ですか? 攻撃をしても良いのでしょうか?」


 ラヴィリアが、槍を下段に構えたまま、案内してきたガルドルフとツムギへと言葉を向ける。


 二人は首を傾げた。


「どうなんだろうなぁ」

「こんなよてい、なかったからねー」


 使えない、と皆が思った直後の事。


 力を溜めるように、化け物の姿勢がぐっと下がる。

 全身がたわみ、そこからもたらされる次の行動は、明らかであった。


 突撃である。


「『【ゴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ! ニ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ヂワ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッッ!!!!】』」(※日本語発音)

「「「うおぉぉぉぉぉ!!?」」」


 全く意味の分からない、雄叫びのような叫びをあちこちに貼り付いている口から吐き出しながら、その化け物は大量の足を気色悪い動きで高速で動かしながら突っ込んできた。

 吐き出される声音は、金属の擦れる様な耳障りな音をしており、それに加えて滴る黒い粘液も撒き散らされている。

 かなりの重量があるのか、一歩ごとに地面が割れて足跡が付き、足音が振動となって伝わってくる。

 腕なのか触手なのかも分からない無数の部位が振り回され、実体以上の威圧感と不気味感を与えていた。


 怖い。とても怖い。

 思わず攻撃を加えてしまう程に。


「ぬぅああッ!」


 ゼルヴァーンが下げていた大剣を下から跳ね上げるように振るう。


 とっさの行動であり、速さはあるが、力が乗っているとは言い難い。

 それでも、上位種の中でも身体能力に秀でた地竜の膂力は、大抵の生物を一刀両断に切り伏せられるだろう。


 気味の悪い怪生物だが、それでも魔力を持たない生き物だ。

 きっと通用する。


 そして、実際に、今のそれは〝力〟の節約の為に自身の防護を解除していた。

 なので、当たりさえすれば、確かに両断される結果になっただろう。


 雷光が奔った。


「せいやぁ!」

「なにッ!?」


 雷が落ちる。

 それは重さを伴っており、つまり殺意が込められていた。


 超反応したゼルヴァーンは、大剣の軌道を強引に引き寄せ、迎撃する。


 撃音。


 激しい音を立てて、蹴り足と肉厚の刃が拮抗した。


「こぉぉぉぉぉ……」


 片足で刃を受け止めた姿勢を取るその少女は、呼吸を整えて、一息に踏み潰す。


 雷裂流自然生存術・逆位【重鎮功】。


 高重力を受け流すという体技。その逆回しにより、逆に重力の影響を大きく受け止めて自らの重量を極端に上昇させる技だ。

 一瞬にして、見た目からは想像できない重さへと変わったそれにより、踏み潰された大剣は大地へと押し付けられ、半ばからへし折られてしまう。


「ハゲ……猿、か……?」


 ゼルヴァーンは、信じられないと言うように呟く。


 膨大な魔力の波動を感じる。

 目の前のそれが放っている事は、見れば分かる。


 その姿形が、人間種のそれでなければ素直に現実を認められただろう。


「「っ!」」


 事前情報無しの、雷速による奇襲。

 それに反応できたのは、仕掛人を除く八人の内、たったの三人だけ。

 地竜種のゼルヴァーン、天翼種のラヴィリア、そして妖魔種のスピリである。


 目の前のそれが、人間種かどうかはさておいて、明確な殺意を宿した存在に、彼らは武器を振りかぶって応じた。


 自らを脅かす事の出来る、敵として。


「アハッ♪」


 雷の人間は、反応できている三人に対して、笑みを見せる。

 とても好戦的で、肉食獣が獲物を見つけたかのような、そんな笑みだ。


「良いね。良いよ。良いじゃんか。君たちに決めたよ」


 交錯する。


 その瞬間。


 背後を駆け抜けようとしていた化け物が、突如、身を翻す。

 そして、一人と三人を包み込むように、全身を構成する骨を広げた。


「ごあんなぁーい♪」


 そして、彼らは戦場(コロシアム)へと落ちていくのだった。

最近、忙しいのもあるけど、なによりもキーボードの調子が悪い。


何でだか知らんけど、すぐに接続が切れる。

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